晴れ、ときどき映画三昧

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「イミテーション・ゲーム /エニグマと天才数学者の秘密」(14・英米)80点

2016-10-06 15:44:12 |  (欧州・アジア他) 2010~15

 ・ 実在人物A・チューリングの生涯に基づいたヒューマン・ドラマ


   

 第二次世界大戦の終結に重大な貢献をした実在の人物アラン・チューリングの生涯を描いたヒューマン・ドラマ。

 監督はモルテン・ティルドルムでこの年オスカー8部門にノミネートされ、グレアム・ムーアが脚色賞を受賞した話題作。

 51年ある容疑で警察の取り調べに応じたアラン・チューリング(ヴェネティクト・カンパーバッチ)。現職は大学教授だが過去は謎めいていた。

 時代は39年第二次大戦中英国海軍解読不可能と言われる独軍の暗号エニグマに苦慮していたころに戻り、その基本部分を解明しようと挑んだ27歳のA・チューリングとそのチームの葛藤が描かれる。

 なかでもクロスワードパズルの天才で善き理解者のジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)との恋愛模様と同僚ヒュー(マシュー・グッド)たちとの青春ドラマ風景とともに彼の人物像が浮き彫りにされる。

 エニグマは159×10の18乗通りあり、解明制限時間は18時間というもの。チューリングはコンピュータの理論化して、その装置をクリストファーと命名し解明に挑むが、チーム内で孤立、海軍上層部からは金食い虫で厄介者として睨まれてしまう。

 パズル好きの子供だったチューリング。人付き合いができない天才だったが、16歳でクリストファーだけが親友と呼べる存在だった。

 この少年時代が彼の原点で、暗号解読装置に命名した所以でもある。

 彼の人物像は天才にして変人、「自分は人間か?、機械か?、英雄?か、それとも犯罪者か?」と刑事に問うシーンが象徴的。

 彼の不幸はアスペルガー症候群(発達障害者)だったことと、当時重罪とされた同性愛者だったこと。

 こんな難役をリアルに演じられるV・カンパーバッチの演技は改めて巧い俳優であると知らされた。

 相手役のK・ナイトレイはミス・キャストとの噂はあったが、久し振りの好演で相変わらずの美しさがこの重いドラマの清涼剤的存在だった。

 AIの元祖といわれるA・チューリングの最後は哀れな孤独死だったが、今日のコンピュータ社会では、彼は偉業を成し遂げた英雄だった。

 人の気持ちを理解できない人物が誰にも解読できない暗号を解いたのだから。

 フィクションながら彼のドキュメンタリーを堪能した想いだった。