アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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日本と急接近、NATOは国連憲章理念に反する軍事同盟

2022年06月08日 | 国家と戦争
   

 NATO(北大西洋条約機構)と日本が急接近しています。
 NATOのバウアー軍事委員長は7日来日し、自衛隊トップの山崎幸二統合幕僚長と会談、「連携強化」で合意しました(写真左)。
 林芳正外相は先に、日本政府として初めてNATO外相会議に「パートナー国」として出席しました(4月7日)。
 さらに、岸田文雄首相も今月末、スペインで行われるNATO首脳会議に出席する予定です。日本の首相としてもちろん初めてです。

 これまで「中立」を保っていた北欧のフィンランド、スウェーデンも、同時にNATO加盟を申請しました(写真右)。

 こうしてNATOが注目を集めるようになったのは、言うまでもなくロシアのウクライナ侵攻がきっかけです。もともとウクライナ戦争は、「NATOの東方拡大」が誘発したものであるにもかかわらず、ロシアへの憎悪と対照的に、NATOが美化されているのが西側メディア報道の特徴です。

 今あらためて確認する必要があるのは、NATOは国際法や国連憲章の理念に反している軍事同盟組織だということです。

 NATOは1949年4月4日、ワシントンで調印された北大西洋条約の締約国(当初12カ国)によってつくられました。全14条からなる同条約の中心は第5条。調印国に対して「武力攻撃が生じた場合、国連憲章51条に認められた個別又は集団的自衛権の行使により」、「武力の使用を含む」行動で「締約国を援助する」としています。

 確かに国連憲章51条は、「安全保障理事会が…必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」としています。しかし、そもそもこの条項は「武力を用いないことを原則」(国連憲章前文)とする国連の「集団安全保障」の理念と矛盾していることを確認する必要があります。

 国際法学者の阿部浩己氏は、「この論理の立て方(憲章51条―私)が、すでに一つの落とし穴に陥っている」として、こう指摘しています。

「武力を徹底して使わないのが前提(憲章前文―私)なら、武力を回避したかたちでいかに紛争を解決するか、そこを探っていくべきなんです。それなのに、結局、力に頼ることが前提になっている。
 武力の放棄という点で、国連憲章と日本国憲法は同じですよね。しかし最終的には、力を信じるか否かで違うものになった。…原子爆弾が投下される以前(1945年6月26日―私)に国連憲章が生まれ、投下後(1946年11月3日―私)に日本国憲法が誕生した。日本はある意味「最後の力」を知ってしまったわけです」(共著『戦争の克服』集英社新書2006年)

 国連憲章の理念である「集団的安全保障」と、それに反する「集団的自衛権」。その関係を憲法学者の澤野義一氏はこう解説しています。

「「集団的安全保障」とは、イデオロギーや政治経済体制が対立関係にある諸国家をも一つの国際組織のなかに組み入れ…平和の維持・回復をはかる制度である。これは、第一次世界大戦までとられていた戦争自由論の下での勢力均衡ないし軍事同盟方式に代わる安全保障方式であり、第一次世界大戦以降の国際法における戦争違法化論の下で登場したものである。それが制度化されたものが、国際連盟や国際連合である」

「国連あるいはその集団的安全保障は…歴史的限界をもっている。第一は、国連組織の不平等性の問題である。(中略)第二は、集団的自衛権を容認している問題である。国連憲章51条…この集団的自衛権は、現実にはNATOやワルシャワ条約、日米安保条約といった多数の軍事同盟条約を正当化してきた。しかし、それは集団的安全保障の理念とは矛盾し、形骸化させている

「国連憲章は、集団的安全保障と集団的自衛権という矛盾しあう制度を容認しているのである。したがって、集団的安全保障の理念を徹底させようとするならば、集団的自衛権制度(軍事同盟―私)を否定することが必要になる。冷戦崩壊によりワルシャワ条約機構が解消された以上、NATOの存続も問題とされるべきであろう」(『非武装中立と平和保障』青木書店1997年)

 NATOは国際法、国連憲章の理念である「集団的安全保障」に反する「集団的自衛権」を“根拠”に成立・存続している軍事同盟です。したがって、少なくともワルシャワ条約機構が解体した時点(1991年7月1日)でNATOも解体されるべきでした。

 それが解体どころか逆に「東方拡大」まで行い、さらに今、日本に接近してアジアにまで勢力を伸ばそうとしているのです。
 そして、阿部氏も指摘しているように、国連憲章と違って明確に「集団的自衛権」を禁じている憲法を持つの日本の首相が、「集団的自衛権」にもとづく軍事同盟であるNATOの首脳会議に参加しようとしている。これが平和に逆行する現在の重大局面です。
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