NATO(北大西洋条約機構)のストルテンベルグ事務総長が1月30日~2月1日、日本を訪れました。31日岸田首相と会談し、共同声明を発表しました(写真左)。同事務総長はいったい何をしに日本に来たのでしょうか。
同氏は岸田首相と会談する前に、まず航空自衛隊入間基地(埼玉県)を訪れ、自衛隊員を激励しました(写真中)。これは同氏の来日の意味を象徴的に示しています。
同氏が第1に行ったことは、「中国脅威」論、「台湾有事」論を煽ったことです。
「ストルテンベルグ氏は共同記者発表で「中国は核兵器を含む軍事力を大幅に増強し、台湾を脅かしている」と批判し、連携対処する必要があると述べた。日NATO共同文書で、中国の軍拡を指摘したのは初めて」(1日付共同配信)
第2に、岸田政権が閣議決定(12月16日)した「軍拡(安保)3文書」の礼賛です。
「我々は日本の新しい国家安全保障戦略を歓迎しています。そういった戦略とNATO加盟国が基準としている(GDP比)2%の防衛支出への強い決意も歓迎します。それは、日本を平和のためのよりいっそう強力なパートナーにしてくれるでしょう」(朝日新聞の単独インタビュー、1日付朝日新聞デジタル)
第3に、日本とNATOの一体化の促進です。
「安全保障は地域的なものではありません。グローバルな問題です。ですから、私たちは日本とNATOのパートナーシップを高く評価しています。…現在欧州で起きていることは明日東アジアでも起きる可能性があるのです。…NATOのパートナーの中でも、日本ほど能力があって親密な関係の国はほかにありません」(同インタビュー)
第4に、日本と韓国の軍事的一体化の強化です。同氏は訪日の前に韓国を訪れ、尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領に、ウクライナへの武器供与を強く求めました(写真右)。
「事務総長は30日、訪問先の韓国・ソウルで講演し…ウクライナに対して、韓国が直接的な軍事支援を決断すべきだと述べた。…「最後はあなた方の決断にかかっている」として韓国側に軍事支援を強く促した」(1月31日付朝日新聞デジタル)
「韓国・日本とNATOが、朝(鮮)中ロを牽制するため安全保障分野の協力をいっそう強化している」(2日付ハンギョレ新聞)
重要なのは、こうしたストルテンベルグ氏の行動はアメリカの戦略に基づくものだということです。
「こうした(NATO)戦略の背景にあるのは、台湾有事を見据えた米国の思惑だ。…NATOは冷戦後、米国の求めに沿う形で戦略を見直してきており、欧州防衛という本来の目的から、旧ユーゴスラビア紛争や米同時テロ後のアフガニスタンへの軍事介入などへと活動範囲を広げてきた。
オランダのシンクタンク「ハーグ戦略研究センター」のポール・ファン・ホーフト上級研究員は、「NATOがインド太平洋地域へ(関与を)拡大するのも、そうした流れに似ている」と指摘する。
米国が築いてきたアジア諸国との同盟関係を、NATOとも結びつけようとしているのはそうした米国の戦略があるとホーフト氏はみる」(1月31日付朝日新聞デジタル)
アメリカは日本とNATOとの一体化を促進することで、日米安保条約と北大西洋条約の2つの軍事同盟を一体化させて地球規模に拡大し、日本の軍事的・経済的負担をいっそう強めようとしています。
NATO諸国のウクライナへの武器供与・軍事支援による戦争介入、それと一体となった日本の「軍拡3文書」決定は、そうした米戦略の一環であることを銘記する必要があります。