アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日本でなぜ在日差別・植民地支配糾弾の声が広がらないのか

2020年06月15日 | 天皇制と政治・社会

    
 黒人差別反対・糾弾の市民運動は40カ国以上に広がっています。黒人差別だけでなく、先住民族に対する差別(ニュージーランド)や、奴隷制度・植民地支配に対する抗議へ広がりをみせています。

 ベルギーでは過酷なアフリカ支配を行った国王(レオポルド2世)の像の撤去を求める声が高まっています(6日付共同配信)。イギリスでは植民地で富を成した豪商の像が引き倒され(写真左)、批判はチャーチル元首相にまで及んでいます。
 若者を中心としたこうした差別反対の行動は、「連帯のパンデミック」(仏の思想家・ジャック・アタリ氏、13日のNHKスペシャル)とも言われています。

 そんな中、取り残されているのが日本です。
 日本でも大阪で約1000人(7日)、都内で数千人(14日、写真中)のデモが行われましたが、広がりは限定的です。

 アメリカで黒人差別という構造的人種差別の問い直しが広がっていることに連帯するなら、日本でまず行われなければならないのは、在日コリアン(韓国人・朝鮮人)に対する差別への反対・抗議、そしてその根源である植民地支配に対する問い返しではないでしょうか。しかし、その動きは見えてきません。

 それどころか安倍晋三政権は、日本の韓国人・朝鮮人差別、植民地支配による強制連行・強制労働の歴史を隠ぺいする新たな動きに出ようとしています。

 「政府は13日、世界文化遺産『明治日本の産業革命遺産』の端島(通称・軍艦島、長崎市)の炭鉱を巡り、戦時徴用された朝鮮半島出身者への差別的対応はなかったとする元島民の証言を一般公開する方針を固めた。15日から東京都内の政府施設に展示コーナーを設け、映像やパネルを使って紹介する」(14日付沖縄タイムス)
 歴史的に明白な軍艦島における韓国人・朝鮮人差別、虐待の事実を「元島民」の「証言」を使って否定しようというのです。

 安倍首相の歴史修正主義は今に始まったことではありませんが、世界中で人種差別・植民地支配への糾弾が広がっているまさにそのさなかに、日本ではそれと真逆のことが行われようとしていることは重大です。

 なぜ日本では在日韓国人・朝鮮人に対する差別に反対・抗議する声が広がらないのでしょうか。なぜコリア半島を植民地支配した責任が問い直されないのでしょうか。

 多くの根深い問題がありますが、ここでは根源的問題にだけ触れます。それは、日本は敗戦後、植民地支配の責任を追及するどころか、逆に植民支配の先頭に立ってきた人物、その末裔が政治・社会の中心に座り続けていることです。

 首相の安倍晋三氏は、侵略戦争・植民支配時の閣僚でA級戦犯容疑だった岸信介(元首相)の孫。副首相の麻生太郎氏は植民地支配で財を成した麻生セメントの末裔であり、敗戦後在日差別を固定化したサンフランシスコ「講和」条約調印の張本人・吉田茂(元首相)の孫です。

 なにより問題なのは、日本人が侵略戦争・植民地支配の最高責任者だった天皇・裕仁(写真右)を免罪し、逆に敗戦後も「象徴天皇」としてあがめてきたことです。裕仁は敗戦後も憲法に反して政治発言・行動を繰り返し、自ら在日、沖縄差別のレールを敷きました(外国人登録令、沖縄メッセージなど)。

 その子、明仁は裕仁を「尊敬する」とたびたび公言し、裕仁の免罪に手を貸しました。また幼少時から、朝鮮侵略を唱えた福沢諭吉の「帝室論」で教育されてきました。その福沢は今も最高額紙幣の顔として日本社会に出回っています。明仁が裕仁に倣って憲法を無視した政治発言・行動を繰り返してきたことは周知の事実です(「退位表明ビデオ」など)。
 裕仁の孫・徳仁は、そんな父・明仁の路線を踏襲すると公言しています。

 植民地支配の最高責任者、在日・沖縄差別の張本人だった裕仁の責任を免罪し、その子・孫が裕仁に倣い、「日本国民の象徴」として身分差別の頂点に立っている。それが天皇制です。
 天皇制こそ、日本で人種差別(在日・沖縄・アイヌ・外国人差別)、植民地支配追及の声・運動が広がることを妨げている元凶であることに改めて目を向ける必要があります。

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