あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: ロードスターで紅葉狩りドライブ

2009年10月25日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年10月25日(日) 今日は、妻と二人で紅葉狩りへ。 向かうは、久し振りの訪問となる『帝釈峡』
ドライブには時々出かけるものの、なんとなく行く場所が限られており、たまには普段あまり行かない場所に行きたいね、ということで、地図を開いて決めたのが帝釈峡。

特に何があると言う訳ではないのだが、紅葉の季節。 少し早いが、秋の中国山地を楽しむとしよう。 曇り空だが、オープンドライブにはちょうど良い気候。

R375を北上して行くと、徐々に空気がひんやりとして来るのがダイレクトに感じられる。 道路脇の温度計を見ても、13℃、12℃、9℃と下がっている。
気温、匂い、そして雰囲気まで、ドライバーとパッセンジャーにダイレクトに伝わってくるのである。 これがオープンカーの醍醐味の一つ。
***

下道をのんびりと走り、約3時間ちょっとで帝釈峡に到着。 学生時代のバイクツーリングなどを含めると、帝釈峡には何度か訪れているが、妻とこの帝釈峡に来たのは、長男が妻のお腹の中に居た時。 そう、もう20年も前である。 懐かしいなあ!

その頃は経済的な余裕もなく、神龍湖を巡る遊覧船に乗る事などとうてい選択肢にも入らなかったが、今ではその程度の余裕はできた。 『今日は船に乗ろうや。 昔はほんと、どこ行っても貧乏ドライブ、貧乏旅行じゃったけどなあ。 今想やあ、あの頃も懐かしいよのう』
 
朝10時出発の遊覧船で、湖を周遊。 まだ紅葉は始まったばかりだが、ゆったりと静かな湖面を進む船から眺める景色はなかなか良いものであった。
 
時間にして40分ほどの遊覧を堪能し、遊歩道の散策へ。
***
前に来たのは20年も前なのに、遊歩道から眺める景色を見ると、当時の思い出が浮かんで来る。 『ああ、この景色じゃったよなあ。 覚えとるわ』 『ここらで、石が落ちてきてビックリしたよなあ』
 
始まったばかりの紅葉を楽しみつつ、1時間弱のお散歩。 静かで空気も澄み、なかなか良い散歩道である。
 
お昼ご飯は近くの喫茶店で。 ハーブを売りにしたそのお店で、食後はハーブティーをお願いした。
静かな観光地で、秋の景色を眺めながら、ゆっくりと楽しむお昼の一時。
***
 
帰り道も、普段走る事のない一般道で、気の向くままに寄り道しながら家に戻ってきた。

オープンドライブに最適な季節。 20年振りに訪れた帝釈峡。 少し早かったが、紅葉狩りを楽しんだ秋の一日。
なかなか充実した一日であった。

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瀬戸内シーカヤック日記: たべるのむこぐ_バースデイキャンプツーリング(2)

2009年10月20日 | 旅するシーカヤック
まずは前日の帰路、南西風_追い風追い波漕ぎの写真を!
 
ブログに書いたように、シングル艇の私は写真を撮る余裕はなかったのだが、タンデム艇だったGoさん&レ隊長さん艇で撮影した写真が送られてきたので、紹介してみました。

この時は、まだ岬に向かって南下している時で、大きな向い波の状態。 岬を回ると、今度はこんな大きさの追い波が、斜め後ろから次から次へと迫って来る。
こんなドシャバシャの状況の中を1時間弱のパドリング。 想定内ではあるが、それなりに厳しい表情を見せた瀬戸内で、久し振りに引き締まった気分での漕ぎを堪能しました。

この強い風でこの程度の波で済むのは瀬戸内ならでは。 横浜単身赴任時代に経験した三浦や外房、西伊豆なら。。。 想像するだけで出艇を見合わせるような大波&うねりになるのは間違いない!
***
キャンプの翌朝。 今日はゆっくりと漕ぐ予定なので、いつもよりかなり遅くまで惰眠をむさぼり、青空の中を起き出す。
テントの外は、今日も青空。

今朝も、焚き火台を使ってGoさんが料理の腕を振るう。 昨日準備しておいた『皮付き蒸し豚』も使って、朝からボリュームたっぷりのサンドイッチ。 卵があるということで、蒸しジャガイモも投入してのオムレツ風に。
これにスープもついて、高級ホテル顔負けの、浜の朝食である。
 
ごちそうさまでした! 漕がない予定なら、このままビールを飲んでのんびりしたいくらいの、豪華な朝食だった。
***
食後のコーヒーを楽しむと食器を片付け、出艇準備。
天気予報の情報を共有化し、海図を出して今日の予定ルートを確認。 沖は西寄りの風がビュービュー吹いているが、風走距離の短いこの湾内なら、それほど荒れる事はない。

波は低いが強い向かい風の中を、向かい風の中のリハーサルとして漕ぎ進む。 湾の奥に到着する頃には風も弱くなり、湾内をのんびりツーリング。
 
この辺りのエリア情報を説明しながらゆっくりとツーリングを楽しみ、小さな島に上陸してしばし休憩。
 
休憩後は、再び漕ぎ出し、追い風に乗って順調に出発した浜に戻ってきた。 今日は、約2時間半のツーリング。
***
浜に戻るとカヤックを片付け、再び『流れ板のGoさん』の独壇場。 具沢山のおいしいパスタで、みな大満足。
 
***
Goさんの誘いで企画した、久し振りのグループツーリング。 気の合う仲間と一緒に『たべるこぐのむ』を堪能した充実の二日間。
いやあ、本当に楽しかった。 みなさん、本当にありがとうございました。 またぜひ一緒に漕ぎましょう!

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瀬戸内シーカヤック日記: たべるのむこぐ_バースデイキャンプツーリング(1)

2009年10月18日 | 旅するシーカヤック
2009年10月17日(土) この週末は、カヤック仲間であり、人生の師匠でもあるGoさんからのお誘いで、地元の海でのキャンプツーリングを企画した。 今回のメンバーは、Goさん、レ隊長さん、ミサちゃん、クマちゃん、そして私の計5人。

ニヤックとポイント5の2艇を積んだアテンザワゴンで集合場所に行き、挨拶を交わす。 ミサちゃんの顔に見覚えが。。。
『前にどっかで会いましたっけ?』 『ホクレアが広島に来た時に。 その時にカヤックの話も聞きましたよ』 『そうだっけ。 それで見覚えがあるんだ』 いやあ、やっぱりカヤックの世界は狭い。
***
出艇場所に移動。 今回は、ミサちゃん&クマちゃんが、速いスピードや荒れた状況でどれくらい漕げるものか試してみたいとのリクエストを聞いていた。

準備が終わると集まり、最新の天気予報の情報を伝え、海図を見ながらルートを説明。
『昼から風が出る予報だけど、このルートなら帰路は追い風追い波。 まあ、タンデム艇だし大丈夫。 たっぷり楽しみましょう!』 今日は午後から6m/s程度の南西風が吹く予想だったので、のんびりまったりツーリングなら選ばないルートをあえて選択。

『さあ、行きますか!』
最高の晴天、まだ風もなく最高のツーリング日和。 でも、高速巡航を、というリクエストだったので、あえて約6km先にある岬までは、写真も撮らず、会話もせず、休憩無しで黙々と横断隊モードで漕ぎ進む。
時折後ろを振り返って確認するが、しっかりとついてきている。 リバーカヤッカーとシーカヤッカーの組み合わせで女性二人のタンデム艇、いやあ大したものだ。
 
予定していた岬のところまで、7~8km/hの巡航速度で休憩無しで約45分。 そこでようやくパドルを止めて、休憩。
『どう? 巡航速度はあんな感じ。 でも凄いねえ、ちゃんとついて来てたじゃない』 『せっかくやから、ここからはゆっくりとツーリングを楽しもうや。 ここまで来たら景色もええやろ。 こっから先には、わしの”なんちゃってプライベートビーチ”がえっとあるんよ。 じゃあ、まずはあの島を回ってみようか』
 
グルリと島を回り、大きな浜に上陸して休憩。 『少し早いですけど、ここで昼休憩にしましょう』

Goさんご自慢の焚き火台をセットし、みんなで流木を集め、火を熾すとお昼ご飯の準備開始。 ここからは、”流れ板”のGoさんの独壇場である。
ダッチオーブンにハーブを入れて皮付き豚と野菜を蒸し、溶岩プレートでステーキ肉と豚肉を焼く。
 
ここで、Goさんが『実は今日、ワテの誕生日なんです』と、驚きのカミングアウト。 『えー、そうなんですか!』 『おめでとうございます!』 『じゃあ、夜は”さしみ屋”さんで、パーッとやりましょう!』

浜のテーブルには、レ隊長さんが買ってきていただいた、おいしいサバ寿司や赤飯なども並び、なんとも豪勢なお昼ご飯!
『いやあ、ビールが欲しいなるなあ』 『ほんと、ハーブの香りがいいですねえ』 『タマネギがあまーい』 『イモがおいしい』 『ほんとおいしいねえ。 お昼からこれなんて贅沢すぎる』
自分の誕生日を、自らの手料理でもてなすGoさんのダッチオーブン料理は大好評。
***
そうこうしている間に、南西の風が強くなり始めた。 この浜は風裏だが、沖を見るとどんどん白波が大きくなっている。 そろそろ引き揚げ時である。
私のお気に入りの撮影スポットの一つである、すぐ近くの浜に立ち寄り、記念撮影。
 
ここは、夏などは本当にコバルトブルーの海と白い砂のコントラストが美しく、沖縄の浜かと見まがうほど。 皆さんにも気に入っていただけたようだ。
***
再び漕ぎ出し、湾から出ると、そこはドッシャンバッシャンと波が踊り狂っている。 いやあ、これは彼女達にはちょうど良いリハーサルになるなあ。

斜め後ろから襲って来る追い波に翻弄されながら、とても写真を撮る余裕はなく、それでも会話を交わしてリラックスしながらしっかりと漕ぎ進む。
 
天気予報はバッチリ的中し、南西の追い風追い波の中を、無事漕ぎ戻った。
帰りには風こそ吹いたが、それは最初から織り込み済み。 天気も良く、最高においしいお昼ご飯を食べ、気の合う仲間達と漕いだ一日。 いやあ、楽しかったなあ! ほんま、ええ一日や。
***
キャンプ予定地に移動し、テントを張り、着替えて温泉へと向かう。
 
温泉で汗と潮を流してサッパリした後は、本日のメインイベントである『さしみ屋』さんへ。
***
ここさしみ屋さんは、前回のGoさん、レ隊長さんとのツーリングの夜に案内した、私のお気に入りのお店。 その時のさしみの美味さと、地元の方々との熱い交流が気に入っていただけたようで、今回もご案内することとなった。
 
まずはビールで乾杯! 『お誕生日、おめでとうございます!』
『いやあ、先に言うてもろうとったら、ケーキでも準備したんですが』 すると、クマちゃんが『ローソク、持ってきましたよ』 『えー、ロウソク? なんで持ってんの? キャンプの明かり用?』
すると、クマちゃんが出してきたのはバースデイケーキ用のロウソク! 『あり得へん。 なんでキャンプツーリングに誕生日用のロウソクを持ち歩いてんねん』 と、みんなで大爆笑。
『じゃあ、豆腐に立てて祝おうや』ということになり、『豆腐一丁、そのまま丸ごと持ってきてもらえますか』と注文すると、注文を受けた娘さんは怪訝な表情。 そりゃそうや、怪しい注文やもんなあ。
 
出てきた豆腐にロウソクを立て、火を点けて再度お祝い。 いやあ、最高の宴会や!

私以外は初めて食べたと言う、コリコリの『穴子の刺身』 プリップリの『ハマチの刺身』 新鮮な鯛、ヒラメ、ニシガイ。。。 茹で立てのイカゲソも、芥子酢味噌で食べると絶品である。
ローソクを立てた島豆腐も、甘口の刺身醤油や芥子酢味噌で食べると、これまたおいしい。 さらに、アラ炊き豆腐、鯛の身入りかき揚げ天婦羅。 もう、何も言うことは無い。
 
驚きのバースデイ豆腐でお祝いし、おいしい刺身と魚料理を堪能しつつ酒を酌み交わし、楽しい会話で盛り上がる。

悪性?良性?の熱くて濃い抱腹絶倒ウイルスが次から次へと伝染し、波長の合うメンバーで腹を抱えて笑い転げる。
いやあ、こんな充実した一日は久し振りや。 最高! 漕いでて良かった!

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瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_お米について考える@下関(2)

2009年10月13日 | 旅するロードスター/アテンザ
夕方6時。 まずはエルコヨーテ氏とビールで乾杯。
そうこうしているうちに、地元の方が徐々に集まりはじめた。 挨拶を交わし、酒を酌み交わしながらの楽しいお話。
焚き火を眺め、おいしい鹿肉の刺身をつまみながら、米作りや牛の種付けなどについて、興味深いお話を伺った。
 
楽しい宴。
***
翌朝。 朝から晴れてお米の勉強会には最高の日和。
 
地元下関からの参加者の方も来られ、庭に置かれたテーブルでお茶をいただきながら、エルコヨーテ氏からお米についての様々なお話を伺う。

早場米と遅場米の違い。 田圃の土による違い。
精米について。 玄米の研ぎ方、炊き方。 お米の等級分けの視点。
米袋の話。 一反で収穫できるお米の量。 などなど。

お米は毎日食べている主食であるが、実は何も知らないのだという事に改めて驚いた。
***
その後、お米作りをされている方が来られ、一緒に田圃を見て歩く。
 
歩きながら、米作りや昔の生活、鳥や鯉、亀のこと、子供時代の川での遊びのことなど、様々なお話を伺った。
その方は、かつて漁連に勤めておられたということでもあり、私が漁港や漁船に感心を持っているということから、工房に戻ってからは山口県の漁業談義に花が咲いた。 いやあ、面白い!
***
そうこうしているうちに、今年の新米が炊きあがり、漬け物、もろみ味噌をおかずに、卵かけご飯でいただいた。
『うーん、美味い!』
 
食後は、別の米作り農家の方から、籾すり機を見せていただき、お米作りのお話を伺った。
***
いやあ、本当にお米については何も知らないのだという事を再認識。 目から鱗の二日間であった。
地元の方との交流や勉強会など貴重な機会をいただき、またいろいろとお世話になり、ほんとうにありがとうございました!

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瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_お米について考える@下関(1)

2009年10月11日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年10月10日(土) この週末は、シーカヤック仲間であるエルコヨーテ氏からのうれしいお誘いで、お米についての勉強と新米の購入を兼ねて下関へ。
ここ数年、シーカヤック仲間が居る事や、気持ちの良い温泉があることなどから、年に何度も下関方面に通うようになった。 つい先日も、妻の誕生日のお祝いとして俵山温泉に一泊二日のドライブ旅行に行ったばかりである。

いくら高速1000円とはいえ、いつもと同じように、味気のない高速道路をただひたすら走って効率的に移動するだけでは面白くない。 集合時間は夕方6時。 せっかくだから、以前から気になっていたルートでゆったりまったり、ドライブ旅行を楽しむ事にしよう!
***
広島ICから高速に乗り、浜田自動車道を走って浜田へ。 今日は浜田から、益田、萩、長門経由で、豊田町に行くルート。

この辺りは、下関の綾羅木海岸から島根半島の日御碕まで尺取り虫方式で漕いだ『古代人ツアー』の、思い出深く懐かしい場所。
尺取り虫方式での瀬戸内横断を終え、目標を見失っていた時機に、当時私のブログを読んでくれていた友人の誘いでスタートした古代人ツアー。 美しくも、時折荒れて厳しい顔を見せる日本海を、その折々に偶然立ち寄り一夜のお世話になった漁港で様々な出合いに恵まれ、昔と今のお話を伺いながら漕ぎ進んだこの旅は、『あるくみるきく_旅するシーカヤック』の原点となる貴重な経験を積ませていただいた。

本当にありがたいことである。 そして、改めて車で走ってみると結構距離がある。 我ながら、こんな遠くまで何度も通い、そしてこの長い距離を漕いだものだ。
***
今日は、夕方までたっぷりと時間がある。 できるだけ海沿いの狭い道に立ち寄り、寄り道し、普段は通り過ぎる海岸線を探検。

狭い道を抜けると、そこには穏やかな湾があり、良い感じの漁港が。 そこは、須佐漁港。 車を停め、カメラを手に漁港を散策。
 
歩いていると、一人のおじいさんが居られた。 この方にはお話が聞けそうだ。

『あるくみるきく』の旅を続けていると、いろいろなお話が聞けそうな匂いがする人と、話し掛けても一言二言で終わってしまいそうな人が、なんとなく分かってくるものである。 宮本常一氏が、『話は、聞ける人からしか聞く事はできない』と書いておられたが、旅に出るとまさにそれを実感する。

『こんにちは。 あの、この船の前にある台みたいなのは何ですか?』 『おー、これか? これは、満潮の時に船に乗り込むための台や』

『えー、そうなんですか! 全部の船の前に置いてあるし、道具入れにしては構造が違うし、魚を入れる容器でもないし、不思議やなあって思うとったんです』 『潮が引いとる時はええが、満潮になったら舳先の位置が高うなるじゃろう。 そうなったら、特に年寄りには乗り込むんが大変なんよ。 じゃけえ、これを台にする』 『いやあ、私は漁港が好きでいろいろ回りよるんですが、こんな台を見たんは初めてです。 こりゃあ、面白いですねえ』

『このカゴに入っとる石は何ですか?』 『これか? これは敷網の重石に使うんよ』 『ほうですか! そりゃあちゃんと縛らんと糸が外れますねえ』 『そうよ。 じゃけえ、ええ形の石を選んどるんじゃ。 ええ石がある浜があって、そこに探しに行って、ええ形のを拾うてくるんじゃ』

『なるほど。 確かによう見たら、真ん中辺りに凹みがあるような石ばかりですね』 『その浜には、ええ石がえっとあるんよ』
 
『あんたは気づいとらんかもしれんが、あの竹を見てみんさい。 他の港じゃあ、錨を下ろしたりするが、ここじゃあ船の艢をあの竹に舫う』 『なるほど、確かにほかじゃあ見んですね』
『昔は松の木を使いよったが、今じゃあ大きい松がなくなって竹になった。 竹は傷むけえ、2年ごとに交換じゃ』

『向こうに、舳先にテントを張った船がありましたが』 『あれは、漁に出とる時、あのテントの下で網を修理したりするんよ』 『私の地元の豊島には、前にテントを張ったり屋根を付けて住めるようにしとる『家船』いうのがあるんですが、あれとは違うんですね』
 
『おお、広島の家船か! 知っとるよ。 昔はこの辺りにも来て、船で寝泊まりしながら漁をしよったなあ』 『え、そうなんですか! ここら辺りにも来とったんですね』
『広島の船言うたら、家船以外にも『茶碗』を売りに来る船もおったで。 毎年同じ時期に茶碗を船に積んでここに売りに来よったわい。 当時は木造船じゃったなあ』 『知りませんでした。 そんな船があったんですねえ』

『わしはもう80歳になるんじゃが、おそらくわしらがそんなのを覚えとる最後じゃろうなあ』 『80歳ですか! とてもそんなには見えません。 若いですよねえ』 『おお、みんなそう言うんじゃ。 若う見えるいうてなあ』
『いやあ、ほんまにありがとうございました。 ええ話を聞かせてもろうて』 『なあに、ええよ。 まあ、ゆっくり見学して行きんさい』 『はい!』

いやあ、今日もこの漁港を訪ねて良かった。 親切な方に偶然出会うことができ、今まで知らなかったお話を伺うことができた。 感謝!
『あるくみるきく_旅するシーカヤック』 旅を重ねるごとに、そして偶然の出合いを重ねるごとに、貴重な情報が集まり私の中に蓄積されていく。 うん、今回も良い旅になりそうだ。
***
その後も、海岸沿いの寄り道を楽しみながら日本海沿いのドライブをゆっくりと堪能。

有名な観光地ではなく、生活に密着した地味で小さな漁港の一つ一つが、私にとっては最高の場所。 人との出合い。 これぞ、私にとって何にも代え難い旅の醍醐味。
***
夕方、温泉で一日の疲れを癒し、エルコヨーテの工房へ。
 
今日は、地元の方も一緒になっての交流会! 楽しみだ。

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瀬戸内シーカヤック日記: 秋のお月見キャンプツーリング(2)

2009年10月04日 | 旅するシーカヤック
2009年10月4日(日) 朝、5時過ぎに目が覚めた。 外はまだ暗い。 シュラフに包まったままiPodのスイッチを入れ、目覚めの落語を聞く。

6時過ぎ、テントを這い出す。 外は寒く、長袖の上着を羽織る。 昼間は暑いし、夕方になるとまだ蚊が飛んではいるが、なんだかんだ言ってもやっぱりもう秋なんだなあ。 確実に季節は移り変わっているのである。

***
トランギアのストームクッカーにアルコール燃料を注ぎ、火を入れる。 お湯が沸いたらチャイをいれ、明るくなりつつある東の空を眺めつつ、チャイをすする。 温かい飲み物が胃に入ると、少しずつ体の芯から暖まって来る。
 
再びお湯を沸かし、うどんをつくる。 昨日の残りの野菜を入れ、体を暖めるため少し多めに一味唐辛子を投入。
日が昇る直前の空の感じが好もしい。 キャンプツーリングの朝、この時間帯が一番好きである。
 
***
簡単な朝食を終えると、天気予報をチェックし、顔を洗ってドリップコーヒーをいれる。
日が昇るとシュラフを干し、テントを乾かし、その間に道具を片付ける。 キャンプの朝のルーチンワーク。

空は快晴。 雲一つない、まさに日本晴れ。 最高のキャンプ日和である。

荷物を浜に運び、カヤックにパッキングして出発だ。 今日はせっかくだから、生野島を一周して帰ろうか。
まだ上げ潮で、逆潮の中を大崎上島の北岸との間の瀬戸を漕ぎ進む。 瀬戸内の軍艦島、東邦亜鉛の工場のある契島の周りは潮が早く複雑なエリア。 大潮の今日は、北東の風の影響もあり、いつもより潮目がザワついている。
波が高く、時折白波が横から押して来るが、キャンプ道具を積んでしっかりと沈んだニヤックはどっしりと安定しており、安心して漕ぎ進む事ができる。
 
荒れた海でのこの安心感、信頼感が、ニヤックを選んだ最大の理由。 大荒れのケラマツアーで、ニヤックのその実力は何度も確認済みだ。

北東の少し強い向かい風も吹き出したが、アークティックウインドで水をしっかりと確実にキャッチして、一漕ぎ一漕ぎ、グイグイと進んでいく。
出発してから約10km。 1時間半ほどで、出発した浜に無事戻ってきた。
***
秋のお月見キャンプツーリング。 天気にも恵まれ、ゆったりまったりとした時間の流れを堪能でき、最高の週末となった。
やっぱりシーカヤックの醍醐味はキャンプツーリングだなあ!

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瀬戸内シーカヤック日記: 秋のお月見キャンプツーリング(1)

2009年10月04日 | 旅するシーカヤック
2009年10月3日 今日は、中秋の名月。 ということで、もちろんテーマは『秋のお月見キャンプツーリング』

11時前、竹原の的場海水浴場から出艇。 晴れで、風もそよそよ程度。 波もなく、秋らしい絶好のツーリング日和りである。 穏やかな瀬戸内の海を、手に馴染んだ名パドル、アークティックウインドでゆったりと漕ぎ進む。
***
私にとってシーカヤックは、海を旅する道具であり、また、海からの視点で『あるくみるきく』を実践するための大切な道具でもある。

カヤックと出会ってから17年。 家族と川下りやシーカヤックツーリングを楽しんだ時代、毎年沖縄のケラマに通っていた時代、横浜単身赴任で三浦半島や伊豆、外房など日本のカヤックのメッカを経験した時代。
横浜から広島に戻り、フェザークラフトK-1で、瀬戸内海を『尺取り虫方式』で兵庫県の家島から山口県の関門海峡まで漕いだことで、瀬戸内の良さを再認識した。 更には友人の誘いがきっかけで、思いもかけず『あるくみるきく_旅するシーカヤック』の原点となった、下関から島根半島までつないだ『古代人ツアー』

第1次瀬戸内カヤック横断隊との衝撃の出会い。 豊島の家船に関する『あるくみるきく』 ホクレア号船長ナイノア氏との出合い。 シーカヤックで訪れた島々での様々な人との出合い。 島の子供たちとの楽しい夏のシーカヤック教室。 祝島、そして大崎上島の櫂伝馬との出会いと、新たな目標となった『旅する櫂伝馬プロジェクト』

カヤックに初めて乗ったのは、1992年にボーナスで中古のファルトボートを買った後(それまで乗った事もなかったのに、妻に了解を得て、ボーナスの残り10万円をはたいて購入)。
妻とまだ幼稚園だった長男を連れてショップに行き、購入したファルトを組み立て、ショップの近くの河口で漕ぎ方を教えてもらった。
初めてカヤックに乗り込み、水に浮かんだ時に、『これこれ、この感じや。 思うた通り!』と、イメージ通りの動きとなんとも言えない開放感、自由な感じがうれしくて興奮した事を今でもはっきりと覚えている。

シーカヤックに出会ったことで、私のライフスタイルや考え方は大きく変わった。 本当に運命的な出合いであったと感じている。
***
 
穏やかな海を漕ぎ進み、寄り道をしながら40分程で生野島に到着。 浜を眺めるが、誰も上陸していないようだ。 ホッと一安心。 沖縄のシーカヤックツアーでは常識だが、他のシーカヤックグループが上陸している浜に後から上がってキャンプすることは避けるのが暗黙の約束。

何度も往復して荷物を運び、片づいたらお昼ご飯。 お気に入りの東屋の下に陣取り、瀬戸内らしいお気に入りの景色を眺めながらビールをグビリと飲り、お弁当を食べる。 あー、最高やなあ!
 
***
ここ一ヶ月ほどは、休日出勤や妻との旅行、旅する櫂伝馬プロジェクト、宮本常一写真講座などなどで、シーカヤックツーリングにでていなかった。 合間を縫って日帰りツーリングに出かけるチャンスは何度かあったのだが、私の場合はキャンプツーリングを基本としているので、あえてシーカヤックを海に浮かべることはしなかった。

予定の入っていないこの週末は、幸運にも最高のツーリング日和りとなる予報! 盆連休以降多忙な日々が続いており、バランスを取るためにも、自然の中で、何も考えず、自分と向き合う独りきりの時間が必要なのだ。
 
この生野島は、もう約10年前になるが、フェザークラフトのK-1を使った尺取り虫方式での瀬戸内横断を始めた最初の2泊3日の旅の初日、地元呉の海水浴場から出発し、最初の夜に泊まった想い出の島。 初めてのソロキャンプツーリングで初めて泊まった島だから、それは特別な思いがある。
***
お気に入りのテラスでプライベートバーを店開きし、最高の景色の中、ビールを片手に本を開く静かで贅沢な時間。 今日のお供は、『海流のなかの島々(ヘミングウェイ)』

海辺で過ごす休暇のお供としては、ヘミングウェイはピタリとはまる。 『老人と海』に代表される彼の海に関する小説は、リアルな海での生活を知っており、海を、そして海に関わる人々を愛している人のみが書ける本物だ。
***
本を閉じると浜を散策し、カメラでお気に入りの景色を切り取る。 東屋に戻るとiPodで音楽を聴きながら、pomeraでメモをとる。
 
最新のiPodは、あの小さなボディできれいな動画が撮れるようになり、驚きのAppleワールドが確実に進化している。
また、つい昨日手に入れたpomeraは今日が初デビュー。 これまで使っていた旅先でのフィールドノートの替わりとして、これからどんな実力を発揮してくれるのか楽しみだ。
***
日が傾くと夕食の準備。 今日も簡単なソロツーリングメニュー。 鯖の味噌煮缶を使った一人鍋。 鯖の味噌煮缶を開けて、トランギアのストームクッカーに入れ、豆腐、白ネギ、春菊、しめじを投入。
 
もう一品は、『マルシンハンバーグ』 今朝立ち寄ったスーパーで見つけて、『おー、懐かしい!』と購入したもの。 ストームクッカーのフライパンで焼くと、これが、なんとも懐かしくておいしい味である。

今日はお月見ツーリング。 もちろん『月見だんご』も買ってきた。
***
食事を終え、ふと海をみると満月が!
 
月が昇るとともに雲と絡み合って様々な表情を見せてくれる。 月が海に金色の道を架ける。 素晴らしい夜景。
独り静かに酒を飲み、月を眺める。 これぞ、キャンプツーリングの醍醐味だ。
 
***
シーカヤックで島に渡っても、釣りをする訳でもなく、友人と騒ぐ訳でもない。 独り静かに海を眺め、カメラでお気に入りの風景を切り取り、酒を飲み、月を眺め、そして静かにもの想う。
ただそれだけ。 ああ、なんという最高の週末よ!

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