あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 四国遠征(2)_田井ノ浜で『あるくみるきく』

2009年04月30日 | 旅するシーカヤック
2009年4月28日(火) HORIZON・尾崎さんのおススメで急遽目的地を変更し、徳島の道の駅で車中泊した朝、今日の目的地である蒲生田岬へとクルマを走らせる。
曲がりくねった狭い山道を抜け、尾崎さんに教えていただいた場所に到着。 なかなか良い感じじゃないか!

でも風が強い。 北東の風である。 うーん、これはなかなか厳しいなあ。

天気予報によると、高気圧が近付いているというので、その影響で風が吹いている可能性もある。
ここで風待ちする? 夕方までには風が落ちて、のんびりツーリングを楽しめるかも。 でもせっかく時間もあるので、下見も兼ねて、四国最東端だという蒲生田岬まで行ってみるか。
 
いやはや、なんとも。 景色は良いのだけれど、ピューピューと岬を吹き抜ける強い北東風で、これではとてもカヤックを出す気にはなれない。
急勾配の階段を歩いて登り、景色を堪能した。
 
***
地図を開く。 うん、この北東風なら、少し南下すれば風裏でカヤックを漕げる場所があるかも!
特に宛てはないが、出艇場所を探してクルマを走らせた。

お! ここはなかなか良さそうだ。 『田井ノ浜』
 
偶然見つけた浜だけど、景色も良くて今日は風裏。 穏やかな海。
 
浜に居られた地元の方に伺うと、ここにクルマを停めても良いらしい。 またここは、南風が吹いたら良い波が立つのでサーファーが集まるスポットでもあるとの事。 『今日の風なら波は立たんし、あそこのスロープから出したらええよ』 『はい、ありがとうございました』

早速シーカヤックを降ろし、ツーリングの準備を完了。 独り静かに太平洋に漕ぎ出した。
うーん、この岩の雰囲気、コバルトブルーに輝く海の色と鮮やかな新緑、そして晴れ渡った空。 いやはや、なんとも、最高である!
***
岬を回った所に浜があった。 近付くと、袋を手にしたおじいさんが浜を歩いている。
『こんにちは』 すると、『おお、この船は速そうじゃなあ。 どっから来られた?』
『はい、田井ノ浜から漕いで来ました。 今日は、蒲生田岬を漕ごうと思うとったんですが、北東が強くて諦めたんです』

『あそこは、風が強い所じゃから。 ここも、今日の風なら波は立たんが、ハエ(南風)が吹いたら波が立つ』 『今日は、テングサを拾いよるんよ。 南風が吹いたらテングサが海から打ち上げられるじゃろう』 シーカヤックを浜に揚げ、しばし立ち話。

『このフネは早いなあ』 『ええ、長さがあって幅が狭いでしょう。 時速で7キロくらい、一生懸命漕げば10キロ位出ますからねえ』
『ひっくり返ったりせんのんか?』 『はい、幅は狭いんですけど、パドルが長いから、その分安定性が高いんだと思います。 今日は空荷ですけど、荷物を積んだら重心が下がってすごく安定しますよ。 津軽海峡の凄い波の中も漕いだことがあるんですが、ひっくり返りませんでした』

『波は入ってこんのか』 『ええ、漕ぐ時はこのカバーを付けるんです。 すると波は打ち込んでこない』 『なるほど』
『こっちの櫂は?』 『予備用です。 こっちが折れたり流されたりしたとき用に』
***
『ところであんた、学生さんか?』

これまでも何度か『学生さんか?』と聞かれたことがある。 さすがに見た目はオヤジなのだが、平日の昼間に海を一人で旅するなんて、まともな社会人じゃないと思われるのであろう。

『ところであんた、学生さんか?』 苦笑いしながら、『いえいえ、普通の会社員です。 もう連休なんで』
『ほう! じゃああんたはええ会社に勤めとるんじゃろう。 普通なら今日はまだ仕事じゃ』 『まあ、ええかどうかは知らんですが、連休だけはそこそこ長いですね』
***
『あのう、漁師さんなんですか?』 『今は引退したけど、それまでは漁師やったよ』
『このあたりでは、どんな漁をされよったんですか?』 『前はのう、”藻ジャコ”漁をやりよった』
『”藻ジャコ”って何ですか?』 『海藻に付いたブリの子供よ。 これを採って、養殖業者に卸しよった。 だいたい5月頃が季節で、わしらも潮岬の方まで採りにいきよったもんじゃ』

『ハマチの養殖が盛んじゃった頃は良かったが、その後どんどん値が下がってしもうて駄目じゃ。 今じゃあ、漁師も減ってしもうて。 よっぽど子供がやりたい言うたら別やけど、漁師を継がせる人はほとんど居らんよ』 『確かに。 日本海をシーカヤックで旅した時も、漁師さんがそう言うとられました。 魚は安い、油は高い。 とんと儲けにならん。 船を出すのは、定年して年金暮らしの人ばかりじゃ、言うて』 『そうじゃろ、そうじゃろ』

『少子化じゃ何じゃ言うとるけど、人は結婚せんようになっとるし、子供は減るし、そのうち漁師はおらんようなって、日本は滅びるんじゃないかのう』 『漁師さんだけじゃなくて、農業も高齢化が進んで将来やる人が居らんようになるんじゃないか言うてニュースで言いよったですよ。 それに最近は水産業や農業なんかでも、外国人の人が増えよります。 日本の若い人はあまりやらんみたいですね』
『ほんまに日本は滅びるんじゃないかのうと心配しとる。 最近は、志(こころざし)のある政治家が居らんよのう』

話が弾み、そのうちおじいさんは浜に座り込んだ。 私もつられて座り込み、四方山話は続く!

『若い頃はどうされよったんですか? やっぱり漁師さんですか?』 『ああ、最初は東シナ海の底引き網船に乗って、漁に行きよった』
『その頃は、まだ朝鮮半島の人らは漁には出よらんかった』 『それが、日本が中古の船を売ってから、漁に出て来るようになったんよ』 『日本の政府は貧しかったからのう。 中古の船を売って儲けよう思うたんかのう』

『その頃は、楽しかったでしょう!』 『ほうよのう。 魚も多かったし、水揚げの時は天草辺りに上陸して、船が出るまで数日間遊んだもんよ。 ハッハッハッ』 『天草は、当時は賑やかじゃったんですか?』 『おお、船が魚を揚げよったし、賑やかな町やったよ』

『漁師は安定しとらんし、農家やったらイザとなったら土地を売るゆうこともできるが、漁師は海を売る事はできん』 『そりゃあそうですね』
『でも、自分の思うように自由にできるいうのはええよ』『なるほど。 漁師さんは一人親方ですもんね。 やっぱり魚を獲るんが好きじゃから、あまり金にはならんでも続けられるんでしょうねえ』
『ほうよ。 漁師は一人親方、子分無し、じゃ』と笑う。

『ここの土地には長いんですか?』 『うん、うちの家は古くからここ。 かなり昔からここに住んどったみたいじゃのう』 『阿波水軍の末裔じゃという話もある。 まあ、これは証拠がある訳でもないけどなあ』
***
『この辺りは、今はどんな漁なんですか?』 『今は、アマダイや鯛。 それでも卸値は上がらんし、なかなか儲けにはならんね。 若い漁師らの漁を見よったらもどかしいし、言いたい事もいろいろあるけれど、もう引退した身じゃけえ口は出さんようにしとる』

『ここは、台風が来たら荒れる。 あそこにハエがあるじゃろう。 あれは烏帽子岩いうて言いよったんよ。 それが台風で折れてああなった』

『このあたりは、土佐日記を書いた紀貫之が歩いた場所でもある』 『わしゃあ、短歌や俳句もやる。 息子の子供が、山頭火の古い本があったよねえて言うから、あるよ、言うたんよ。 そしたらその本をくれえいうけえ、ええよ言うてやったんよ』
『山頭火ですか! ええですねえ。 ”どうしようもないわたしが歩いてゐる(山頭火)” 自由に旅に生きる人にはたまらんですよねえ』 『ハッハッハ! 確かにそうじゃの』

『この辺りの町も、昔は栄えとったんですか?』 『おお、ここはええ湊じゃいうて、いろいろな船が寄りよった。 子供の頃にはまだ遊郭が残っておった』

『昔は”テングス売り”も来よったなあ』 『テングスって、天蚕糸(テグス)の事ですよね! あの蚕から取れる』 『そうよ。 前は、テングス売りがあちらこちらを回って商売しよった』 本では読んだことがあるが、テグス売り/テングス売りの話を直接聞かせていただいたのは初めてである。 貴重なお話。
***
偶然に浜で出会った元漁師のおじいちゃん。 『あんたは ”旅の人” じゃから、恥もなにもないが』と言う事で、若い頃の楽しく興味深いお話も伺った。 ここには書く事は出来ないが、『えー、そりゃあええですねえ! うらやましいなあ』 『アハハ、そんな事もあったんですか!』 『いやあ、たまらんですねえ!』 浜に二人の笑い声が響く。

『この年になってなんじゃけど、やっぱり若い頃にもっと遊んどったらえかったなあ、って思うんよ』 『えー、これまで充分に遊んどられるじゃないですか!』 『でものう、歳をとって体が動かんようになったら、やっぱりそう思うもんよ』

昔から現在までの漁の事、今の社会の状況、遊びの話から山頭火、紀貫之まで。 話題の幅が広く、自分の経験に基づいているから話が深く、そして面白い。
一生懸命漁に取り組み、遊びを心底楽しみ、様々な事に興味を持ってチャレンジして経験を積むと、こんな文化系漁師さんになれるのだろうか。 うーん、ええなあ。 わたしもこんな懐が深く魅力的なジイさんになりたいものである。
***
四方山話で盛り上がり、時計を見るともう30分以上過ぎている。

『どうもありがとうございました! いろいろなお話を伺うことができ、おかげさまでとても楽しかったです』 『こっちこそ、長う引き止めて悪かったのう。 気をつけて行きや!』
いやいや、引き止めていただいて、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいである。
***
『さて、どちらへ行かう 風が吹く(山頭火)』 北東風が強く、予定していた蒲生田岬ルートを諦めて偶然訪れた『田井ノ浜』

今回は、北東風に導かれてこの元漁師さんにお話を伺うことができた。 偶然のように見えて、出会うべき人に出会う事ができた旅。

『あるくみるきく_旅するシーカヤック』、至福の一時。

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瀬戸内シーカヤック日記: 四国遠征(1)_今治、七五三ヶ浦→徳島移動

2009年04月30日 | 旅するシーカヤック
2009年4月27日(月) 朝起きると、いつものように天気予報をチェック。 週間予報では、晴れマークが続いている。
日本海はどうかな? うーん、今日明日は波が高そうだ。
瀬戸内は? 穏やかでツーリング日和になりそうである。 しかしせっかくの大型連休。 せっかくだから、今まで漕いだ事のない場所に行ってみたいなあ。

そういえば一昨日のニュースで、しまなみ海道は、ゴールデンウイーク中は平日でも上限1000円にするって言っていた。 『これって、まるで俺のためのニュースじゃないか』 『いやー、ほんまやね』 なーんて妻と二人で笑いながら見たニュースを思い出した。
はてさて、四国の天気はどうだ? おー、これはなかなか良さそうである。 絶好のツーリング日和になりそうだ。

『旅するシーカヤック_四国編』 出発日は今日だが、いつ戻ってくるか、どこで漕ぐかは、『風の吹くまま、気の向くままの、風来坊一人旅』 うん、決まりだ。 今回はこれで行こう!
***
『いつ帰るか分からんけえ、毎日連絡するよ。 じゃあ、行ってくるけん』 『忘れ物ない? 気をつけて』
最高の晴天の中、平日でクルマの少ない『しまなみ海道』をアテンザスポーツワゴンで走り、今治に到着。
今治にはシーカヤックツーリングを楽しめる場所があるって、シーカヤック仲間のマサさんから聞いている。 たしか、七五三ヶ浦(しめがうら)だったよなあ。 行ってみるか。
カーナビの目的地を設定し、狭い山道を抜けると、目の前に海が広がった。

青い空に、きれいなコバルトブルーの海。 目の前には、松が生えた小さな島?岩?があり、海の色も美しい。 なかなか雰囲気の良い場所である。
 
梶取ノ鼻の手前でUターンし、少し漕ぎ進むと、浜に大きな石が。 ???
これって、上から落ちて来たの? それとも誰かが運んで置いたのだろうか。 生名島にも、遠くから海を運んで来たという巨岩があるし、この丸い石も、巨石信仰と関係があるのかな?
なかなか不思議な雰囲気の浜で、神秘的な感じさえ受ける光景である。
***
錨掛ノ鼻を越えて、岸沿いに漕ぎ進むと、海の中に鳥居がある。 シーカヤックに乗ったまま潜れそうだったので、帽子を脱ぎ、サングラスを外し、手を合わせて『海旅の安全』をお願いして、潜らせていただいた。

ここから先の海岸線は、護岸されており単調な雰囲気。 うーん、ここまででいいかな。

再び漕ぎ戻り、梶取ノ鼻まで行くと、潮がザワザワと音を立てて流れている。 目の前には、大崎下島と岡村島。
いつもは、大崎下島と岡村島からこの梶取ノ鼻を眺めているのだが、今日は逆からの景色。 これはこれで、なかなか感慨深いものがある。
***
 
小さな浜に上陸し、お昼ご飯。 今日は、出がけに妻が作ってくれたお弁当である。 『いただきます』
***

出発した浜に戻り、1時間半ほどのショートツーリングを終了。
距離は短いが、海もきれいで雰囲気も良い場所である。 マサさん、今回は朝に突然思い立ってやって来たので連絡できませんでしたが、エリア情報役立ちました。 ありがとうございました!
***
さて、明日はどこを漕ごうか? 地図を広げてしばし思案。 香川県の粟島あたりに行ってみるか。
今日は、どこか適当な所で車中泊だ。

一般道路を走り、東へ。 途中、コーヒーを買うため、コンビニに立ち寄る。
お金を払うと、レジのおばちゃんが突然『触ってもいい?』 エーッ、触る? ??? ???
いくら店内にだれも居ないとはいえ、いきなりそれはないよなあ。

『さ、さわるんですか?』 『これこれ。 このバッグ』

そう、おばちゃんの興味の対象は、黄色いペリカンケースであった。

『これ、何で出来とるんやろか?』 私はニコニコと、『これは硬いプラスチックで出来とるんですよ。 ええでしょう!』と自慢する。 『ほうねえ』
『そしてね、防水なんです。 じゃから、貴重品を入れるんに重宝しとるんですよ』 『なるほどねえ、海で何かして遊びよるんね?』 『ほうなんですよ。 シーカヤックをしよるんです』

『これを持っとると、レジの人からよう話しかけられるんです。 ”ここから何が出て来るんじゃろうかと思いよった”とか、”カワイイ入れ物じゃねえ”とか』 『そうじゃろうね』
『ちょっと持ってみてもええ? どれくらい重いんじゃろう』 『どうぞどうぞ。 今は、ケータイとか財布とか入っとりますし、頑丈じゃから少し重いですけどね』 『ほうほう、こんな感じねえ』

今回もまた、私のトレードマークにもなっている黄色いペリケースが切っ掛けで、ほんの一時ではあるが、楽しい会話が盛り上がった。 良い旅になりそうな予感!
***
夕方、徳島にある『HORIZON』の尾崎さんに、別件で電話。

最初に必要な打ち合わせを済ませ、『じつは今、四国に来とるんですよ。 昼頃今治で漕いで、今は移動中なんです。 明日、粟島あたりを漕ごうと思うとるんですがどうですかねえ?』 『そうなんですか。 もし29日に四国に居るようやったら、こっちに来ませんか? 29日に日和佐でツアーの予定なんです』

『特に予定もないんで、じゃあ参加させて下さい。 それと、徳島やったら、蒲生田岬あたりはどんな感じですかね?』 『そら、ええですよ。 粟島辺りより楽しめると思いますよ。 近くに、車中泊に良い場所もあります』
『じゃあ、明日は蒲生田岬辺りを漕ぐ事にします。 今から行き先を変更して、徳島に向かいますわ。 で、どっかで車中泊します』 『では、29日に会いましょう』

『旅するシーカヤック_四国編』 特に予定のない風来坊一人旅。 風が、出会った人が、そして気分が行き先を決める。
楽しい旅はまだ始まったばかり。

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瀬戸内シーカヤック日記: 上関キャンプツーリング(2)_強風の夜&温泉でまったり

2009年04月25日 | 旅するシーカヤック
『バサバサ、バサーッ!!!』 真夜中、ものスゴい音で目が覚めた。
対岸の山から吹き下ろしてくる強風でテントが押され、入口側のパネルがたわみ、フロアが押し上げられる。

入口のジッパーを少し開けてみると、『ビュービュー、ピューピュー』とこれまた凄い音。
波の音は、宮本常一では『ドサリ、ドサリ』だが、ここでは『ドッシャン、バッシャン』

『アチャー、やられた』 予報は外れ、夜中から強風が吹きはじめたようだ。
***
1992年にカヌーを始めてから、グループツーリングでは二度だけ、途中の浜にシーカヤックを置いてゴールに戻ったことがある。 いずれも横浜単身赴任時代で、一つは外房、もう一つは伊豆であった。
伊豆の方は、かれこれ7、8年前になるだろうか? 『ジョンダウド氏』が日本に来られて伊豆で一泊二日のイベントが行なわれたとき、初日の日帰りツーリングで大荒れになり、蒼々たる面々が協議した結果、途中の浜にシーカヤックを残してゾロゾロと山を歩いて登り(その日に帰らないといけない人のシーカヤックは山道を運んだ!)、宿まで帰った事を覚えている。
 
瀬戸内に戻って以降、ソロツーリングが主体である私は、安全志向、のんびりツーリング志向で、どちらかというと臆病とも言えるくらい安全サイドの判断をするという事もあり、これまで単独でのツーリング/キャンプツーリングでは、一度もシーカヤックを置いて定期船で帰らなければならない、あるいは島に閉じ込められて延泊を余儀なくされるというような状況に陥った事はなかった。
安全サイドの判断をしつつ、それでも一年を通してみるとそこそこの回数のキャンプツーリングを楽しむことができている。

瀬戸内は広く、多くの島を有しており、海の状況も多様なため、風向きや潮流、そして許容できるリスクの大きさに応じて、様々なルートのプランニングが可能であり、これが旅系瀬戸内シーカヤッカーの楽しみの一つだと思う。

しかし今晩は、『とうとう、シーカヤックを置いて避難する日がやって来たのか?』と思わせるほど、ひどい風。
***
まあこのエリアでこの風向きなら、いくら吹いてもそこまで波は高くならないし、朝までまだ時間もある。
明日の午後から天気は崩れるというから、延泊しても状況はひどくなるだけ。 どうしようもなかったら、シーカヤックと荷物をここに置いて、干潮時に馬島まで歩いて行き、定期船で地方(じかた)まで戻ればいいや。

なるようになるさ。 と言う事で、外に出しておいたクーラーバッグと荷物を、重しにするためテントの中に入れ、再びシュラフに潜り込み、眠りに落ちた。
***
2009年4月24日(土) 朝、5時に目が覚める。 外は徐々に明るくなりつつある。
まだ時折強くなるものの、風の強さと吹き続ける時間の長さは、夜中ほどではなくなった。
 
今朝はうどんの予定だったが、強風の中での調理は諦め、非常用に持っているカロリーメイトとお茶で、朝ご飯を済ませる。
***
外に出てみると、風の影響もあってかなり体感気温は低い。
昨日は半袖のTシャツ1枚で漕いで来たのだが、今日は準冬用装備が必要そうだ。 防水バッグから、イザという時の為に入れてある、『パタゴニアのキャプリーンの長袖上下』を引っ張り出して着用。 アウターは、何かあったらと積んできていた『スカノラック』
完全防備で強風に臨む。 荷物をパッキングし、パドルリーシュを装着して、準備完了。

対岸の山から吹き下ろしてくる風に向かって漕ぎ出した。
『ピューピュー、ビュービュー』 『ドッシャン、バッシャン』 こんな海況の時は、波の上を舐めるように、へばりつくように乗り越えて行く『ニヤック』の特性と、向かい風に強い『アークティックウインド』の組み合わせが、なんとも心強い。

舳先から、スプラッシュが飛んで来て顔を濡らす。 まだ顔を洗っていなかったが、海水のスプラッシュで洗顔だ。
ジリジリと、だがグイグイと、忍耐のパドリング。 手袋をしていないので、濡れた手は冷たい風で冷やされて次第に感覚がなくなってくる。 あともう少し。

港の入口まで来たらもう安心。 いやあ、化繊の長袖上下とスカノラックを持っていて良かった。
やはり『備えよ!』である。
***
強風のため、予定より早く地方(じかた)に戻って来た。 さて、温泉にでも行って、ゆっくり潮抜きをしよう。

今日の温泉は、『深谷峡温泉 清流の郷』 昔、家族で錦川の川下りや河原でのキャンプを楽しんだ後、よく入りに来たお気に入りの温泉である。

今日は金曜日と言うこともあり、最初は私だけの貸し切り状態であった。 外の景色を眺めながら、心地良い湯に浸かり、のんびりまったりと過ごす。
***

お昼ご飯は、『季節限定_山菜天婦羅付き蕎麦』 うん、この山菜天婦羅が美味い。
衣はサクサク、中はしっとり。 様々な山菜の味と食感を楽しむことができる。 『ごちそうさまでした』

金曜日の夜には本格的な雨になった。 一足お先のゴールデンウイーク。 帰りは少しだけハードだったが、なかなか良い時に漕げたなあ。

明日は妻と二人でゆっくりと、映画でも観に行こう。
→ で、行って来ました。 『グラン・トリノ』  クリントイーストウッド、渋くてカッコええなあ。
あんなジイさんに成りたいものだ。

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瀬戸内シーカヤック日記: 上関キャンプツーリング(1)_カブトガニ発見!

2009年04月24日 | 旅するシーカヤック
2009年4月23日(木) 今日から一足早い連休に突入。 週末は天気が崩れるようなので、木金でキャンプツーリングに行って来よう!

出発日の朝5時。 いつものように、最新版の天気予報をチェック。 うーん、これは。。。
今日は天気は良く風も弱いのだが、明日は朝から風が強くなる所が多いようだ。
候補地を一つ一つチェックし、明日の風があまり上がらない予報の場所に決めた。 ようし、久し振りに上関だ。
今回は、ちいさな無人島でのんびりまったりのキャンプツーリングにしよう。
***
いつもの浜から出発し、馬島を回って今日の目的地、刎島へ。
 
少し風はあったが、快晴の空の下、無事キャンプ予定地の浜に到着。 ツーリング終了!
これって、ほとんど漕いでないじゃん? って声もあるだろう。 でも、私にとってシーカヤックは旅の道具。 キャンプ地まで行く事が目的なので、目的の島が20km先にあれば20km漕ぐし、数km先ならそこまで漕ぐだけのこと。 私はこれで十分満足なのである。
***
いつものように、どこにテントを張るかを決めるため、浜を散策。 すると、そこにスゴいものを発見!
『カブトガニ』である。 もう生きてはいないが、甲羅に光沢も残っており、死んでからそんなに日数は立っていないことが伺われる。
 
カブトガニといえば、笠岡が有名だが、この海域にも生息しているんだ! 驚きである。
少し離れた所にももう一匹の死骸があったので、この付近に居る事は、おそらく間違いないだろう。
***
まずはお昼ご飯。 買って来たお弁当をひらき、ビールを『プシュッ』と開ける。 『トクトクトクトク』コップに注ぐ。
『グビリ、ゴクゴク』 『プハーッ』 うん、ビールが美味い。 もう、気分はゴールデンウイークである。

今日は、無人島でのんびりまったり。 お昼ご飯を終えると、テントを張り、中に潜り込んで本を開く。 『庶民の発見(宮本常一)』
 
ハッと目が覚めた。 なんだ、夢か。
いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。 久し振りのお昼寝。 あー、気持ち良かった。
***
夕方、潮が満ちてくると、馬島との間の浜が海へと変わっていく。

ちょうど、北側の海と、南側の海とがつながっていくのを観察。 『3、2、1、合流だ』
***
日が傾き、お腹も空いてきた。 そろそろご飯の準備に掛かろう。
今日は、前回ツーリングでお気に入りとなった『釜炊きごはん』と、家から持って来た山菜の天婦羅(たらの芽、タケノコ)、冷や奴。
 
うーん、この釜炊きご飯のおいしいこと! そして、フライパンで温めた『たらの芽の天婦羅』がビールに合うなあ。

一足お先のゴールデンウイーク。 久し振りに訪れた刎島でのソロキャンプ。 天気も景色も最高だ。
カブトガニが生息している事も分かったし、釜炊きご飯もビールもおいしい。 なかなか良いツーリングじゃないか。

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瀬戸内シーカヤック日記: しまなみキャンプツーリング(2)_あるくみるきく、弓削の『おせったい』

2009年04月21日 | 旅するシーカヤック
いつもお世話になっている生名島のキャンプ場で、一夜を過ごす。 自然の中で独り、静かに酒を飲み、ものを想う濃密な時間が、私には必要なのだ。
 
外は徐々に明るくなり、朝がやって来た。
***
8時頃から始まるというおせったい/島四国。 今日は、朝の早い便で弓削に渡る予定。

この青丸も、数年後には橋の架橋で役目を終えるのだなあ。 便利にはなるが、なんだか寂しいものだ。
***
昨年、シーカヤックを漕ぐために妻と生名島を訪れた時に知った『おせったい』だが、実際に歩いてみるのは初めてである。
まだ朝も早く、歩いている人がいないので、とんと様子が分からない。 まあ、海の方に行ってみよう。

そうして町中を歩いていると、幟が立ち、祠の中に人が居られた。
『おはようございます』 『おはようございます。 お参りして下さいね』 『はい』と応え、昨日からせっせとおつりを貯めておいた10円玉を取り出し、お盆の上に供え、お参りする。 『はい、どれでも好きなのを取って下さい』
 
様々な駄菓子が並んでおり、どれにしようか楽しい悩み。 『じゃあ、これいただきます』
『あの、この辺は、どこを回れば良いですか。 初めてなんですよ』 『そう。 ここの近くは多いんですよ。 あっちの坂の上にも2カ所あるし、こっちの町の方を歩いてもたくさんありますよ』 『ありがとうございます。 じゃあ、こっちに言ってみます』
 
このおせったいででもなければ、歩いてみる事のない弓削島の細い路地。 小高い丘の上、町角、海沿い。 あちらこちらで『おせったい』が行われている。
***
 
ある場所では、駄菓子屋さんにある『クジ』が置かれている。 『子供達に楽しんでもらおうと思って』と笑顔で言っておられた。
すばらしい。 せったいする側も、毎年行われる義務としてではなく、来る人々を心からもてなそうというその心遣い。 そして歩いて回る人も、感謝の気持ちでおせったいを受ける。 これぞ、お接待だなあ。
***
海沿いの道に出た。 ここは三叉路。 どっちに行けばよいのだろう?
後ろから歩いて来られた、二人連れのおばあちゃんに『おはようございます。 これはどっちに行けばいいんでしょうか?』
『こっちに行くと、奥の方に2カ所あるよ。 そこから戻って来て、今度はこっちに行くんよ』 『ありがとうございます』

しばし一緒に歩きながら、『今日は天気が良くてよかったですね』 『ほんまにね』
『今は、駄菓子をいただくじゃないですか。 昔はどうだったんですか?』 『昔はね、駄菓子じゃなくて、ごはんやおむすび、それにお漬け物だったんよ』 『そうなんですか』

『やっぱり、子供の頃は楽しみじゃったですか?』『そうよ。 漬けもんもね、家によって味がちがうじゃろ。 それも楽しみでねえ。 一日中歩くけど、あっちこっちで少しづつ食べよるから、ぜんぜんお腹が減らんかった』

『でも準備する方も大変ですよねえ』 『まあねえ。 でも、みんなで協力しおうて、いろいろな話をしながら支度するんじゃけえ、それも楽しみよ』 『なるほど』
***
 
何カ所も巡っていると、同じ人やグループの方々と何度もすれ違う。
そのうち、前から歩いてくるおばちゃんがニコニコと、『また会うたねえ』 『はい、そうですねえ』
お参りして、来た道を戻ろうとすると、おじさんが、『こっちこっち。 この坂をこっちに降りて行ったらあるよ』、と教えて下さったり。

まさに『旅は道連れ』 本当に、ありがたいことだ。 見ず知らずの私にも親切に教えて下さる。

同じ目的で一日一緒に歩くのだ。 みんな、親近感が沸いてきて、旅は道連れという言葉の意味が実感できる。
 
ゆっくりと島の道を歩いていると、普段気づかなかったものも、いろいろ見えてくる。 ここの畑の前には、海藻が干してある。 昔、海藻を肥料として畑に鋤き込んでいたと聞いているが、今でもそれは残っているのだ。
***
歩きはじめてから、約2時間とちょっと。 財布に貯めておいた10円玉もなくなった。
いただいた駄菓子を数えてみると、22個。 一カ所では、駄菓子ではなく赤飯のおむすびを一つ頂いたので、計23カ所を巡った事になる。 88カ所を回るには、確かに一日仕事であろう。

あるくみるきく_弓削島のお接待。 こんな旅が楽しめるのも、『瀬戸内の文化系シーカヤッカー』にとっての醍醐味の一つであろう。
漕いで、食べて、歩いて、飲んで。 いやあ、楽しい週末であった。

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瀬戸内シーカヤック日記: しまなみ、おせったい堪能キャンプツーリング(1)

2009年04月19日 | 旅するシーカヤック
水曜日の夕方。 キャンプ場を予約しようと電話する。 電話に出られた管理人さんは、何も言わないうちから『○○さん、生名島のお接待は明日ですよ!』 『え、そうなんですか! この日曜日が、弓削島のおせったいだと聞いたもんですから』
すると傍に居られた方に、『弓削のおせったいって、日曜日なの?』 『うん、そうみたい』と電話の向こうから会話が聞こえてくる。
『弓削の”おせったい”は日曜日みたいですね』 『ええ、そういう訳なんで、この週末またお邪魔します』

それにしても、なんで電話しただけで、”おせったい”が狙いだって分かるんだろうなあ? 不思議不思議。 いやはや、私はそんなに分かり易いキャラなんだろうか?
***
2009年4月18日。 この週末も、しまなみの生名島をベースにキャンプツーリングを楽しむ事にした。
でも漕ぐのは土曜日だけ。 日曜日は、弓削島のおせったい/島四国を巡ってみるつもりだ。
 
空は晴れて、絶好のツーリング日和。 今日は、岩城島を反時計回りで一周してみよう。 今日の岩城島では、妻から依頼された大事なミッションもあるのだ。
気温は高く、今日は今年初めての半袖Tシャツでのパドリング。 もう、夏も近い?
少し吹きはじめた向かい風の中、心地良い程度の筋肉への負荷と、アークティックウインドがガッチリと水をキャッチして、カヤックがグイッと進む感触を楽しみながら漕ぐ。 出発から1時間ちょっとで、岩城島のいつもの浜に到着。

***
上陸すると、お昼ご飯の時間。 いつもの『よし正』さんへと向かう。 今日は、定番の『よし正定食』ではなく、『島豚焼肉定食』を注文することに決めている。

注文を取りに来られた若女将さんが、私の顔を見ると『あ、この前、知り合いだと言う方が泊まりに来られましたよ』と声を掛けられた。
『島根の○○さんですね』 『ええ、そうです』 『しまなみに行くので、どこか良い所を知らないかと聞かれて、よし正さんをおススメしておいたんですよ』 『そうですか、ありがとうございました!』

『今日もカヌーで来られたんですか?』 『はい、生名から漕いで来ました。 明日は弓削のおせったいだと聞いたんで、行ってみようと思ってるんです』 『なるほど、楽しんで来て下さい。 大きな袋を持って行った方がいいですよ』

おいしい島豚(レモン豚)焼肉定食を堪能。 ごちそうさまでした。
***
今日岩城島を訪れた重要なミッションは、『芋菓子』の買い出しである。
岩城島名物の一つである、芋菓子と言えばここ、『タムラ食品』さん。 以前も何度か訪れており、私はここで工場直売の芋菓子を買うのが楽しみの一つである。
 
以前来た時にお話しさせて頂いた方が居られた。 『こんにちは。 今日はもう作業は終わりですか?』 『うん、今日はもう終わり』 『今日は、15袋買いたいんですけど』
すると、怪訝そうな顔をして、『15袋? どうすん?』 『はい、以前買って帰った芋菓子を、妻の職場に土産として持って行ったら、芋ケンピ好きな人が食べて気に入って、前も頼まれたんです』 『前に来た時、その人の分も買って帰ったら、今度は別の人も試食してみて、これはおいしいってことになり、今日は3人分頼まれたのと、あとは自分の家用に』
『へえー、そんなに違うんかねえ』 『はい、みんな、おいしいって評判だそうです』
 
芋菓子の買い出しを無事終えて、再び半時計回りで岩城島をグルリと回り、生名島へと戻ってきた。

大の上島町ファンであり、『なんちゃって上島観光大使』を自認する私。 ブログや妻の職場の人たちに頼まれる芋菓子の買い出しなどを通じて、少しでも上島町に貢献できるとうれしいのだが。
***
『またお世話になります。 今日は最高の天気でした』 『今日は暑かったですねえ。 でも天気が良くて良かった。 ゆっくりしていってください。 明日は、弓削でたっぷり歩いて下さいね』 『はい!』
 
自転車を借りて因島へと渡り、銭湯で潮抜きをしてキャンプ場へ戻る。
***
今日は最高の天気。 気持ちよく晴れ渡った青空に、新緑が映える。 『いつきても、ここの景色は好いなあ!』
 
今日は珍しく、他のお客さんが一組居られた。 それでも静かなキャンプ場。
***
今日も、シンプルなソロキャンプツーリングメニューだが、少し楽しみがある。
 
小さな釜で炊いたご飯は、ツヤツヤとしており、ひとつぶひとつぶが立っている! 『おお、これは美味そうだ』

もう一つの楽しみは、これまた呉名物の一つ『仔豚カレー』 これは、うちの息子達も大好物のカレールー。
釜で炊いた、ツヤツヤほかほかのご飯に、仔豚カレーのルーをたっぷりと掛けていただく。 『フーフー。 ホクホク。 ハフハフ。 そしてパクリ』 ビールを『グビリ』 他のおかずは、ストームクッカーで作った野菜炒めと、因島で買ってきた刺身。

おいしいご飯と、おいしいカレー、そしてビール。 目の前に広がるのは、しまなみの最高の景色。 こんな贅沢な晩ご飯はないなあ、これ以上何が要る?
***
食事を終え、暗くなってからは、高千穂で買い込んで来た、宿のご主人おすすめの芋焼酎、『一睡の夢』
 
小さなグラスでそのまま『チビリチビリ』と飲る。 つまみは、『生名村誌』

夕方、キャンプ場の管理人さんが、『これ、家にあったのを探して来たの。 読んでみます?』 『いやあ、これは好いですねえ。 ぜひ今晩貸して下さい!』
私の好みを良くご存知である。 ストライクゾーンど真ん中。 これぞ、最高のおもてなし。
本当に、いつもいろいろとありがとうございます。 感謝、感謝。
 
生名島、生名村の歴史を紐解きながら、おいしい焼酎で更けて行く静かな夜。
キャンプツーリングならではの、夜の楽しみ。 これがあるから、日帰りツーリングは可能な限り避けて、泊付きツーリングにしているのだ! 『あるくみるきく』

明日は、いよいよ弓削島の『おせったい/島四国』 楽しみだなあ!

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瀬戸内シーカヤック日記: 高千穂峡、鉄輪温泉巡り(3)_鉄輪温泉の貸間旅館と地獄蒸し料理

2009年04月15日 | 旅するロードスター/アテンザ
『また、ぜひお会いしたいですね』 『ええ、またここに遊びに来ますよ!』
宿を辞し、アテンザワゴンに乗り込んで次の目的地へと向かう。
***
今日は鉄輪温泉に辿り着けばよいだけ。 いろいろと寄り道して峡谷の景色を楽しみつつ、海沿いへと下って行く。
 
ある橋を見に行ったとき、せっかくだからと橋の中央まで行って下を覗き込んだ。

『え! こんなに深い谷だったのか! 凄い景色。 いやあ、実際に歩いてみないと分からないもんだなあ』
***
東岸に出てからは、海沿いの道を走る。
 
景色も良く、快適なドライブ。 浜や海、湾の状態もチェックでき、これはなかなか良い下見となった。
ふむふむ、このあたりの海況は、こんな感じなんだ! やはり、宿のご主人のアドバイスを聞いておいてよかったなあ。
***
午後3時過ぎ。 別府の鉄輪温泉に到着。
 
今日の宿は、鉄輪温泉名物の貸間旅館である。

『いやあ、昨日の宿とは対極だよねえ』 『そうそう、あまり行った事はないけれど上品な宿はもちろん、貸間旅館でもバッチリOK』 いやあ、本当にこのコントラストは面白いものである。 あんな世界もあり、こんな世界も楽しい。
***
荷物を置いて、『明礬温泉』へ。 妻も私も、明礬温泉の泥湯に興味を持っていた。 実際に行ってみると、『こんなにすばらしい温泉があったのか!』という感じ。
もちろん、島根の千原温泉も良いけれど、明礬温泉のディープかつ気持ちのよい世界はたまらない。
***
途中のスーパーで買い出し、貸間旅館へと戻る。
妻は、『宿のおかみさんは、アサリと春キャベツがおススメだって』
 
夕食は、まず鯛の地獄蒸し。 
 
そして、春キャベツと豚バラの地獄蒸し。 そして、炊きたてホカホカのご飯。 『うーん、これはお米が立っているねえ』
昨日お世話になった高千穂の宿とは別世界である。 昨日は、最高の食材をプロの方が調理してもてなして下さった。
それに対して、ここ鉄輪温泉の地獄蒸し料理は、なにより素材のおいしさを最大限に引き出すシンプル料理という点で、最高の夕食となった。
『あー、おいしかったあ。 ごちそうさまでした』 夜は、ドライブの疲れもあり、早々に熟睡。
***
翌朝。 6時過ぎに起きると、まずは朝風呂へ。
先客は一人。 私より、少し年配と思われる方である。

『おじゃましまーす』で始まり、会話に花が咲く。
『ここの蒸し風呂、入られました?』とその方。 『いやあ、まだなんですよ』と私。
『ここです』 『入ってみましょう』

『ここね、入ったら熱くて熱くて。 とても入ってられないんです』 『いやあ、これが普通ですよ。 そんなに熱い方じゃないですね』
『瀬戸内沿岸では、漁業や農作業の疲れを癒すために、こんな岩風呂/蒸し風呂が発達したんです』 『そんなんでっか』
『広島の竹原近くにも、蒸し風呂がありますけど、もっと熱い蒸し風呂があるんですよ。 そこは水着着用の混浴ですけど、サウナより汗が噴き出して、気持ち良いもんです』

その後も、蒸し風呂の事、最近の不況の事、すこし気配がする景気回復の予兆などなどの話で盛り上がった。
予定より長くなった、貸間旅館での朝風呂の一時。 いやあ、なんだかんだ言っても、やっぱりなぜか話しかけられるんだなあ。 不思議である。
***
朝食も、もちろん地獄蒸し。
 
妻が朝風呂に行っている間に、私が準備。 いつも妻にはお世話になっているからなあ。
今朝は、昨日の残りご飯に水を足し、野菜と肉を入れて雑炊にした。 最後に溶き玉子を回し掛けて完成。
少しリッチでボリュームたっぷりの朝食。 『ごちそうさまでした!』
***
帰り道も、寄り道三昧。
下関まで下道を走る途中、妻が『宇津っていったら、宇津神社がある所じゃない』と言い出した。
『これまでテレビで何度も出ていた。 有名な神社よ』とのこと。 『じゃあ、せっかくだから寄ってみよう』
 
ここは、全国にある八幡様の元締めなのだそうだ。 おどろくほど広い敷地に、新緑の緑と、朱の建物が映える。
***
ここからは、お昼ご飯を食べるお店を探しながらのドライブ。 直感と嗅覚だけがたよりである。
あるお店の前を通ったとき、看板は道路沿いに一つだけだが、店構えは上品で、昼の1時過ぎだというのに、多くのクルマが停まっていた。
『あの店、なんか良い感じだね』 『うん。 ちょっとUターンしてみようか』
 
お店に入り、ラーメンを注文。 出てきたラーメンのスープをレンゲで一口すする。 『おー、これは美味い』
麺をつるつる、スープをゴクリ。 いやあ、これは本当においしいな。

今回の旅の〆となった、九州ラーメン。 東の横綱が、『朱華園/太華園』のラーメンなら、西の横綱は、ここのラーメンである!
***
様々な人と出会い、高千穂の景色を堪能し、心にスッと入ってくる角川春樹氏の言葉と出合いった。
そして、おいしい料理を楽しめて、かつ同じ匂いのするご主人が居られる宿にお世話になり、翌日は正反対の世界である、鉄輪温泉の貸間旅館での地獄蒸し料理を、胃と心で堪能した。

妻が長年行きたいと行っていた高千穂であるが、様々な出合いに恵まれたことで、私もこれまで経験した事がなかったくらい、『あるくみるきく』を実行することができた。
『この旅は、本当に楽しかったなあ。 やっぱり、偶然の出合いが楽しいね』 妻と二人での『あるくみるきく_九州の旅』

いやあ、これは本当に、最高の週末であった。
***
ちなみに、復路のアテンザワゴンの燃費。 満タン法で、14.0km/L! とうとう、14km/Lの大台を達成した。
10.15mode燃費を大幅越えである。 いやあ、これは凄いなあ。

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瀬戸内シーカヤック日記: 高千穂峡、鉄輪温泉巡り(2)_生涯不良!

2009年04月14日 | 旅するロードスター/アテンザ
予定外のルートを走り、偶然訪れた通潤橋で出会った地元のおばちゃんとの『あるくみるきく』旅を堪能した後は、本来の目的地である、『高千穂峡』へ。
 
***
最高のドライブ日和となった快晴の下、妻が長年行きたいと言っていた『高千穂峡』でボートを漕ぎ、景色を堪能。
 
『いやあ、来て良かったなあ!』
***
その後は、『天岩戸神社』、『天野安河原』といった高千穂の観光地を巡り、夕方4時過ぎに、お世話になる宿に到着。
荷物を置き、手続きを済ませ、『国見ケ丘』へドライブ。
 
静かな夕暮れ。 目の前には抜けの良い景色が広がり、気持ちのよい風が吹き抜け、なかなかよい場所である。

丘を降り、ガソリンスタンドへ。 まだ燃料系の針は半分位を指しているが、燃費を確認する。 計算すると、12.6km/L。 『うん、これはなかなか良いなあ』
熊本でICを降りてからは山道の登りが多かったが、今回は高速走行が大半であった。 モード燃費は越えたが、直感的には遠出ではまだまだ伸びる予感。
***
宿での夕食。
前菜から始まり、フォアグラ、野菜のスープ、川鱒のスモーク。 ビールをゴクリ。
 
地元の柑橘類を使ったシャーベット。 『これはおいしいね』
 
高千穂牛のロースト。 『うん、うん。 これは、これは』 もう、無言で食べるだけ。 『うーん、美味いなあ』
デザートは、クリーム・ド・ブリュレ。 いやはや、もう何も言うことは無い。

地元の食材にこだわった、数々のおいしい料理。 『ごちそうさまでした。 最高においしかったです!』
***
夕食後は、地元の神社で毎晩行われるという『夜神楽』へ、宿のクルマで送っていただく事になる。
ここの宿では、宿泊者全員が見学に行くと言う事で、10人を越えるお客さんがマイクロバスに乗り込んだ。

私たち夫婦は、早速着替えてマイクロバスへ。 一番乗りだったので、バスの一番後ろの座席に座って他の人を待つ。
すると、宿のご主人が、『あのう、お仕事は何ですか?』と聞いて来られた。 私は笑いながら、『極々、普通のサラリーマンですよ』と答える。 妻は横で笑いながら、『自衛隊じゃないんです』

『なんか、怪しい職業に見えましたか? よく、自衛隊とか、漁師さんに間違われるんですよねえ』と返すと、『いやあ、なんかキリッとして見えたもんですから』 そこから会話が弾む。

『実は、瀬戸内でシーカヤックをやってましてね。 土日はカヤックにテントを積み、家族を放って、瀬戸内の島々を巡ってるんですよ』 『私も昔は、サーフィンやウインドサーフィンをやってましてね、海が大好きなんです』
『今は、ボードです。 スノーボード』 『ええ、クルマにボードのキャリアが付いてましたね。 さっきも通潤橋の所で、このあたりは雪が多いって聞いてきました』

その後も、他のお客さんが大勢居るのに、宿のご主人は私に話しかけられる。
瀬戸内でのシーカヤックの話。 宮崎の海の話などなど。 ここのご主人、なんだか同じ匂いがするなあ!
それにしても、何で俺なんだろう?
***
その後、夜神楽を見学して宿に戻った。
 
***
翌朝。 これまたおいしい朝食を頂き、食後のコーヒーを飲んでいると、一枚の色紙が目に入ってきた。

『生涯不良、春樹』と書かれている。

宿のご主人に、『あの色紙、好いですね。 生涯不良。 私の中に、スッと入ってきましたよ』 『良いでしょう!』
『あの、もしかして、角川春樹さんとはお知り合いなんですか?』 『ええ、もうずいぶん長いんですよ』
昨日の夕食の時の四方山話から、なんとなくそんな示唆はあったのだが、やはりそうだったようである。
***
ご主人が、焼酎の瓶と、あるパンフレットを持って来られた。
『これ。 生涯不良っていう焼酎を作ったんですよ』 瓶の蓋を取り、香りを嗅ぐと、洋酒のような芳香が漂ってきた。
パンフレットには、角川春樹氏から寄せられた文章が載っている。

*** 以下、引用 ***

不良とは、何ものにも束縛されない自由な精神であり、生き方である。
社会という檻の中にあっても、その精神は枠の外にある。
(中略)
しかし、老子も、孔子も『遊び』を人生至上の境地とした。 古代中国の大きな思想である。
人間は、この地球に遊びに来ただけだ、というのが、私の究極の答えである。
人間は修行をする為に生まれてきた、という宗教の見地は嘘である。 人生は楽しむためにある。
(中略)
その遊びという思想を貫く生き方が不良という言葉なのだ。 あるときは、社会や家族という制約と対立することがある。
それでも生涯を不良で通すには相当な覚悟がいる。
不良というのは、当然、良でないということ。 しかし、優であり、秀でもある。

生涯不良の私が、人生を楽しむために一本の焼酎を創り出した。
私が生涯、この一本を飲みたいがためである。
名付けて『生涯不良』。 文句あるか。

角川春樹

*** 引用終わり ***

コーヒーを飲んだテーブルでこの文章に浸り、感動を覚えた。 でも、残念ながら他のお客さんで、この色紙に気が付いた人は居なかったようである。
うんうん、まさにこの言葉! 角川春樹さんはスゴいなあ。 笑いながら妻にもこのパンフレットを手渡し、『読んでごらんよ』

私はご主人に、『まさにこの通りですね。 私が思っている事に、ピッタリはまりますよ。 でも実際には、こうゆう風に生きて行くのは難しいんですよねえ』 するとご主人も、『そうそう、これがなかなか難しいんですよ』
***
『今日は、どこへ行かれますか?』 『はい、鉄輪温泉まで。 阿蘇経由で行くか、海沿いに行くか、考えているんです』
『それは、海沿いが良いと思いますよ! あの辺りは景色も好いし、魚もおいしい。 絶対、お客さんにピッタリです!』

これでルートは決まった。 ガイドブックなんか要らない。 風の吹くまま、気の向くまま、そして出会った人に導かれて旅を楽しむのだ。
***
『ありがとうございました。 料理もおいしかったし、なによりいろいろお話しできて楽しかったですよ』とお礼を述べると、『お気を付けて。 またぜひ、どこかでお会いしましょう!』とご主人。
『ええ、またここに遊びに来ますよ!』

帰りには、宿おすすめのお土産屋さんに立ち寄り、『生涯不良』を購入。

通潤橋での予定外の『あるくみるきく』の旅に続き、お世話になった宿では、角川春樹氏の『生涯不良』という言葉に出会うことができた。
この旅はスタートから、偶然の様に見えて実は必然の様に感じられる、なんとも不思議な出合いに恵まれている。
さて、明日はどんな一日が待っているのだろうか?

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瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_高千穂峡、鉄輪温泉巡り、2泊3日ドライブ(1)

2009年04月13日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年4月11日(土) 朝、3時起床。 4時前には、アテンザワゴンで家を出発。 この週末は、妻と二人、2泊3日で九州の宮崎と大分を巡るドライブ旅行。

ずっと以前から、妻がぜひ一度訪ねてみたいと言っていた場所の一つが、宮崎県の『高千穂峡』 連れて行ってやりたいのは山々である。 だがこれまで、『宮崎は遠いし、高速代も高いからなあ』と言っていたのだが、土日は高速料金が1000円になると聞き、クルマも買い替えた事だし、『じゃあ、念願の高千穂へ行ってみるか』ということになった。

せっかく遠くに行くんだから、2泊3日にしよう! 高千穂に泊まって、翌日は別府の鉄輪温泉に。
鉄輪温泉の貸間旅館、いいぞお。 一度、連れて行ってやりたかったんだ』
***
高速道路をひた走り、関門海峡を越えて九州に。 
計画を立てて、一週間前に宿を予約。 『せっかく行くんだから、晴れると好いなあ。 まあ、晴れるか雨が降るかは、日頃の行いと言う事で!』と言っていたのだが、今日は快晴で、絶好のドライブ日和。 良かったなあ。
***
予定では、熊本ICで降りて阿蘇経由で高千穂峡へ行く予定だったのだが、熊本IC近くになってもナビが降りるように案内しない。
このナビのルート探索では、御船ICで降りる案内になっているようだ。 まあ、せっかくだからナビに従ってみるか、ということにして、御船ICで降りて山道を登って行く。

途中、案内の看板に『通潤橋』という名前が出てきた。 『通潤橋って、聞いた事あるよね』 『あの、橋から水が出るやつじゃないか』 『せっかくだから、寄り道してみようよ』
***
通潤橋の駐車場にクルマを停めた。 『いやあ、これは好い景色だなあ!』
 
橋の方に歩いてみる。 抜けるような青空の下、木々の新緑と、残った桜の淡く暖かい色、音を立てて流れる水路の水の純白、そして橋のコントラストが何とも美しい。 でも、水は出ていない。 残念!
 
駐車場に戻り、看板を見ると、土日にはお昼12時に放水すると書いてある。 『そうか、いつも水が出ている訳じゃないんだ』 お店の人に聞くと、やはりお昼に水を出すとの事。 時計を見ると、10時50分。 まだ1時間以上ある。
『どうする? 待ってみる?』 『せっかくだから、待ってみようよ』
***
待つ間、傍にある古民家を移築したと思われる資料館を見学する事に。 土間を見学した後、靴を脱いで部屋の中へ。
見て回っていると、管理をしておられる方が居られた。

『こんにちは』と挨拶すると、『ゆっくり見て行ってくださいね』と返ってきた。
『今日は、昼から放水があるんですよね』 『ええ、そのはずよ』
***
『さっき、橋の上を歩いて見ましたけど、よくあの時代にあんな立派な橋が造れましたねえ』と言うと、机から一冊の本を持って来られた。 見ると、小学校の社会の教科書である。
その教科書を開きながら、『あれはねえ、水が少なくて米が作れなかったこっちの地区に、水をなんとか送りたいというて、作ったもんなんよ』
『あそこに作る前に、何度か別の場所で試しに作ってみたそう。 その時には失敗もあって、水を流したらその圧力で壊れたこともあるんだと。 いろいろ工夫して、ようやく2年弱かけてあそこに作った』 『橋を造る間も、集落から立ちのぼる煙を見て、ああ、また今日も米が食べられなかったのか。 また稗だったか。 と思ったそうな』
『ようやく完成して、初めて水を流す時は、自分の財産を全部投げ出した事だし、もし失敗したら自害する覚悟で橋の上に白装束で懐に刀を差して座ったそうな』 『水が上手く流れた時の気持ちは、どんなにうれしかった事か。 想像するだけだけど、本当にうれしかったろうねえ』 『はい、想うだけでジーンと来ますねえ!』
***
『ここは、景色も好いし、今日は暖かくて好いですねえ』 『でもねえ、冬になると雪が積もるのよ。 ここ2年くらいは暖冬であまり積もらんけど、それまでは多い時は70センチくらい積もりよったからねえ』

『ここはね、茅葺き屋根やろ。 屋根は隙間だらけやから、天井からヘビやムカデが振ってくる』 『えー、ヘビ! 大丈夫なんですか?』 『ヘビ言うてもねえ、マムシじゃなくてアオダイショウじゃから』
『前はねえ、お客さんが見学しょおる間に、ポトっと首の所に落ちてきた事があった』 『そりゃあ、お客さんは驚いたでしょう!』
『そうよねえ。 私しゃあ、春にはこんなに小さかったのが、秋になるとこんなに長くなって。 おお、大きゅうなったねえ言うて、ゆうちゃるんよ』
 
『ところで、どこから来られた?』 『広島の呉です』 『え、そうなの! 私はここの生まれじゃけど、結婚してから呉に住んどったんよ』
そこから、更に話が盛り上がった。

『ここの茅葺き屋根は、葺き替えが大変だったでしょうね』 『竹はねえ、春の竹は駄目なんよ。 また、油抜きをせんといけんし』 『油抜きってなんですか?』 『火でね、炙るんよ。 そして油を抜く』

『それにしても、なんでそんなに茅葺き屋根に詳しいんですか?』 『それはねえ、子供の頃に囲炉裏の傍でおじいちゃん、おばあちゃんに聞かせてもらった事じゃから』

聞いてみると、この方が子供の頃には、囲炉裏を家族で囲み、夕食を食べていたそうだ。
『ここが、一番偉い人が座る所』 『おじいちゃんですね!』 『子供はこっち。 水なんかを汲む時に一番近い所に子供が座る。 そして、ご飯を食べながら、いろいろな事を教えてもらったんよ』 『今じゃあ、年寄りは邪魔者扱いじゃけど、昔はいろいろな知恵を伝えてもろうたもの』 『だから、茅葺き屋根の事や、正月の二日の仕事始めの事なんか、いろいろ教えてもらったものよね』 『やっぱり、昔の家族は良かったんですねえ』
***
昔の楽しかった運動会の事、茅葺き屋根の手入れの事、通潤橋の橋の事。 そして、映画界で活躍されているという、その方の息子さんの事。 『良い息子さんですね。 親孝行や。 スゴい』 『まあね、うちはいろいろ苦労させとるからねえ』 『うん、やっぱり可愛い子には苦労させんといかんですねえ!』

その後も、茅葺き屋根の手入れの方法や、昔の楽しかった運動会の事、趣味だと言うカラオケの事などなど、楽しい話に花が咲く。 『この茅はねえ。 煙で燻さんといけんのんよ。 でも、燻しよったら煙がでるけえ、火事と間違われるじゃろ。 じゃけえ、事前に消防署に連絡しとくんよ』
『運動会の時はねえ、ここにあるようなおおけな入れ物に弁当を作って持って行きよったもんじゃ。 子供の頃は、運動会の弁当が楽しみでねえ』

『昔はねえ、運動会で一等賞とかになったら鉛筆やらノートやら貰いよった』 『今は、そういうのはなくなりましたねえ』 『でもねえ、昔の方が良かったと思うよ。 勉強はでけんでも、運動会じゃあ一番になる子も居るし。 それぞれ得意なのがある方がええよねえ』

話は続く。 最近の若い人の事や、かつては城下町だったと言う栄えていた頃の地元の町のことなどなど、様々な話を聞かせていただいた。
***
あっと言う間の1時間。 放水を待つまでの1時間が、とても楽しい一時となった。
『ありがとうございました。 じゃあ、橋の方に行ってみます』 『ゆっくりと見ていきなさい。 また、どっかで遭えるとええねえ』 『はい、またぜひ、呉でお遭いできると好いですねえ』
 
『あるくみるきく』 予定していたルートではなく、偶然にカーナビの推奨するルートを通った事で、通潤橋に立ち寄る事になり、最高の景色に加えて、地元のおばちゃんから、様々な話を聞かせていただくことができた。

やはり旅は、ガイドブックにない予定外の寄り道や出合いが楽しいのだ。 本当に、様々な出逢いに恵まれているなあ。
最高の旅のスタート!
***
『じゃあ、高千穂に行こうか!』

妻が、長い間訪れたいと言っていた『高千穂峡』
 
ようやく、ここに来ることができた! 妻も喜んでくれているようだ。 そんな妻を見て、私も感慨無量である。
でも、 旅はまだ、 始まったばかり。

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瀬戸内シーカヤック日記: 曲がりくねったその先に。。。

2009年04月09日 | Weblog
昨日の夜。 夕食を終え、ふと部屋の片隅を見ると、妻が毎週活けている花が新しく変わっていた。

『ふうん、花をいけかえたんだ。 今回のは、なんだか曲がりくねって、俺の人生みたいだなあ』
すると傍に居た次男が、『曲がりくねったその先に。。。花が咲く』と返す。 巧いなあ!

妻は笑い、私は苦笑い。

風来坊のように海を彷徨う、曲がりくねった人生。 いつか、花が咲く日が来るのだろうか。

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