晴れ、ときどき映画三昧

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「クリムゾンタイド」(95・米)70点

2021-09-13 12:01:20 | (米国) 1980~99 

 ・D・ワシントン、G・ハックマンの適役演技対決を楽しむ。

 ディズニー大人版製作会社(ハリウッド・ピクチャーズ)による原子力潜水艦で繰り広げられる男たちのドラマを描いたポリティカル・サスペンス。
 リチャード・P・ヘンリック原案、マイケル・シファー原案・脚色を「トップガン」(86)、「トゥルーロマンス」(93)のトニー・スコット監督で映画化。デンゼル・ワシントン、ジーン・ハックマンの2大オスカー俳優競演である。

 ロシアでクーデターが発生し、ウラジオストックの海軍基地が制圧されてしまう。アメリカはフランク・ラムジー艦長(G・ハックマン)率いる米軍原子力潜水艦アラバマを、核ミサイル発射に備え出航させる。
 冷たい雨の降る夜、経験豊富な叩き上げのラムジー艦長は部下たちを大いに鼓舞する。副長はハーバード大卒のエリート、ロン・ハンター(d・ワシントン)。この対照的な二人が有事のときどのような対応を取るか?潜水艦という狭い密室で繰り広げられて行く。

 お互い自分の持ち合わせていない長所を認め合いながら<戦争とは、他の手段を持ってする政治の継続である>というラムジーと<戦争は、政治目的の手段だが戦争が目的になり得る>というハンターでは軍人としての在り方には違いがあった。
 
 ハンスジマーの重厚かつダイナミックな旋律、ダリウス・ウォルスキー撮影の華麗でスピード感溢れる映像とともに、潜水艦映画ならではの緊迫感あるストーリー展開は火災時の演習から始まり、ミサイル発射の是非で頂点に達する。

 無線機の破損により通信の途絶えた指令を巡ってミサイル発射を命令するラムジーと、無線機を修理して最終指令を確認すべきというハンターで意見が対立。お互いを反乱罪で役職を解任するなかで刻々とタイムリミットが迫って行く。
 
 組織人としてリーダーはどう在るべきか?その部下たちはどう動くべきか?まるで企業の教育訓練の場のような展開で身につまされる。

 本作はキューバミサイル危機のソ連潜水艦副長ヴァシリー・アルヒーポフのエピソードをモチーフにしたフィクションで、あくまで核戦争の危機を訴える社会派ドラマではない。
 現在、核ミサイルの発射権限は大統領のみである。しかし一歩間違えればこのような事態は起こらないとも限らない。ましてラムジーはヒロシマ・ナガサキの原爆投下は正しいといいハンターは容認すると言っているのだから。

 赤いキャップとシガーを愛用し、小型の猟犬ジャックラッセルテリアを艦内に持ち込む頑固で負けず嫌いのラムジーはどこか前大統領を彷彿させ、妻子を愛する黒人エリートでリベラルなハンターは元大統領を連想させる。
 演じた二人はともにはまり役で他にキャスティングは思い浮かばないほど。

 部下を演じた先任伍長ジョージ・ズンザ、補給担当艇長ジェームズ・ガンドルフィーニの個性派ベテラン俳優や兵器システム将校ウェップスを演じた若き日のヴィゴ・モーテンセンなど、自らの仕事に誇りを持つ男たちが見えない敵との戦いの緊迫感を盛り上げていた。

 「眼下の敵」(57)、「U-ボート」(82)、「レッドオクトーバーを追え!」(90)など<潜水艦ものに外れなし>という映画界のキャッチフレーズに納得の娯楽大作であろう。