あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 尺取り虫方式瀬戸内横断(3)_無事に瀬戸大橋越え、笠岡~紗美~児島

2014年05月25日 | 旅するシーカヤック
2014年5月24日(土) クルーソー460_旅するシーカヤックスペシャルを使い、地元呉から兵庫県の的形海水浴場を目指す、尺取り虫方式での瀬戸内横断旅の第3弾。
今回は、前回舟をあげた笠岡の神島外港から出発である。 一泊二日で、瀬戸大橋越えが今回のゴールイメージ。

水曜日から金曜日まで横浜に出張で、金曜日の夜は23時過ぎに家に戻ってきたので、いつものように早起きする自信がなく、今回は笠岡外港までクルマで移動する事にした。
朝6時半に家を出て、高速道路を走ると2時間ほどで出艇地に到着。 『こりゃあ便利だなあ』
前回舟をあげた浜の前でクルーソー460を組み立て、荷物をパッキングし、1時間後には出発準備が完了した。

同じ行きっ放しの旅でも、出艇地までクルマでアクセスできるとロジスティクスが大分楽である。

家からは水をタップリ、そして途中のコンビニで仕入れた飲み物や行動食、昼ご飯やいざというときのための軽めの晩ご飯などなど多くの荷物がクルマで出艇地まで楽々運べるのである。
これが公共交通機関でのアクセスだと、出艇地あるいは途中、十数リットルの水をどこで手に入れるかが一番の問題になるし、多くの食料を持って歩くのは難しいので最低限の非常食だけに限られる。

今回は事前の調査の結果、宿泊予定の浜の近くにあまり店がなさそうだと分かっているので、食料品が多く運べたのは助かった。

***

穏やかな瀬戸内海に、9時半に漕ぎだした。

目指すはひたすら東。


快調に漕ぎ進むと、三つ子の小さな島が見えてきた。

小さな浜を見つけ、そっと上陸。

どうやらここは、『三郎島』というらしい。

なかなか良い雰囲気の小島である。

再び漕ぎだし、東へ。

この辺りの海はこんな感じ。
いかに普段漕いでいるエリアの海が美しいかを再認識する。

***

漕ぎ始めてから3時間。
予定していた宿泊予定地に到着した。

紗美東。

テントを張り、昼ご飯を食べようとコンクリートの上に座ると、犬を連れたおじいさんが歩いてこられた。
『こんにちは』
挨拶をすると、『ああ、どこから来られた?』
『はい。 今日は笠岡から漕いできたんです。 神島から漕いできて、3時間かかりました』
『え、舟で来たんか?』 『はい、あそこにある青いやつです』

そこからしばし四方山話。

『この辺りには店や食堂はありませんか?』 『ああ、昔はあったんじゃが、今はもう店ものうなったよ』
いやあ、いざという時のために最低限の弁当を買っておいてよかったなあ。

『毎日1時を過ぎると、犬の散歩に来るんよ。 あっちに煙突がみえるじゃろう。 あそこで66歳まで働きよった』
『昔は、クルマで通えるのは偉い人だけ。 工員のわしらは単車で通勤よ』
『あの頃は、どぶろくが安かった。 会社の近くで、毎日どんぶりでどぶろくを飲んでから家に帰るのが楽しみじゃったよ』
『どんどん、どんどん、自動化が進んで、人が減っていった時代じゃったなあ。 あまり頭はようないけど、自動化に対応するために勉強しに行け言われて、よう研修を受けに行きよったなあ』

『この辺りは、昔は別荘地じゃった』 『なるほど、さっき少し歩いた時、しっかりした門構えの家が多いなあと思っていたんですよ』
『そうそう、医者や金持ちの別荘地じゃった』
『昔は松が生えていて、浜には葦が多くて、今とはぜんぜん違う眺めじゃったなあ』 『へえ、白砂青松ですね』
『じゃあここは人工の浜なんですか?』 『そうよ。 松は松食い虫の被害で枯れたし、昔は葦が生えとったから浜はだいぶ小さかったよ』
『その頃は、別荘もあったし、夏になると貸し切りバスがズラリと並んで、海水浴客で賑わっとったわ』
『なるほど。 昔は、海水浴くらいしか楽しみがなかったですもんね』

などなど、この辺りの昔話をたっぷりと聞かせていただいた。
『ありがとうございました。 じゃあ、ちょっと散歩に行ってきます』 『気をつけてな』

ペリカンケースを手に散歩していると、店がないと言われていたのだが酒屋さんを発見。

ビールと酎ハイ、つまみを購入して、再び散策を続ける。

保養所だったらしい古い家。

いかにも別荘地らしい古い建物の跡。

浜の先端には、唐船の見張り場があったと教えてもらった。

浜には、天気のよい休日を楽しむ人々が。

少し歩くと、お寺が。

緑が濃くて良い雰囲気。

なかなか感じの良いお寺さんである。

海旅の安全を祈願しておいた。

***


青空が広がる中、

酒屋で仕入れた、駄菓子をつまみにビールと焼酎をゴクリ。

5時過ぎ。 『あっ。 寝てたなあ!』
気がつくと、コンクリートの上で寝ていた自分に驚いて目が覚めた。 出張の疲れと、今日の漕ぎの疲れがでたのかなあ。

***

テントに入り、シュラフに潜り込み、グッスリと寝込む。

3時過ぎ。 バイクの爆音で目が覚める。
『ブロン、ブロン、ブロロロロロロン』とバイクの音。 『シュパーン。 シュパーン。 シュパパパパーン』とロケット花火の音。 大声で騒ぐ話し声。
いい迷惑である。

悪い予感はしていたのだが、海水浴場でキャンプするのは、やっぱやめようかな。 残念。

***

5時に起きだし、パンで簡単な朝食を済ませる。
シュラフを袋に納め、荷物をテントから放り出し、マットを畳み、一つ一つ片付けて行く。
出発準備完了。

今日は6時10分に漕ぎだした。
ゴールは、瀬戸大橋を越えたあたりの予定。 距離からすると、4時間ほどのツーリングになりそうだ。


***

朝日が昇り、少し曇りがちななか、東に向けて漕ぎ進む。

目指す方向には、工業地帯/コンビナートが見えてくる。

途中からの長い防波堤のところには、多くの遊漁船。

こんなコンビナートの近くで釣る魚を食べるのだろうか?

今回のルートで最後となる海峡横断。

目の前にある造船所まで、周囲をしっかり確認しながら安全第一の海峡横断である。

福山を越えてから見る事のなかった造船所が、ここにもあるんだなあ。

***

ここからは、瀬戸大橋に向けて漕ぎ進む。

空は晴れて快適なツーリング日和。

快調に漕ぎ進むと、瀬戸大橋が近づいてくる。

予定では追い潮のはずなのだが、まだ向かい潮が残る中、一漕ぎ一漕ぎ漕ぎ進む。

そうしてようやく瀬戸大橋へ。

ここは、瀬戸内横断のハイライトの一つ。

瀬戸大橋を越えると、尺取り虫方式での瀬戸内横断も、その行程の半分を超える事になることに加え、潮やルートによっては難所の一つなので、やはり感慨深いものがある。


ここを越えると、今日のゴール予定地である下電ホテル前の浜へ。

無事到着!

カヤックを引き揚げ、畳み、着替えて帰り支度。

せっかくなので、ホテルでお土産を購入し、タクシーを呼んでもらう。

ここからは、タクシーで児島駅へ。

『ジーンズの聖地』だとの事。

尺取り虫方式3回目で、ようやく一つの節目となる瀬戸大橋を越える事ができた。
これで、兵庫県の的形までの行程の約1/2。

やっぱり俺には、風の吹くまま気の向くまま、風来坊の気ままな一人旅がピッタリだ!
これからも、いつまでにどこそこに到着しないといけないなんて忙しない旅とは一線を画し、できるだけのんびりと、そしてまったりと、フォールディングカヤックらしい、そして俺らしい、尺取り虫方式の瀬戸内横断旅を楽しんで行こうと思っている。

『いやあ、今週も最高の週末だったなあ。 さて、来週はどこ行こう?』

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瀬戸内シーカヤック日記: 布施明コンサート、芸予諸島の幽玄峡、YB125SPでタンデム・ラーメンツーリング

2014年05月18日 | 旅するシーカヤック
2014年5月17日(土) 木曜金曜の一泊二日の出張から深夜に戻り、土曜日の朝目覚めたのは7時前。
いつもなら、4時か5時には目が覚めるのだが、さすがに疲れが出たようだ。

この週末は天気が良さそうなので、尺取り虫方式での瀬戸内横断旅を続けるには良いコンディションなのだが、土曜日の夜に予定を入れているので今週はパス。
という訳で、久し振りに休日の朝寝坊を楽しんだ。

***

目が覚めるとコーヒーを飲み、玉子掛けご飯と味噌汁で朝食。
夕方までたっぷり時間があるので、今日は久し振りにメンテナンスの日にすることに。

まずは靴。
通勤で使っている3足の靴と、休日に町を歩く時用の靴を取り出す。
シューキーパーを入れたまま、まずはブラッシングした後、シュークリーナーで汚れを落とす。
その後は、シューラスタークリームで4足とも磨き上げ、靴磨きは完了。

『ああ、やっぱきれいな靴は気持ちええなあ』

***

バケツを取り出し、水を入れて駐車場へ。 次は、ロードスターの洗車である。

ボディを水洗いしてウエスで拭き取る。
幌は、アーマオールで保護コーティング。 煤けていた幌も、ツヤツヤ黒々。

ついでにインパネ周りもアーマオールで拭いてあげた。

『うん、15万km越えでもまだまだ大丈夫』

***

家に戻り、再びコーヒーを飲んでしばし休憩。
休憩している間に、砥石を洗面器に満たした水に浸けて、たっぷりと水を含ませる。

『ようし、そろそろいいかな』

家で普段使っている包丁3本。 ステンレス製はなく、鋼にこだわって購入しているもの。
長いものはもう15年近く使い続けており、これまで数えきれない研ぎ直しにより、少しラインが変わってしまっているほど。

お世話になっている包丁を、一本一本、丁寧に研ぎ上げていく。
クルマの洗車はほとんどしないが、包丁研ぎだけは定期的に行っている。
短い時間ではあるが、最初は普段使いで切れにくくなっていた包丁を、研ぎすませていく過程と達成感が好きなのだ。

研ぎ終えると、ティッシュペーパーで試し切り。

『おお、バッチリだ』

***

『いやあ、久し振りにメンテナンスの日だったなあ!』 普段の休日はほとんど家に居ないので、今日は時間があってちょうど良かった。
お昼ご飯を食べ、妻と一緒に近くの山への散歩を楽しむ。

夕方、そろそろお出かけの時間である。
今日は、数ヶ月前にチケットを購入したコンサートの日。

地方都市である広島県の、それまた片田舎の呉に住んでいる俺達。

海や山で遊ぶにはとても良い場所なのだが、芸術文化に触れる機会が少ないのが残念なところ。
東京や神奈川県など都会に住んでいれば、美術館や博物館も多く、各種の公演やコンサートなどに触れる機会にも恵まれるのだが、呉ではなかなかそうはいかない。

それでも時折、美術館を訪れたり、クラシックコンサートを聴きに行ったり、たまには宝塚大劇場まで足を運んだりして、少しでも楽しもうと努力はしている。
芸予諸島の海遊びでたっぷりと心に栄養を補給し、芸術文化に触れる事で脳にもしっかりと滋養を補給していきたいと思っているのである。

***

という訳で、今日はちょっと趣向を変えて、『布施明』のコンサート。
昔、テレビで見ていた、歌の上手な歌手の方が呉まで来てくださるのである。 これは行かねばなるまい。

妻と一緒に、呉のコンサート会場へ。

コンサートは2部制。
第1部は、音楽で綴る物語。 第2部は、『君は薔薇より美しい』、『シクラメンのかほり』などなど、ヒット曲を含むオリジナル曲の数々。

最初の曲こそ、音響効果のセッティングが巧く合っていなかったようで心配したが、2曲目以降、どんどんと布施明の世界に引きづり込まれた。
60代半ばを越えているとは思えない、素晴らしい声とそのボリュームには圧倒される。

圧巻だったのは『MY WAY
布施明ワールドに引き込まれ、圧倒され、打ちのめされた。
心はわななき、しびれ、そして感動。

素晴らしい! 今日はこのコンサートに来て、本当に良かった!

妻も、同じように感動し、よろこんでくれたようだ。

*コンサートでも歌われた、『心をあずけるまで

***

2014年5月18日(日) 朝7時半。 『じゃあ、出掛けてくるよ。 今日は近場だから、昼前には戻ってくるよ』
布施明のCDを聞きながら、音戸の出艇地へ。

外気温は16℃。 もう5月も半ばを過ぎようというのに、少し涼しい位である。

今日もお散歩ツーリングなので、安全装備とコーヒー、おやつだけの簡単装備。
『いざ、出発!』

穏やかな芸予諸島の海を、ウッドパドルで漕ぎ進む。
小情島を越え、鈴鹿島を過ぎて、奥ノ内湾へ。

徐々に潮が満ちていく中、岸寄りの浅瀬をのんびりとお散歩。
のんびりツーリングでは、海中観察が楽しみの一つ。

チヌ。

『これは何だろう?』

ヒラリヒラリ、そしてクネクネと泳ぎながら進む、不思議な生物をしばし観察。
そして、なんと『コブダイ』まで発見。 写真に収める事はできなかったが、これには驚いた。

***

曇りがちだった空も、徐々に明るくなってくる。

ここは、本当に静かで穏やかなエリア。

先週訪れたエリアが『芸予諸島の楽園/パラダイス』ならば、ここは『芸予諸島の幽玄峡』

ここも、シーカヤックを始めた頃から20年以上通い続けているが、いまだにお気に入りのエリアであり続けている。

こんな素晴らしいエリアで海のお散歩を楽しんでいたのだから、シーカヤックの深みにハマっていったのは当然の事である。

今日も、他のシーカヤッカーやマリンスポーツの姿を見る事はなく、まさに独り占め状態。


***

『ようし、そろそろ休憩するか』

いつものお気に入りの浜へと向かう。

ここも無人の静かな浜。

シーカヤックを引き揚げ、

ポットに詰めてきたコーヒーと、おやつで一休み。

静かな浜で、きれいな海を眺めながら飲むコーヒーは、格別である。


再び漕ぎだし、湾の奥にある小さな島の社にお参り。

そこからバウを北に向け、漕ぎだした浜へと戻った。

『ああ、ええお散歩ツーリングやったなあ』 今日は、たっぷり2時間半ほど楽しんだ。

***

家に戻り、着替えると、YB125SPを引っ張りだす。
妻を誘ってお昼ご飯へ。

『どこに行くん?』 『黒瀬に、新しいラーメンやを発見したんや。 ちょっと開拓しにいこう』

訪れたのは、『ラーメン まつうら』さん。



妻は、『ほたてラーメン・塩』

俺は、『さんまラーメン・醤油』


『これは美味いね』 『ほんと、美味しいよね』

『ごちそうさまでした。 美味しかったです』 『ありがとうございます。 またぜひいらしてください。 そして、バイクでのお帰り、気をつけて』

***

この週末は、靴、ロードスター、包丁のメンテナンスから始まり、
布施明のコンサートで脳に滋養を与え、
芸予諸島のお散歩ツーリングで心に栄養を補給し、
新たに開拓したラーメン屋で胃もたっぷりと満足した。

またまた最高の週末やったなあ。 さて、来週はどこ行こう?

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瀬戸内シーカヤック日記: 地元でキャンプツーリング、芸予諸島の楽園/パラダイス&北吉鮮魚店

2014年05月11日 | 旅するシーカヤック
2014年5月10日(土) この週末は晴れの予報に変わったが、日曜日に用事があるので遠出はせず、地元でゆっくりと楽しむ事にした。
家から1時間弱で、いつものお気に入りのエリアへ。

今日は久し振りに、エルコヨーテさんのワークショップで製作したウッドパドルを引っ張りだしてきた。

普段は、長年使い込んで手に馴染んだアークティックウインドがお供なのだが、同じくナローパドル系のこれもお気に入り。
自分で仕上げたパドルなので、もちろん『Wave Walker / ウエーブウオーカー』の銘を入れてある。

今日は少し風があるものの、晴れていることに加え、空気が澄んで景色の抜けも良く、気持ちのよいツーリング日和。

『さて、のんびりまったり楽しむとするか!』


***

漕ぎだして、まずは浅瀬へ。

このエメラルドグリーン! まさにここは、芸予諸島の楽園、パラダイスである。

沖にある島を目指して漕ぎ進む。

アークティックウインドに比べるとかなり短いので、最初こそバタバタしたが、すぐにこのパドルに合った漕ぎスタイルに馴染んだ。
ウッドパドルは手に当たる感触が柔らかくて温かく、とても好い感じ。

島に到着し、カヤックを引き揚げてしばし休憩。

買い込んできたサンドイッチを引っ張りだし、ポットに詰めてきたコーヒーで軽くお昼ご飯。


***

島を離れ、対岸へ。

迎えてくれたのは、なんと愛らしい”クマ”。

このお気に入りの浜で、のんびりまったり。

海は澄んで白砂青松の自然海岸。

カヤックを始めた頃から20年以上通い続けているが、ここの海は本当に変わっていない。

浜に陣取り、海を眺めながらコーヒーを飲む。

まさに、芸予諸島の楽園である。 至福の一時!

次回もこのクマに会えるよう、高台に移動していただいた。

『風にも負けず、波にも負けず、そこでしっかり頑張れよ!』

再び漕ぎだし、出発した浜に戻る。

ここを漕ぐ度に、美しい海をのんびりと散歩する事の楽しさが、俺がシーカヤックの深みにはまる切っ掛けとなった”原点”であることを再認識させられる。

***

桂が浜に移動し、温泉で潮抜き。

以前の苦い経験を踏まえ、テントを張るのは夜になってからにすることにし、しばし浜を散策。

まさに白砂青松。

***

夕方、晩ご飯を食べに行くため、バスに乗る。

海辺を走る生活バス。

今日の晩ご飯は、久し振りに訪れる『北吉鮮魚店』

扉をガラリと開けて店に入り、『こんにちは。 さっき電話したものですが』
女将さんが出てこられ、俺を見ると、『あー、久し振りですねえ』 どうやら、顔は覚えておいていただけたようだ。
『ご無沙汰してます。 よろしくお願いします』

『今日はクルマですか?』 『いいえ、バスで来たんですよ』
『じゃあ、何か飲まれますか?』 『ええ、ビールをお願いします。 まずは生で!』

『いただきます』 グビ、グビ、グビリ。 プハーッ。 『いやあ、美味い!』
じゃあ、もう一口。 ゴク、ゴク、ゴクリ。

『はい、刺し盛りです』

今日は、あらかじめ電話で、刺し盛りにアナゴを入れていただくようにお願いしていた。
『そうそう、このコリコリ感がアナゴなんだよなあ』

『すみません。 瓶ビール、お願いします』


『はい、内蔵の煮込みです』

待ってました! 俺の大好物。
北吉鮮魚店の人気裏メニューである、魚の内蔵の煮込みである。

これは日本酒が欲しくなるなあ。 『すみません。 お酒、お願いします』

『はい、タタキです。 これはポン酢で食べて下さいね』

このお店では初めて食べるメニュー。

日本酒をグビリ、内蔵煮込みをパクリ。 タタキをガブリ、日本酒をグビリ。
今日は最高の一日だ。

***

浜に戻り、テントを張る。

月を眺めながら今日一日の楽しかった想い出を振り返る。

翌朝、5時。

快適な浜でグッスリ眠る事ができ、爽快な目覚め。

パンとコーヒーで簡単な朝食を済ませ、6時には浜を出発した。
ようし、じゃあ家に戻るとするか。

いやあ、またまた最高の週末だった! さて、来週はどこ行こう?

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瀬戸内シーカヤック日記: YB125SPでタンデムツーリング_鈍川温泉、しまなみ海道で彩雲&水平環

2014年05月05日 | 旅するシーカヤック
今年のゴールデンウイーク前半は、尺取り虫方式での瀬戸内横断旅1回目として呉~竹原~忠海
連休中盤は2回目として忠海~向島~鞆の浦~笠岡(岡山県)を楽しんだ。
これで、呉~兵庫県の的形海岸までの全行程約230kmのうち、約100kmを漕ぎ進んだ事になる。

連休後半は、しばしカヤックから離れて、ゆっくりと楽しむ事にしよう。

2014年5月4日(日) 今日は久し振りにYB125SPを引っ張りだし、妻とタンデムツーリング。
『天気も良さそうだし、温泉にでも行こうか』 『連休だから人が多いんじゃない。 どこに行くん?』
『125ccだから、あまりクルマが多いところはいやだから、”とびしま海道”を通ってフェリーで今治に渡って、鈍川温泉に行ってみないか。 あそこの湯はええぞー』

という訳で、今日の目的地は、愛媛県の鈍川温泉。

***

原付なら片道わずか50円の安芸灘大橋を通り、クルマの少ない”とびしま海道”の海沿いの快適なワインディングをのんびりと走って岡村島へ。

いつものターミナルに到着すると、さすがにゴールデンウイークらしく、既に多くのクルマやバイク、自転車がフェリー待ち。

今治行きの往復&原付のチケットを購入。

待合室で、フェリーの到着を待つ。

今治から到着したフェリーからは、多くのクルマと、これまた驚くほど多くのバイク、自転車が降りて来た。

***

フェリーに乗船し、今治まで1時間ちょっとの船旅へ。

この短い船旅のクライマックスは、来島海峡。

”しまなみ海道”の海と橋、島が織りなす瀬戸内らしい景色が堪能できるスポットである。

来島海峡大橋が近づいて来たので船室から出て写真をパチリ。

すると、橋の上には”彩雲”が!

『あー、きれいやなあ。 吉兆 吉兆』


風が強いので船室で待っていた妻の所に戻り、いつもの防水デジカメで撮った写真を見せる。
『彩雲が見えたよ』 すると妻が窓の外を指差し、『あれがそう?』

一緒に外に出て、改めて全景を眺めてみると、時々見かける彩雲とはちょっと違った雰囲気。

色は彩雲っぽいのだが、異様に横長の虹の様である。

ツーリングから家に戻ってニュースを見ていると、今日は各地で同じような光景が見られたのだとか。
そして、これは”水平環”というのだと、初めて知った。

今日は好いものを見る事ができたなあ! ラッキー!!!

***

今治に到着すると、

近くの食堂で”焼豚玉子飯”を食べ、

鈍川温泉へ。


ここへは俺は何度か来た事があるのだが、妻は初めてである。

到着したのが12時。 『じゃあ、1時に休憩室で待ち合わせにしようか』

久し振りの鈍川温泉。

アルカリ泉らしい、ヌルリとした感触が俺の好み。
露天風呂に入り、源泉に浸かり、外の休憩エリアで大の字になって寝転がり、水風呂で体を冷やし、再び源泉を楽しむ。

そうこうしていると、ほぼ1時間が過ぎた。 『あー、気持ちよかったなあ。 旅するシーカヤックの疲れもとれそうや』

***

休憩室に行くと、妻が待っていた。
『どうやった?』 『うん、いいお湯やったね。 それに人も少なくてゆっくりできたよ』
『そやろ。 ここは穴場なんや。 ほんま、いろいろええ所を知っとるやろ』と俺。 妻は、『いっぱい下見しとるけんねえ』と笑う。

しばし休憩し、再び今治へ。
フェリーの出航までしばらく時間があったので、町をちょっとだけ散策。

母恵夢(ポエム)本舗があったので、おやつとお土産を購入。

今日は連休で、通りでは様々な出店やイベントをやって、いつもより大分賑やかな今治の町。


フェリーに乗り、岡村島へ。

ここからは、快適な”とびしま海道”ツーリングを堪能。

中年のリターンライダー。
125ccのちっちゃなバイクに、銀婚式も過ぎた中年夫婦のタンデムなので、無理な走りはしない。
コーナーリングのスリルを楽しむのではなく、きれいな景色の海沿いのワインディングで、流れるような爽快な走りを楽しむのである。

家に戻り、晩ご飯の時妻が、『帰りのとびしま海道は、ほんと気持ちよかったね』
『たまにはバイクも好いよね。 また時々ツーリングに行こうか』

バイクでタンデムツーリングを楽しみ、温泉に浸かり、珍しい彩雲&水平環を見る事ができたゴールデンウイークの一日。
いやあ、今日も最高に楽しかったなあ。 ええ連休やった。

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瀬戸内シーカヤック日記: 尺取り虫方式瀬戸内横断(2)_2泊3日、忠海~向島~鞆の浦~笠岡

2014年05月02日 | 旅するシーカヤック
2014年4月30日(水) 50歳の春を記念して10年振りとなる第2回目のチャレンジを始めた、バタフライカヤックス・クルーソー460_旅するシーカヤックスペシャルを使っての尺取り虫方式での瀬戸内横断旅。

第1回目ゴールの忠海から戻り、風と雨の二日間は、買い出しやテントの防水処理、妻との温泉ドライブなどで休憩した

そして今日、ゴールデンウイーク中に2回目となる旅に出るべく、前回舟を揚げた忠海に、始発のJRで移動する。

忠海駅から歩いて数分。 出発する港に到着。

約20分でカヤックを組み立てると、近くにあるコンビニに買い出しへ。
水やビール、お昼ご飯の弁当、行動食などを購入し、港に戻って全ての荷物をパッキング。 到着してからここまでで、1時間。

今回は、スペアパドルとセルフレスキュー道具を、スターンデッキに装着してみた。
前回はバウ側デッキだったのだが、この方がビジュアル的にもすっきりして漕いでいる時の気分が良いし、写真を撮るにも好都合。

クルーソー460の組み立てが簡単なメリットを活かし、朝8時には漕ぎだす事ができた。

この旅は、基本的に出発地点までは公共交通機関での移動となるため、今後は早朝に出艇地を出る事は難しくなる。
しかしながら瀬戸内海でのシーカヤック旅は、潮流が一番重要なファクターの一つ。
今のタイミングとエリアでは、午前中が追い潮なので少しでも早く漕ぎだしたいのだが、そんなときに組み立て時間が短い事は大きなメリットなのだ!

***

忠海の港を出ると、追い潮の影響を感じる。 快調なパドリング。

造船所を抜け、

ちょうど1時間が経過したくらいの場所にある、小さな無人島の浜でしばし休憩。
芸予諸島の空は晴れて、快適なツーリング日和。

ここからが、今日の最初の難所。

高根島の北側を抜け、佐木島に渡る海峡横断。 ここは、行き交う船も多く、潮流も早いので、要注意エリアなのだ。
しかし今日は幸いな事に船の往来も少なく、潮も思ったほど流れていなかったので、無事に通過。

佐木島と小佐木島との間の、激潮海峡を漕ぎ抜けた。

ここからは、細島の南端をかすめて岩子島へ。

しばらくすると、因島大橋が見えてくる。

今日の二つ目の難関が、この因島大橋越え。
ここは、潮流が厳しい瀬戸の一つであり、なんとしても昼前に越えておきたい場所なのである。

途中のエディを含む複雑な潮流を越え、なんとか無事に通過した。

時間は11時。 追い潮のおかげで、なかなか良いペースである。

***

想定していた、今日の二つの難関を想定より早い時刻に無事越える事ができたので、そろそろ今日のキャンプ地選定に。

海図とにらめっこして、おおよその見込みを立てる。

想定していた浜に近づくと、なかなか良さげな雰囲気。 『ようし、ここに決定や!』

シーカヤックを引き揚げ、荷物を取り出し、運び上げる。

荷物を運び、カヤックを引き揚げ、テントを張っていると、地元のおじいさんが来られた。
『すみません。 今日、ここでキャンプさせていただきたいんですが』 『ここは、地元の自治会で管理しとる土地なんよ。 わかった。 テント張ってもええよ』

『ありがとうございます』 『ところで、どこから来た?』
『はい、呉からです。 このカヌーで呉から旅をしていて、今日は忠海から漕いできました』 『なに! このカヌーで漕いできた。 そりゃあそりゃあ。。。』

『ワシは、旅が好きなんよ。 自分でクルマを運転して北海道を旅行しよる。 80歳を越えてから、もう3回、北海道まで自家用車で行って、車中泊で旅行した』
『えー、自分で運転して行くんですか?』 『そうよ。 青森の大間まで運転していって、そこからフェリー』

『その先は、行き先は決めてないから、車中泊しながら行きたいところへ行く』 『気分次第ですね。 俺の旅と一緒ですよ』

『ところで買い出ししたいんですが、この近くに食料品を売っている店はありませんか?』 『なに、買い出し。 歩いて。 そりゃ無理じゃ。 店は遠いよ』
『そうですか』 『買い出しに行くんなら、乗せていってやる』
『え、いいんですか』 『ああ、ええよ』 『ありがとうございます』

と、言う訳で、80代半ばだと言う方の軽トラに乗せていただき、10分ほど離れたスーパーへ。 

うん、これは歩いては行けないな。
『すみません。 すぐに買ってきますから』 急いで、お弁当とビール、水を購入して軽トラへ戻る。

浜に戻る途中も四方山話。

『それにしてもお元気ですね。 とても80歳を超えているようには見えませんね』 『わしは80歳まで働いて、それからようやく人並みに時間が取れるようになった』
『仕事は何をされてたんですか?』 『いろいろやな。 郵便局の局長もやったし、尾道海技学院の関連の非常勤講師もやりよった』

『尾道海技学院といったら、教頭先生とは顔見知りなんですよ』 『おお、教頭いうたら中田さんか。 何日か前に、家に遊びに来たよ』
『えー、そうなんですか! いやあ、世間は狭いもんですねえ』

***

テントを張った浜に戻ると、『おお、そうじゃ。 旅で困るもんいうたら水じゃ。 そこの家に言うてあげるけえ、必要になったら水をもらいんさい』
ありがたいことである。 さすが、車中泊で旅される方だけあって、的確な気配り/心配り。
『本当にありがとうございました。 おかげさまで助かりました』 『なあに。 わしも旅が好きじゃけん。 明日は気をつけて』
『はい、ありがとうございます』

いやあ、偶然訪れた浜でこんな出会いがあるなんて。 そして、懐かしい人と共通の知り合いだったなんて。
ほんと、世の中狭いものである。

***


俺好みの静かな雰囲気のキャンプサイト。

濡れたウエアも干して、明日に備える。

近くには、きれいな花も咲いていて、最高のロケーション。

瀬戸は夕暮れ。

晩ご飯は、軽トラで連れて行っていただいたスーパーで買って来たお弁当。

エビスビールをゴクリ! 『ああ、美味いなあ』

食事を終えると、ビールを飲みながらiphoneで音楽を聴く。


スターダストレビュー、『木蓮の涙(ACOUSTIC)』
本田美奈子、『つばさ』
JUJU、『Distance』
MISIA、『明日へ』
徳永英明、『あの鐘を鳴らすのはあなた』


シーカヤックでの一人旅。
暮れなずむ瀬戸内の景色を眺めながら、こんな歌を聴いていると、これまで50年間の人生が走馬灯のように思い出される。

嬉しかった事。 悲しかった事。 楽しかった事。 寂しかった事。
飛び上がり、叫びたくなるほどの達成感を味わったあの時。
挫折感に圧し拉がれて絶望し、まるで生きている気がしなかったあの頃。

様々な想いがこみ上げてきて、心はギリギリと締め付けられる。 そんな一つ一つの経験が、今の俺をかたちづくっているのだ。
挑戦したが失敗したものも含め、無駄な経験は一つもないと信じている。

そして、一人旅だからこそのこんな貴重で大切な時間を、じっくりと噛みしめ、慈しむことができるようになった。

***

2014年5月1日(木) 朝5時前に起床。
今日は、6時半頃が干潮なので、追い潮狙いで早めの出発である。
パンで朝食を済ませ、荷物をパッキング。

5時45分には出艇。

まだ気温が低く、風も冷たいので、途中からはスカノラックを羽織ってのパドリング。

百島の北を抜け、常石側に寄って進んでいく。

この辺りも造船の町。

本土と田島を結ぶ橋が見えて来た。

橋を越えたところで、しばし休憩。
あまりの寒さに、ホットドリンクを買おうと自動販売機を探す。

道に出るとすぐに自販機は見つかったのだが、よろこんだのもつかの間。 すべてコールドドリンクであった。
『アチャー。 まだこんなに寒いのに、ホットドリンクなしかよー。。。』
気を取り直し、カヤックに戻ってアンパンを取り出し、パクリ。
時間はかかるが、エネルギーを補給して中から暖めようという作戦である。

再びシーカヤックに乗り込み、漕ぎだした。
この頃から晴れ間も覗きだし、徐々に気温も上がってくる。

阿伏兎観音。

しばらく漕ぎ進むと、今日の目的地である鞆の浦。


港に入り、しばし港内散策した後、仙酔島へと渡る。

今日のキャンプ地はここ。

仙酔島は、鯛網漁の準備も整い、連休モード。

テントを張り、寝床を整備し、着替えると、お昼ご飯を食べるため、渡船で鞆の浦へ。

今日のお店は、『ニューともせん』さん。
以前、妻とドライブに行ったときに見つけたお店で、ランチがおいしかった事を覚えている。

『水にしますか、それともお茶がいいですか?』 『はい、ビールお願いします。 生ビールで』

『いただきます』 一人乾杯! 『あー、美味い』
食事は、焼き肉定食。

これがやはり美味しいのだ。 『ごちそうさまでした』

『営業時間は何時までですか?』 『11時から夜は9時くらいまでですね』
『途中、休憩はありますか?』 『はい、2時から4時までは休みです』
『じゃあ、また夕方来ますよ』 『ええ、ぜひ一杯飲みに来てください』


店を出ると、しばし町を散策。

今日は對潮楼へ。

さすがの眺めである!

ここから見ると、2艇のタンデムカヤックでツーリングしているのが見えた。

この辺りで、本格的なタンデムカヤックでのツアーと言えば、もしかして村上さんかもしれないなあ。

***

夕方4時まで、まだタップリ時間があるので、一旦仙酔島に戻る事に。

空は晴れて、絶好の観光日和。

島内の散策路も快適である。

テントを張っている浜は、訪れる人も少なく静かである。


浜に戻り、干していたウエア類を片付け、しばし休憩すると、国民宿舎でお風呂に入る。
昨日は風呂に入れなかったので、温かいお湯がなんとも心地よい。

4時15分の定期船で再び鞆の浦に渡り、お店へ。

『こんにちは。 晩ご飯食べに来ましたよ』 『あー、いらっしゃい』
『今日は、仙酔島にテントを張っとるんです。 呉からカヌー/シーカヤックで、ここまで漕いで来たんですよ』 『えー、そうなん。 すごいねえ』

『今日は、何がおすすめですか?』 『今日はハゲ。 カワハギじゃねえ』
『じゃあ、煮付けと刺身を』 『煮付けをハゲにするんじゃったら、刺身は別の魚にする?』
『いや、ぜひ”ハゲ尽くし”でお願いします!』

そう、坊主頭の海坊主には、ハゲが似合う。

そして、運ばれて来た刺身がこれ!

さらに、煮付けがこれ!

いやあ、刺身は最高! 肝はもちろん絶品である。
煮付けも旨い。

顔を出されたご主人とも、シーカヤックでの旅の話をさせていただき、また、店に来られた地元の方々から、メバル釣りの話や、素潜りの話などを聞かせていただき、楽しい一時。

干物の店を出されているというおばちゃんからは、干物作りの話を伺い、店の方からは、『このアサリのしぐれ煮は、この人が作ったんよ。 食べてみんさい』
『あ、これ美味しいですねえ』

『これ、さっき採れたばっかりのイカ。 刺身にしたけえ、食べんさい』

『ありがとうございます』 『あー、これも旨いなあ』

そろそろご飯が食べたいな。 『ご飯とみそ汁、いただけますか』
『さっき、鯛飯が炊けたばっかりなんよ。 食べる?』 『えー、いいんですか。 いただきます』

という訳で、おいしい鯛飯とみそ汁で〆。

『あー、本当に美味しかったです。 これはまたぜひ来ますよ』 『こんどは、鞆の浦に素泊まりで来て、ここに飲みにきんさいや』
『はい、ぜひそうします!』

テントを張った浜に戻り、夕暮れの瀬戸内海を眺めながら、焼酎をぐびり。

最高の一日であった。

***

2014年5月2日(金) 今日の干潮は7時過ぎなので、少し遅めの出発。

今日の難関は、福山港越え。
ここは出入りする船舶が多いので、細心の注意が必要なのである。

急流の瀬戸は、潮汐や潮流を確認して対応する事ができるが、港では全く異なる安全対策が必要である。
時間に余裕を持ち、必要なだけ待てる準備をしておくこと。 体力に余裕を持ち、全速ダッシュが必要なときには漕ぎ続けられるように備えておく事。
そして何より、どの船がどんな動きをしているかを観察し、五感を研ぎ澄ませて耳を峙て、見落としがないように常に周囲をワッチし、『かもしれないパドリング』に徹する事。

何度も船待ちをしつつ、安全第一で福山港を漕ぎ抜けた。

神島に到着すると、何度か訪れた事のある浜でしばし休憩。

朝とは打って変わって、快晴のツーリグ日和。


***

もう一漕ぎすると、今回のゴール地点である神島港。

穏やかな港の片隅を借り、シーカヤックを引き揚げた。


カヤックをバラシ、パッキングし、荷物を片付け、タクシーを呼ぼうと検索していると、目の前に一台のクルマが停まった。
運転席には、懐かしい顔が!

『ハラダさん! お久しぶりです。 今日はどうされたんですか』 『クルマをここに置いとるんよ。 今日は市役所に用事があるから来たんよ』
『一目で分かったよ。 これからどうするん?』 『はい、呉から漕いで来たんですが、今日はここで揚げて笠岡駅まで行こうと思うてます』
『乗せていこうか?』 『はい、ぜひお願いします!』

なんという縁であろうか。
まさかこんなところで、俺のシーカヤック人生に多大な影響を受けた、あのパイオニアスピリッツ溢れた第1次瀬戸内カヤック横断隊の同士であるハラダさんにお会いできるとは!
*参考:プレゼ資料

『ここには関所があるから、素通りはでけんでえ』とハラダさん。 『ほんまですねえ。 それにしてもご無沙汰してます』

送っていただく車中、隊長や共通の知人の近況、瀬戸内のシーカヤック動向などについて四方山話。

笠岡駅で下ろしていただき、握手して、『本当にありがとうございました。 ではまた!』

ここからはJRの旅。
海沿いを走るJRからは、所々で今回漕いで来たルートを見る事ができ、旅の余韻に浸る事ができるのが楽しい。


***

最寄りの駅で降り、タクシー乗り場に行くと1台だけタクシーが待っていた。
近寄って覗き込むと、『あ、久し振りじゃねえ』と運転手さん。
『あ、今回もよろしくお願いします』と俺。

そう、第1回目の呉~忠海の時、近くの浜まで乗せていただいた運転手さんだったのだ。

『あれからの帰り?』 『いいえ、一度家に帰って、また出たんです』 『確か、笠岡まで行くいうて言いよったよね』
『ええ、今日は笠岡まで着いて、カヤックを畳んで戻って来たんですよ』 『へえ、すごいねえ』

『いやあ、これも縁ですね。 また次回も送迎お願いしますよ!』

短時間だが、タクシーの運転手さんとも四方山話を楽しみ、最後の最後まで思わぬ出会いに驚いた。

***

50歳の春に2度目のチャレンジを開始した、尺取り虫方式での瀬戸内横断旅。
今回は、地元呉から、クルーソー460と出会った思い出の地である兵庫県姫路市の的形海岸までの東行きだけではあるが、久し振りの尺取り虫旅を楽しんでいこうと思っている。

前回のように、横断する事が目的ではなく、今回は、様々な土地をより深く知り、様々な人との出会いを楽しみ、各地の美味しい居酒屋さんを開拓していく、50歳ならではの旅にするつもり。
前回は3日で漕ぎ抜けた呉~笠岡間を、今回は計5日間かけてたっぷりと堪能した。
そして、これは一人旅なのだが、まるで独り旅でないような多くの出会いと親切なサポートに感謝!

10年前に比べて白髪は増えたが、その分、海での経験を積み、経済的にも余裕が増え、旅を楽しむ心のゆとりができたと思う。

『嬉しい事に、山があり、海がある』
そう、急ぐ旅でもなし、様々な場所に引っかかりながら、のんびりまったり海旅を楽しむ事にしよう!

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