晴れ、ときどき映画三昧

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『引き裂かれたカーテン』 75点

2010-12-30 13:51:18 | 外国映画 1960~79




引き裂かれたカーテン


1966年/アメリカ






ヒッチコック監督50作記念のスパイ映画 








総合★★★★☆
75



ストーリー

★★★☆☆
70点




キャスト

★★★★☆
75点




演出

★★★★☆
80点




ビジュアル

★★★★☆
80点




音楽

★★★★☆
80点





ヒッチコックが監督50本目に選んだのが久しぶりのスパイ映画。当時の60年代は東西冷戦の真っ只中で、映画も「007」シリーズを始めスパイもの全盛期だったためか。
米物理学者マイケル(ポール・ニューマン)はコペンハーゲンで開催される科学者国際会議に出席するため、婚約者で秘書のサラ(ジュリー・アンドリュース)と船旅を楽しんでいた。到着後マイケルは講演当日に突然サラをNYへ帰るように言って、何故か東ベルリンへ。サラは密かに跡を追う。
記念映画とあってP・ニューマン、J・アンドリュースの2大スターを起用したため、かなり前評判が高かった。とくにJ・アンドリュースは大ヒットした「サウンド・オブ・ミュージック」の次回作で、ベッド・シーンがあるというので興味深々。今観ると普通で、たいして話題にもならなかっただろう。ヒッチコックはサラのキャラクターを情熱的で愚直な可愛らしさをイメージしてエヴァ・マリー・セイントの起用を考えていた。しかし製作会社がウンといわずジュリーを指名してきたため、聡明で品行方正なサラの誕生となった。
肝心の出来は、正直いっていまひとつの感は否めなかった。「マーニー」といい晩年のヒッチコックには時代に乗ったテーマに迎合してしまって斬新さがない。ミサイル理論を盗むという作戦は荒唐無稽でスパイ・アクションもので充分。ヒッチコックの手腕は違うところにある。
とはいえ素晴らしいシーンはいくつかあり、農場での秘密警察のグロメク(ヴォルクガング・キーリング)との静かな格闘シーンやバスでの逃亡シーンは有名でたっぷりと魅せてくれる。お得意のユーモア・センスも健在で侯爵夫人(リラ・ケドロワ)やバレリーナ(タマラ・トゥマノヴァ)など脇役が随所で見せてくれる。
ヒッチコックは常連のスタッフと別れワガママな注文をつけられなかったのも災いしたのか、残念な作品となってしまった。