・ C・グラントのはまり役がドラマを牽引したヒッチのサスペンス。
フランシス・マイルズの小説「レディに捧げる殺人物語」をアルフレッド・ヒッチコック監督で映画化。正体不明だが魅力的な男と結婚した大富豪の娘リナの視点で描かれたサスペンス・ミステリー。原題は「SUSPICION」。ヒロインを演じたジョーン・フォンティーンがオスカー主演女優賞を獲得。
両親からオールドミスと思われているのに反発してプレイボーイのジョニー(ケーリー・グラント)とヨーロッパへ駆け落ちしたリナ(J・フォーンティーン)。英国へ帰国して新居を構えるが、身辺に異変が起きるごとに夫が遺産目当てで自分を殺そうとしているのでは?と疑い始める・・・。
美女イジメ?に定評があるヒッチコックがJ・フォーンティーンを「レベッカ」(40)に引き続き恐怖感に苛まれた人妻役で起用した。世間知らずの真面目なお嬢様が軽薄で胡散臭さを持ちながらその男の魅力に引きずられてしまう危うさを、テンポ良く重ねて行く緊迫感はヒッチお得意のパターン。
その最大の功労者はC・グラントだ。正体不明の怪しさと、如何にも二枚目プレイボーイの風貌はまさにはまり役。当初ジェームズ・スチュアートが熱望したが年を取り過ぎているという理由で拒否しC・グラントが演じることとなったという。調べてみると実年齢はC・グラントのほうが年上だった。怪しいイメージのある彼をキャスティングしたに違いない。
ジョニーが毒薬の入っていそうなミルクをお盆に乗せ階段を上る名シーンは本編のハイライト。100分足らずのミステリー・ドラマだが、二時間ドラマのお手本になりそうなラストシーンも含め大いに楽しめた。