アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

葉梨更迭・米中間選挙にみる政党政治の末路

2022年11月15日 | 日本の政治と政党
   

 葉梨康弘前法相の「死刑ハンコ」暴言で深刻なのは、かばいきれず更迭に追い込まれた岸田文雄首相も、その発言の問題性を自覚していないことです。更迭の理由は「政権・国会運営への影響」にすぎませんでした。

 統一教会との癒着も含め、自民党議員の劣悪ぶりは目を覆うばかりですが、その根底には何があるのでしょうか。

 元凶の1つは、議員の世襲です。自民党議員の多くは世襲議員であり、葉梨氏も岸田氏も例外ではありません。安倍晋三氏や麻生太郎氏をはじめ、この20数年間で首相になった6人の自民党議員うち、世襲でないのは菅義偉氏だけです。
 親から「地盤・看板・かばん(金)」を引き継ぐ世襲は、公職である議員ポストの私物化にほかなりません。

 なぜ世襲議員が横行するのか。
 それは国政選挙が個人の見識や政策を選ぶのではなく、政党を選択するものになっているからではないでしょうか。いかに無能・低劣な人物であっても、自民党の公認を得れば、多くの有権者は「自民党」という名前に投票します。それが議員の質を劣化させ、政治を有権者・市民から遊離させているのではないでしょうか。

 これは日本だけの問題ではありません。

 アメリカ中間選挙の焦点は、「民主党か共和党か」に集中しています。1人1区の小選挙区制では、民主、共和の2大政党以外に議席をえることは不可能です。個別の政策では多少違いはあっても(たとえば今回の中絶法をめぐる動き)、覇権主義はじめ根本的な相違のない2大政党の選択を余儀なくされているのです。共和党の中には個人的資質で疑問符が付く新人候補も複数いました。

 こうした実態はけっして米国の有権者の意向に合致したものではありません。若者の投票傾向を分析している米国の研究者はこう指摘しています。

「有権者の党派性や民主主義への考え方を調べたところ、若者の50%近くは党派で、(共和党か民主党の)どちらかに少しだけ傾くと答えていました。政党への忠誠心のためにその政党のすべての政策を支持したり、リーダーの個人的な失策や欠点を無視したりするような若者はごく少数になっています」(米タフツ大・ケイ・川島・ギンズバーグ所長、6日付朝日新聞デジタル)

 若者の半数近くは無党派であり、政党を支持する場合もその政策を丸ごと支持するわけではない、むしろ政治家個人の失策や欠点に目を向けている、という分析です。

 市民(有権者)の要求・意見は多様化しており、政策課題に対する賛否も個別的です。それを「政党」という括りで一括し、あらゆる政策をパッケージにして賛否を迫ることは、実態に合わない、時代にそぐわなくなっているのではないでしょうか。

 「支持政党」の世論調査では常に「支持政党なし」が“第1党”です。選挙の投票率の低下は、「政治的無関心」の表れではなく、政党中心の選挙・政治体制に対する暗黙の抗議ではないでしょうか。

 政党政治、間接民主主義を抜本的に検証し直し、IT技術の有効な活用を含め、新たな政治制度、民主主義制度を創り出していくことが求められていると考えます。
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