アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

自衛隊性暴力告発を逆利用させないために

2023年02月02日 | 自衛隊・日米安保
  

 自衛隊内で性暴力被害を受けた元自衛官の五ノ井里奈さんが1月30日、国と加害者の元自衛隊員5人を相手取り、損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こしました。

 同日、日本記者クラブで会見した五ノ井さんはこう述べました。

「(元隊員らは)反省していないと感じた。このままではハラスメントの根絶は不可能なんじゃないかと思った」
「震災で自衛隊の方々に助けてもらったので(五ノ井さんは宮城県東松島市の出身)、自衛隊への感謝は忘れないし、今でも好き。好きな自衛隊を辞めざるを得ず、たくさんのものを失っているので、その責任をしっかりとって頂きたい」
一人ひとりが大切にされて、正しい正義感を持った隊員や組織になってほしい」(30日付朝日新聞デジタル)

 五ノ井さんの提訴に対し、浜田靖一防衛相は31日、「ハラスメントは隊員相互の信頼関係を失墜させ組織の根幹を揺るがす、決してあってはならないものだ。ハラスメントを一切許容しない組織環境を構築するよう努めたい」(写真右)と述べました。

 性暴力が許されないことは言うまでもなく、さまざまな重圧に抗して告発・提訴した五ノ井さんの勇気は称賛されます。

 しかし、そこには大きな落とし穴があることを見落とすことはできません。

 上記の浜田防衛相の言葉とまったく同じ文言を最近目にしました。
自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化・ハラスメントを許容しない組織環境
 これは「軍拡(安保)3文書」(12月16日閣議決定)の1つ「国家安全保障戦略」の第4章「優先する戦略的なアプローチ」の一節です。

 政府・防衛省は、自衛隊内のハラスメント対策を、43兆円の大軍拡・「敵地攻撃能力保有」と一体の「国家戦略」の中に位置づけているのです。それは自衛隊の組織的強化であると同時に、大軍拡に対する市民の批判をかわすうえでも必要な「戦略的アプローチ」です。

 そもそも、自衛隊が「一人ひとりが大切にされて、正しい正義感を持った組織」になることは不可能です。

 自衛隊は正真正銘の軍隊です。「軍拡(安保)3文書」が実行されれば、「ロシアや英国を抜き、米中印に次ぐ世界4位になる可能性が高い」(12月17日付朝日新聞)世界有数の軍隊です。
 しかも、「日米同盟の抑止力と対処力を一層強化する」(「国家安全保障戦略」)ことを目指している対米従属の軍隊です。
 その根源は、憲法の平和原則に反する日米軍事同盟=安保条約です。

 軍隊は戦争(殺戮)が本業であり、軍隊と性暴力は一体です(2022年10月4日のブログ参照)。自衛隊が「正しい正義感を持った組織」になることなどあり得ません。それは「核の平和利用」が幻想なのと同じです。

 五ノ井さんの告発が、「軍拡3文書」に基づく自衛隊の組織強化、大軍拡・戦争国家化の推進に逆利用されないためには、自衛隊の性暴力をゆるさないたたかいを、憲法違反の自衛隊解散(災害救助組織への改組)、日米軍事同盟=安保条約廃棄と一体ですすめることが重要です。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「非暴力」という「武器」い... | トップ | NATO事務総長は何をしに日本... »