アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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なぜ朝鮮にだけ「非核化」を求めるのか

2018年03月08日 | 朝鮮半島・在日コリアン差別と日本

     

 韓国と朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)は6日、3回目の「首脳会談」を4月末に行うことで合意しました。その帰趨は予断を許しませんが、確実に言えることは、合意に対する安倍政権や日本メディアの反応・論評は、自らの責任・問題を棚上げして一方的に朝鮮に矛先を向けるきわめて偏向したものだということです。

 安倍首相は7日未明(日本時間)、訪米中の河井克行・自民党総裁外交特別補佐を通じて米側に3点の「メッセージ」を伝えました。①北朝鮮への制裁が効いたからこそ対話の流れになった②北朝鮮は完全、検証可能、不可逆的は非核化に向けてコミットしなければならない③当面は圧力を高めつつ、各国と連携して状況を見極める。(7日付朝日新聞)

 朝鮮民族同士の融和・和解・平和的統一へ向けた努力を、自らの「圧力」の成果であるかのように言うのは牽強付会も甚だしく、さらに政治的にも人道的にも問題のある「制裁」をさらに強化しようとするのは言語道断です。

 ここで強調したいのは、②の「非核化」の問題です。こうした主張は安倍氏だけではありません。

 毎日新聞は7日付社説で、「非核化へ向けた意思確認のためには具体的な行動が必要だ。北朝鮮が実際に動くまでは国際的な圧力をかけ続ける必要がある」とし、東京新聞も同日付社説で、「韓国政府は南北首脳会談だけに目を奪われず、非核化に向けた具体的な行動を、機会があるごとに北朝鮮側に促してほしい」と述べています。

 安倍氏やこれらメディアの主張に共通しているのは、北朝鮮には「非核化への具体的な行動」を求めながら、一方のアメリカの「核戦略」については一言も触れていないことです。

 朝鮮半島の「非核化」は当然の主張です。しかし、朝鮮だけにそれを求めるのは偏向であり、それでは「非核化」が実現するはずがないことは明白です。なぜなら、朝鮮戦争の休戦協定に反して早くから韓国に核兵器を配備し続けているのはアメリカだからです。そのアメリカは「非核化」どころか、「使える核兵器」による新たな核戦略指針(2月2日)を発表したばかりです。
 朝鮮の「核・ミサイル開発」が、こうしたアメリカの核脅迫戦略に対する対抗措置であることは明らかです。

 安倍氏やメディアは「北朝鮮の過去の約束違反」を非難しますが、その間も核超大国のアメリカが一貫して核脅迫政策を取り続けてきたことを見過ごすことはできません。

 朝鮮に「非核化」を求めるなら、アメリカに対しても同様の要求を突きつけねばならないことは当然です。

 安倍氏や日本のメディアはなぜそれがでできない(しない)のか。
 アメリカの「核の傘」にすがっているからであり、その根底に核・軍事同盟の「抑止力」論に対する信仰があるからです。

 しかし、いまや「核の傘」「抑止力」論に固執しているのはアメリカをはじめとする核保有国と日本などその「傘」の下にいる一部の国であり、世界の趨勢は「核の傘」「核抑止力」論打破へ向かっていることを銘記する必要があります。
 それが具体化されたのが核兵器禁止条約(2017年7月採択)にほかなりません。

 核兵器禁止条約への努力が評価されてICANがノーベル平和賞を受賞しましたが、受賞演説で被爆者のサーロー節子さんはこう告発しました。
 「『抑止力』は軍縮を抑止する。核武装国と『核の傘』の下の共犯者たちは人類を危険にさらす暴力体系をなしている」(2017年12月10日、写真右)
 フィン事務局長も、「抑止のためという核保有が北朝鮮などの核開発を招いて対立につながっている」と「抑止力」論を批判しました。

 朝鮮民族分断に直接・間接に責任がある日本の私たちが、「南北会談」の行方をひとごとのように傍観したり、まして朝鮮を一方的に非難することは許されません。朝鮮の平和的統一に向けて私たちがやるべきことを行うべきです。
 その1つが、「核の傘」・「核抑止力」論から脱却し、核兵器禁止条約を批准して、アメリカに正面から「非核化」の要求を突きつけることではないでしょうか。

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