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あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_笠岡諸島、高島日帰りツーリング

2010年05月30日 | 旅するシーカヤック
2010年5月29日(土) 来週に迫った『旅する櫂伝馬プロジェクト』を控え、今週末はゆっくり休養することにしよう。
『来週があるんで、今日は日帰りツーリングにしとくわ』 『どこへ行くん?』 『せっかくじゃけえ、これまでゆっくり漕いだことがないところに行ってみようと思うとる。 笠岡の高島辺りに行ってくる。 そして日曜日はゆっくり休憩! ロードスターで、近くの島の温泉にでも入りに行こう』

キャンプツーリング派の私は、たまに行く日帰りツーリングはクルマで1時間圏内と、なんとなくこれまでの経験から自然と決まっている。 せっかく、のんびりまったりと海を楽しむのに、クルマで何時間も走って数時間漕ぎ、その日のうちにまたまた数時間かけて家に戻ってくるというのでは、なんともせわしないではないか。
また日帰りでは、漕いだあと温泉で潮抜きしてサッパリし、浜で夕日を眺めながら『グビリ』とビールを飲る、あの至福の一時も味わえない。

と言う訳で、東方面だと竹原、南方面だと倉橋島、西方面だと能美島/江田島/坂町あたりが、1時間圏内となる日帰りツーリングエリア。
だが、できれば自分にとって新しいコースも開拓したいという思いもあり、次回以降のキャンプツーリングコースのロケハンも兼ねて、珍しく遠出の日帰りツーリングに出かけることにした。
***
狭くて分かりにくい山道を走り、ようやく見つけた出艇地。 ここはなかなか良さそうだ。
だが風が強い。 時折ビューっと吹き抜けるオンショアの風。 『うーん、漕げなくはないけど、曇りがちだし、これでは気持ち良いツーリングはできないなあ』
という訳で、しばしのんびりと風待ち。

昼を過ぎ、ようやく風も収まってきた。 『さあて、そろそろ漕ぎ出すとするか』
 
稲積島を越え、明地島の南側をかすめて高島へ。 ここからは、高島に沿って反時計回りで一周する。

今は引き潮だが、高島の南側は、東に流れている。 そう、高島や白石島と鞆の浦との中間辺りに分水嶺があり、この辺りでは引き潮は東向きの流れになるのである。 『いやあ、そうだった。 横断隊の時には意識していたけれど、全く忘れていた。 やっぱり普段漕がないエリアを開拓するのは面白いなあ』

小高島の北側を通り、汐口鼻をグルリと回って高島の北岸へ。 すると、ちいさな集落が見えてきた。
 
『鳥居も見えるし、ちょっと上陸してみようか』

***
カヤックを浜に引き揚げ、集落へ。 少し歩くと小さな神社がある。 高島神社。 帽子を脱ぎ、サングラスを外して参拝。
少し集落を歩いてみるが、人気はなく、瀬戸内の小さな離島らしい静かな佇まいが好もしい。
 
浜側の道に出たところで、向こうから一人のお年寄りが歩いて来られた。
『こんにちは。 ここは景色も好いし、静かで良い所ですね』 『ああ、こんにちは。 どこから来られた?』
『はい、今日は神島からカヌーを漕いで来ました。 高島を一周して、ちょっとここに上がってみたんです』 『ほう、呉から。 あんた、自衛隊さんかね?』

どこに漕いで行っても驚くほど定番となっている、いつもの『自衛隊さんかね?』に笑いながら、
『いえいえ、違うんです。 普段はサラリーマン、会社員なんですよ。 土日だけこうしてカヌーで遊んでるんです』 『そうかね。 どこで働いとるん?』
『○○です』 『わたしゃあ、昔船乗りをしよったんじゃが、○○にはよう石炭を運びよったよ』 『え、そうなんですか!』

『いつ頃まで船に乗りよっちゃったんですか?』 『ああ、70歳まで乗りよった。 もう十数年前じゃなあ』 『いやあ、元気で若う見えますね。 とても80過ぎには見えません』
***
『船乗りはどうでしたか?』 『そうよのう。 まあ日本中いろいろ行ったよ。 それに、ええもわるいも、そりゃあ仕事じゃから』
『え、飲みに行ったか? そりゃあ船乗りじゃからの。 地元地元で、おいしい酒を飲むのも楽しみの一つよ。 船乗りいうたら、まあ、ある意味ヤクザみたいなもんじゃからなあ』と笑う。

『石炭はな、北九州の若松のところから積んで、広島に運びよった。 他にも機械を運ぶ船にも乗って、呉のIHIからいろんなところに機材を運んだもんじゃ』
『原発をたくさん作った時期があったじゃろう。 あの頃は、福井の方に設備を運んだな。 時代、時代で運ぶものが変わる』
『あと、北海道にも行きよったなあ。 製紙会社と契約した船で、北海道からは新紙を積んで東京や名古屋、大阪に運び、帰りは古紙を積んで北海道へ持って行く』 『古紙? そう、再生紙の原料にするんよ。 帰りを空荷で戻っても油代はかかるしな。 それに船いうもんは、空荷じゃと安定せん。 空荷の時には、タンクに海水を入れてバラストにする。 そうせんと荒れた時に揺れて揺れて』

『そうそう、日本鋼管の所を埋め立てる時には、石を運ぶ船にも乗ったなあ。 あれは小さい船よ。 あの神島の所で山を崩して石を船に積む。 埋め立ての所に持って行って、錘で船を傾けて石を落とす』 『あー、あの船ですか。 昔テレビで見たことがあります。 あれって、船がひっくり返るんじゃないかとハラハラしながら見てました』 『あの神島の所は、埋め立ての石を採るんで山が一つ消えたんよ』

『ところで、昔の高島はどうじゃったんですか?』
『うん、ここもやっぱり人が減って。 もう年寄りばっかりよ。 60代いうたら若手じゃから』 『前は、学校もあったんよ。 でも廃校になって、今居る二人の子供らは、スクール船で本土の学校に通いよる』 『昔は半農半漁。 石を採る仕事もあった。 北木や白石と一緒』
『昔は、ここらの山は禿げ山じゃった。 ほとんど木はなかったな。 それが、砂防かなんかで植林して、こうなった』 『あの山の上の建物。 あれは地元の資料館。 行ってみたらええよ』

『じゃあ、そろそろ行くわ』 『いやあ、楽しいお話、ありがとうございました』
『まあ、小さい島で見る所はないけど、ゆっくりしていきんさい』 『はい、ありがとうございます』
***

こんな小さな島に、地元の歴史にまつわる資料館があるとは知らなかった。
 
きれいに清掃され、土器や昔の島の写真などが展示されており、なかなか良い雰囲気。
この島には多くの磐座があるという。 次回は是非、キャンプツーリングで訪れ、ゆっくり歩いて見たいものである。
***
再び漕ぎ出し、浜へ戻る。 と、浜にはカヤックが。 フェザークラフトである。
 
上陸して挨拶し、お話しすると、この浜からいつも出ているとのこと。 今日はここから、カヤックで鞆の浦の花火大会を見に行こうかと思っていたけれど、出発が遅くなったので、高島か白石あたりでキャンプ予定だそうだ。
しばしお話した後、静かに出発された。 『じゃあ、良い旅を!』 『そちらも、気をつけてお帰りください』

これまでゆっくり回ったことがなかった高島。 今年25漕ぎ目となるお散歩ツーリングは、地元の、元船乗りというおじいちゃんのお話も伺うことができ、資料館も教えていただき、ロケハンツーリングとしては大成功。 次回は是非、キャンプツーリングで磐座巡りを楽しみたいものである。
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