2014年4月26日(土) 今日から連休。 幸いな事に土日はそこそこ天気が良さそうな予報。
いよいよ、待ちに待った尺取り虫方式での瀬戸内横断旅再開の時がきた!
十数年前、フェザークラフトのK-1を使い、呉を基点に東は兵庫県の家島まで、西は山口県の関門海峡/下関までを尺取り虫方式の旅でつないだことがある。 その後は、下関から日本海を北上する『北前船をたどる旅編』として島根半島まで漕ぎ進んだ。
それから十数年。 最近では尺取り虫方式での旅をすることもなくなり、寂しい思いをしていたのだが、昨年11月に50歳を迎えたのをきっかけに、再び瀬戸内横断の旅にチャレンジする事に決めた。
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よく人から聞くのは、『若い頃はオープンカーに乗っとったんよ』 『昔は○○をようやりよったんじゃがのう』
俺は、過去形で語るのは嫌いである。 自分が関心を持った事には、可能な限り、常に現在進行形でチャレンジし続けていきたいと思っている。
それに、俺はソロツーリングが好きだ。
誰にも気兼ねする事なく、気疲れする調整や妥協も不要で、人に頼らず全ての判断と行動に責任を持つソロツーリングの自由さと潔さを、心から愛しているのである。
という訳で、バタフライカヤックスのクルーソー460_旅するシーカヤックスペシャルを手に入れ、尺取り虫方式での瀬戸内横断旅を再開した50の春。
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朝食を食べ、着替えると、『じゃあ行ってくるよ。 今日は、竹原方面に行く事にした』 『はい、気をつけて』
国道まで出てタクシーを呼ぶ。
到着したタクシーの運転手さんに、『これ、積めますか?』 『トランクは狭いからリアシートに積んで。 あんたは前に乗ったらええよ』
『はい』 『ところでこりゃあ何ねえ?』
『カヤックです』 すると、『火薬?』
俺は苦笑いしながら(テロリストか!)『まさか! カヌーですよ。 カ ヤ ッ ク。 折りたたみ式なんです』
十数年前に瀬戸内横断旅を開始した地元の浜に到着。
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このカヤックの組み立ても3回目なので、慣れたものである。 そして簡単。
フォールディングカヤックにとって組み立てが簡単な事はとても大切だと思う。 なにしろ、出発前に疲れてしまう事がないのだ。
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無事に組み立てを終了し、6時40分に漕ぎだした。
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海は穏やか、暑くも寒くもなく、最高のツーリング日和である。
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しばらく漕いで行くと、安芸灘大橋が見えてきた。
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この辺りから、東風が少し強まる。 安芸灘大橋の所を風が抜けてきているようだ。
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それでも潮にのり、快調に漕ぎ進む。
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今日は潮も弱い追い潮で、今回の最大の難関である”女猫の瀬戸”は無事クリア。
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前回の瀬戸内横断旅のときの女猫の瀬戸は向かい潮で、十数分間景色が変わらない中を漕ぎ続けた苦い経験がある。
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ここを抜ければ、今日は安心。 後は、竹原を目指すだけ。
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漕ぎだしてから2時間弱。
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島の小さな浜にカヤックを引き揚げ、しばし休憩。
天気も良く、快適なパドリング。
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瀬戸内らしい穏やかな海が続く。
グリーンピア安浦の沖にある島で、再び休憩。
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ここは、なかなか珍しい眺めである。
狭い通路があれば抜けてみる。
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きれいな景色があれば、カメラを取り出しパチリ。
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大芝島に到着。
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お腹が空いたので、お昼ご飯休憩である。
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自動販売機でコーラを買い、持参したパンをかじる。
普段、コーラを飲む事はないのだが、漕いで疲れたときにはコーラが欲しくなるのだ。
食事を終え、周りを見渡すと、すぐ裏に柑橘類の直売所が。 疲れたときには柑橘類も欲しくなるので、ちょっと覗いてみる事に。
『こんにちは』 すると、『釣れますか?』 『あ、今日は釣りじゃないです。 カヌーを漕いで呉から来たんですよ』
『え、カヌー! どんなん? 見たい』という訳でおばちゃんと海側に行き、『あれで漕いで来たんです。 疲れたから、ちょっとお昼ご飯休憩してるんですよ』
『今の時期はもうミカンはないですよね』
『これからの時期は、皮が厚い柑橘類が増えてくるんよ。 あの舟じゃあ、えっと乗せられんけえ、買わんでもええよ。 ちょうど、お客さんの味見用に切ったのがあるけん食べんさい。 手もパンパンじゃろう。 しっかり休んでいきんさい』
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『ありがとうございます』 『あ、コーヒーも入れたげるけん、飲んで行きんさい』 『いやあ、どうもすみません』
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という訳で、やさしいおばちゃんに柑橘類を試食させてもらい、海を眺めながらコーヒーもいただいた。
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コーヒーを飲みながら、柑橘類の栽培のお話や、選別機の事、おいしい食べ方などなど、お話を伺う。
『へえ、そうなんですか。 知らなかったなあ』
最後には、『これ、持って行きんさい。 途中で食べたらええが』 『え、いいんですか! ありがとうございます。 遠慮なくいただきます』
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一人旅の俺にはこんな親切が身にしみる。 嬉しいなあ!
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大芝島を出ると、再び竹原へ。
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この辺りから疲れが出始め、休憩を取る間隔が短くなってくる。
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竹原港を超えると、今日のキャンプ地。
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『ああ、やっと着いた』
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カヤックを引き揚げ、荷物を運び、テントを張って着替える。
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『久し振りの長距離漕ぎ。 疲れたなあ』
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今日のキャンプ地はコンビニが近いので、晩ご飯の買い出しに行く。
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芸予諸島の海を眺めながらエビスビールをグビリ。 『あー、美味い! 最高や!!!』
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地元のカップ酒にはこんな言葉が。 『嬉しいことに、山があり、海がある』 まさにその通り。
晩ご飯を食べ、お腹も心も落ち着いたので、ちょっと町を散策に。
フェリー乗り場まで歩いて行き、そこからバスで町へ。
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今日のお店は、ネットで見つけた居酒屋さん。 『伏見』
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日本酒の品揃えが有名との事。
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カウンターが人気らしく、すでに一杯だったのでテーブル席へ。
しばらくすると、カウンターが空いたとの事で移動。
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『今日はどちらから?』 『はい、呉からです。 シーカヤックを漕いできて、浜にテントを張って来たんですよ』 『へえ、カヌーでねえ』
気さくなご主人とおいしいお酒。 人気な訳だ!
店には、藤竜也の写真や手紙が。 『今度、うちのやつと一緒に来ますよ。 妻が藤竜也のファンなんです』
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朝起きると、パンで朝食を済ませ、荷物をパッキングして出発準備。
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今日は9時頃が満潮なので、東に向かうには潮の良い時間帯は朝だけである。
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6時半頃出発。
昨日の疲れが残る体をだましだまし漕ぎ進む。
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今日は潮が分かるタイミングが悪いので、あまり距離を漕ぐつもりはない。 ポイントは、次回再スタートのアクセスが楽なように、JRの駅に近い上陸地点を探す事。
漕ぎ進んでいると、忠海の港の近くで良い場所を発見。
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今日はほとんど漕いでいないが、急ぐ旅でもなし、これにて第一回目は終了と決めた。
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クルーソー460を片付けていると、様々な人に話しかけられる。
『どこから来たんですか』と、ウオーキングをしている人。
『呉から漕いできました。 昨日は竹原まで行ってキャンプしたんです。 今日は朝から漕いでここまで。 疲れたから、ここで畳んで帰ろうと思っています』 『いやあ、ええ趣味ですねえ』
『こりゃあなんかいの?』とは、地元の漁師さん達。
『すみません、大荷物を広げてしもうて。 これはカヌーなんです』
『折り畳めるんか?』 『ええ、じゃけえ、呉から漕いできてもこうやって畳んでJRで帰れるんですよ』
『ほじゃが、こりゃあ手間がかかるのお』 『そうなんです。 じゃけえ、普段はFRPのカヤックを使うとるんですが、こんな旅はこれじゃないとできませんからねえ。 さすがにFRPのカヤック背負ってJRにゃ乗れんですけん』
すると笑いながら『そりゃそうじゃ』
カヤックを乾かし、シュラフを干し、荷物をパッキングして駅へ。
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50歳になって再開した、久し振りの尺取り虫ツーリング第一回目。
様々な人と話をする事ができ、大芝島の直売所で受けた親切も身にしみた。
全ての荷物を自分で運び、どのルートを通るのか、どこでキャンプするのか、どこでゴールするのか全て自分で自由に決める事ができる醍醐味。
これこそが、忘れかけていた『旅するシーカヤック』の神髄である。
急ぐ旅でもなし、様々な場所に引っかかりながら、自然を楽しみ、居酒屋を開拓し、のんびりまったり瀬戸内を横断していこうと思う。
そう、『嬉しいことに、山があり、海がある』