晴れ、ときどき映画三昧

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「南部の反逆者」(57・米)70点

2022-04-29 12:05:52 | 外国映画 1946~59


 ・ 南北戦争時代を背景に南部の大富豪に扮したC・ゲーブルの一大ロマン。


 ロバート・ペン・ウオーレンが1955年に執筆した原作「Band of Angels」を、「壮烈第七騎兵隊」(41)などアクションもので定評のあるラオール・ウォルシュ監督で映画化。
 南部の大富豪と黒人奴隷の母と白人の父との間に生まれた娘とのラブ・ストーリーを中心に、南北戦争前後激動の時代背景を描いている。
 「風と共に去りぬ」(39)のクラーク・ゲーブルが主演、「十戒」(56)のイヴォンヌ・デ・カーロ、「暴力教室」(55)のシドニー・ポワチエが共演。

 19世紀半ばのケンタッキー州。農園主の娘アマンサ(Y・デ・カーロ)は、父が危篤との知らせで音楽学校から帰郷するが亡くなってしまう。悲しみに暮れるなか農園と奴隷は売られることとなり阻止しようとするが、自分が黒人奴隷の母であることを知らされる。
 ワンドロップ・ルールで黒人扱いとされたアマンサは、奴隷商人キャロウェイ(レイ・ティール)に売られニューオーリンズに向かう。
 競売に賭けられたアマンサを5000ドルで競り落としたのはヘイミッシュ・ボンド(C・ゲーブル)という大富豪。最悪の状況を覚悟したが、メイドのミシェル(キャンドロル・ドレイク)が親身となりレディとして扱われる。
 屋敷にはヘイミッシュからクラ坊と呼ばれ可愛がられ白人同様の教育を受け育った使用人・ラウルー(S・ポワチエ)がいて一緒に暮らし始める。

 時代背景とC・ゲーブル主演で「風と共に去りぬ」(34)の後日談的存在として何かと比較され酷評を受けた本作。アクション大活劇監督であるウォルシュ起用なので重厚な社会派ドラマを期待してはいけない。蒸気船や建築物など時代背景描写や冒頭の黒人奴隷たちの逃亡シーン、中盤ラウルーと猟犬との追跡劇など迫力ある映像では本領を発揮している。

 五〇代半ばのC・ゲーブルは俳優晩年期に差し掛かっていたが、悪役や有名女優の相手役から「在る夜の出来事」(34)でオスカー俳優となり「風と共に・・・」で不動の地位を築いた大スター。暗い過去を背負って大富豪から5000ドルの賞金を賭けられ追われる波乱万丈の男を演じている。
 ヒロイン・アマンサ役のY・デ・カーロは<活劇クイーン>の名を恣にしていた50年代前半の名残りがあって、運命に翻弄されながら生きる女を演じながら儚さは感じられず安心して!?観ていられる。
 22年1月、94歳で逝去したのちの大スターS・ポアチエは当時30歳。本作は「暴力教室」とともに「手錠のままの脱獄」(58)でブレイクし、「野のユリ」(61)でオスカー獲得するまでの勢いを感じさせる黒人青年役。白人に育てられながら自分の運命を切り開こうとするが、白人社会の枠からハミ出せない。終生同じような役柄が多かった。結局<自由への鍵>は手に入れられたのだろうか?

 ハッピー・エンドとなるエピローグは出来過ぎの感は否めないが、<キング・オブ・ハッリウッド>の面影を忍ばせるC・ゲーブルを堪能する作品となった。