アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「防衛省オピニオンリーダー」問われる「文化・著名人」

2022年12月31日 | 自衛隊・日米安保
  

 来年は、岸田政権が閣議決定した「軍拡(安保)3文書」をめぐる大軍拡・軍事国家体制づくりが最大の争点になります。
 政府・防衛省は、カギを握るのは世論対策だとして、「人工知能(AI)を活用した世論操作の研究」に乗り出しています(12日のブログ参照)。

 世論対策として政府・防衛省がとりわけターゲットにしているのが「若者世代」です。

 11月18日、東京・武道館で「自衛隊音楽まつり」が開催されました。
「各隊は人気アニメ「鬼滅の刃」の主題歌や、森山直太朗さんの「さくら」などを演奏。高校生や保護者らを招いた前日のリハーサル公演には若者に人気の音楽グループ「EXILE」の派生ユニットがサプライズ主演する一幕も。自衛隊関係者は「若者向けの曲目が多いのは、自衛官のなり手の青少年がターゲットだからだ」と話す」(10日付朝日新聞デジタル)

 そんな中、見過ごせないのが「防衛省オピニオンリーダー」なるものの存在です。

「防衛省は近年、特に若者へのアピールを強めている。SNSの多数のアカウントを駆使し、登山家の野口健さんや将棋棋士の羽生善治さん、落語家の林家三平さんら26人を「防衛省オピニオンリーダー」に任命した」(同朝日新聞デジタル)

 「オピニオンリーダー」とは何か。防衛省はこう説明しています。

「防衛省オピニオンリーダーとは、各界における著名人や有識者の方々に、防衛施策や自衛隊の活動、防衛問題についての認識を深めていただくことを目的としたものです。現在は、大学教授など、26名の方々を委嘱しています。
活動内容
〇陸海空自衛隊の部隊見学や各種行事への参加
〇防衛政策等に関する説明会の実施
〇防衛省・自衛隊に関する各種資料の提供    2022年4月6日更新 」(防衛省・自衛隊HP)

 各界の「著名人や有識者」に積極的に「防衛政策や自衛隊の活動」について説明(洗脳)し、世論操作の中心に据えようというのが「防衛省オピニオンリーダー」です。

 林家三平氏は「オピニオンリーダーとして防衛白書の作成にも携わって」いるといいます。そして、2021年10月26日には沖縄の海上自衛隊基地を「慰問」し、掃海艇「ししじま」に乗船もし、盾を贈られています(海上自衛隊沖縄基地隊のHPより。写真右も)

 「26名」がそれぞれどういう意向・いきさつで「防衛省オピニオンリーダー」になったのかは分かりませんが、はたして軍隊としての自衛隊の本質、対米従属の日米軍事同盟(安保条約)の実態を知ったうえで「オピニオンリーダー」を務めているのでしょうか。
 もし、「災害救助」を見て自衛隊に協力しようと思ったのだとしたら、それは政府・防衛省の戦略にまんまとだまされていると言わねばなりません、多くの「国民」がだまされているように(写真中は自衛隊の募集サイト)。

 帝国日本の侵略戦争・植民地支配に多くの「文化・著名人」が加担・協力したことは歴史の事実です。その戦争責任について、映画監督の伊丹万作(1900~46、故・伊丹十三氏の父)は敗戦後まもなくこう書いています。

「だますものだけでは戦争は起こらない。だますものとだまされるものとがそろわなければ戦争は起こらない。だまされたものの罪は、ただ単にだまされたと言う事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである」(「映画春秋」創刊号1946年、『伊丹万作エッセイ集』ちくま文庫所収)

 過ちを繰り返してはなりません。
 政府・防衛省が本格的に広報戦略を展開しようとしているとき、「文化・著名人」はその見識・社会的責任がこれまで以上に問われます。
 もちろん、一番問われる、一番だまされてならないのは、私たち「市民」です。
 2023年は勝負の年です。

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