あすで「3・11」から丸7年。多くの問題に直面していますが、その根底には、「復興」キャンペーンで「3・11」を過去のことにし、深刻な実態や政府・東京電力の責任を隠ぺいしようとする安倍戦略があります。日々の生活に埋没し「3・11」から目をそらして「忘却」に逃れようとしている私たちの生き方も問われています。
国際環境NGO・グリーンピースは今月1日、「福島原発事故7周年」を前に、「福島を振り返る:7年間続いている災害」と題する報告書を発表しました。グリーンピースの専門家らによる調査チームが、昨年9月と10月に福島で行った現地調査をもとにしたものです。韓国の「ハンギョレ新聞」(1日付)がその内容を詳しく報じています。以下、同紙の記事から抜粋します。(写真左は昨年5月撮影した浪江町)
日本政府が昨年3月、避難指示を解除した福島県浪江町と飯館村地域の家や森、道路、田畑など約4万8000地点で空間放射線量率を測定した結果、日本政府が実施してきた除染作業があまり効果がなかったことが明らかになった。
除染作業が完了した飯館地域の場合、6世帯のうち4世帯から日本政府の長期目標の平均3倍に達する放射線数値が測定され、一部の地点では2015年よりさらに高いレベルの放射線が測定された。再汚染の結果と推定される。
浪江地域にある学校近くの森では、一般人の年間被曝限界値である1㍉シーベルトを大きく上回る10㍉シーベルトの放射線が測定され、除染作業が生徒たちの被曝の危険を大きく減らすことはできなかったことが分かった。
福島原発から20㌔離れた浪江地域の大堀村では、年間被曝量101㍉シーベルトに該当する放射線量が測定された。限界値の100倍を超える。
このような調査結果は、避難指示が解除された汚染地域に戻って暮らしていたり、暮らすことになる市民たちが深刻な危険にさらされていることを示している。
調査チームを率いたグリーンピースのヤン・バンダ・ブッダ氏は「戻った市民らの状況は、毎週1回胸部レントゲンを撮るのと同じだ。これは容認できない深刻な人権侵害だ」と話した。
グリーンピースは、調査結果は日本政府が設定した除染目標(年間1㍉シーベルト、時間当たり0・23㍃シーベルト)が、避難指示をすでに解除した地域では少なくとも21世紀半ばまで、まだ避難区域である地域では22世紀まで、達成されるのは難しいことを示すものだと明らかにした。
このような状況にもかかわらず、日本政府は避難民たちに対する支援を中断し、汚染地域に帰還させる政策を推進してきた。それでも帰還率が浪江地域は2・5%、飯館地域は7%(昨年12月現在)にとどまると、除染作業の目標である長期放射線量率基準を高めるための検討に着手し、国連国際人権理事会(UNHRC)から昨年11月、避難民の人権を尊重せよという勧告まで受けた、とグリーンピースは説明した。(1日付ハンギョレ新聞より)
放射能汚染の深刻な実態を示すのはグリーンピースの調査だけではありません。
7日放送されたNHKスペシャル「被曝の森」は、福島原発に近い赤宇木(あこうぎ)地区の調査の結果、土壌の91・5%に放射性セシウムが分布しており、それが鳥や虫に移る「汚染の循環」が起こっていること(写真中)、さらに、生息する野生動物(ニホンザルなど)に重大な染色体異常(二動原体)が起こっていることが明らかになりました(写真右)。
調査した日本の専門家は、「すごく複雑な異常が起こっている」「未知の領域に入り込んでいるということだ」と口ぐちに放射能汚染、とりわけ内部被曝が人間(現在の科学)では解明も制御も不能であることを認めました。そして、こう断言しました。
「(原発)事故は過去のものだが、被曝は現在進行形だ」
グリーンピース日本事務所の鈴木かずえさんは「日本政府は避難民を強制帰還させることを直ちに止め、国連の勧告案を履行しなければならない」と強調します(ハンギョレ新聞、同前)。
私たちは、こうした深刻な放射能汚染、安倍政権の重大な人権侵害の現在進行形の中で生きていることを、片時も忘れることは許されません。