晴れ、ときどき映画三昧

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「女神の見えざる手」(16・仏/米 )80点

2018-03-05 15:17:21 | 2016~(平成28~)

・ アクション映画の快感を味わえる社会派サスペンス・ドラマ。




米国に3万人いるという、政治の裏で暗躍する戦略のプロであるロビイストの活動実態を描いた社会派サスペンス。監督は「恋に落ちたシェイクスピア」(98)のジョン・マッティン、主演「ゼロ・ダーク・サーティ」(12)のジェシカ・チャステインで映画化。原題はズバリ「ミス・スローン」。

プロローグは、古巣の会社での不正疑惑問題で聴聞会に挑み、合衆国憲法第5条により証言拒否を連発し続ける女性の姿で始まる。
大手ロビー会社の花形ロビイスト、エリザベス・スローン(J・チャスティン)で、アラブ某国と議員の癒着に関わったものらしい。
話しは3か月前にさかのぼり、彼女のもとに銃擁護団体から銃規制の法案に反対する議員獲得のため、銃所持賛成の女性を増やして欲しいというオファーが舞い込んでくる。
エリザベスは一笑に付し、上司の反対を押し切って部下を引き連れ小さなロビー会社へ移籍、銃規制法案を可決すべくあらゆる手を駆使して行く。

なぜ銃規制が進まないのかという現実に迫る一見シリアスな社会派ドラマだが、テンポの良い演出はまるでアクション・ドラマのヒロインが大活躍するような展開で快感を覚える。
緻密な組み立てでスリリングな展開の脚本は、元弁護士で英語教師のジョナサン・ペレラという人。共和党ロビイスト<ジャック・エイブラモフ>の不正事件をヒントに書き起こしたオリジナルである。

J・ジャスティンのイメージにピッタリのヒロイン像だが、決して正義の人とはいえず目標達成のためにあくなき執念を燃やし、非合法な手段や同僚を犠牲にすることも厭わない戦う女性だ。
サンローラン、マイケルコースなどのファッションに身を包み、高いピンヒールと赤い口紅、黒のネイルで戦いに挑む。薬を手放さず、常に先を読んで先手を打ち早口で男社会の敵を論破して行く。

そのやり方は、自費で盗聴チームを雇って相手の弱みを握ったり、独自の手法で1500万ドルの寄付金を集めたり常に一歩間違えれば万事休すことばかり。

エピローグで聴聞会に戻り、二転三転のスリリングな展開にはサスペンス好きの筆者にも想定外の面白さだった。
まさに<肉を切らせて骨を断つ>。こんな女性に憧れ真似をする若い女性が現れないよう願っている。

本作はあくまでフィクションだが、オスカーには不都合なテーマで<米国の銃規制問題の根深さ>や<ロビイストという仕組みの弊害>を訴えるエンタテインメントとして拍手を送りたい。

日本でもロビイ活動で政治が不当に動くことのないよう祈るのみ。