アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「敵」つくり平和に逆行する「8・6広島平和式典」

2022年08月06日 | 国家と戦争
   

 今年の「8・6平和記念式典」は、広島市(松井一実市長)がロシアとベラルーシを排除したまま(招待しないまま)行われます。「8・9長崎平和式典」も同様です(写真左は松井市長=右=と長崎の田上富久市長)。
 それは、本来、核兵器廃絶・平和を願うはずの「平和式典」が、逆にロシア、ベラルーシへの「憎しみ」を植え付け、ウクライナの停戦・和平にも逆行するという歴史的汚点を残すことになります。

 広島市は当初、例年通りロシア、ベラルーシも招待しようと準備をすすめていました。それを急きょ取りやめたのは、岸田政権の圧力に屈したためです(5月27日のブログ参照)。

「8・6式典」からのロシア、ベラルーシの排除は、岸田政権がアメリカ追随して行っている両国への制裁の一環です。「平和式典」を政治的制裁の場にすることは許されません。

 排除されたロシアのガルージン駐日大使は8月4日、ベラルーシのイエシン駐日大使は7月21日、それぞれ平和公園を訪れ、献花しました(写真中はガルージン氏)。

 ガルージン氏はSNS投稿(5月)で、「平和式典の主催者は「拒絶」を選んだ」として広島市の決定を「恥ずべき措置」と批判しました。イエシン氏も松井市長との会談で、「日本の首相や外相に、制裁対象というフィルターを通してベラルーシを見ないようお願いしてほしい」と述べました(7月22日付中国新聞)。

 制裁はいかなるものであっても、憎しみを煽り、敵対関係を固定・悪化させるだけで、平和にはつながりません。

 元広島市長でジャーナリストの平岡敬氏(94)は、ウクライナ情勢をめぐる現在の日本の状況について、こう述べています。

< どこかの国を敵視することが平和を阻害する要因です

 日本は戦後ずっと、北朝鮮とソ連(ロシア)、中国を敵視してきました。

 問題はナショナリズムです。支配者がけんかする時、国民を動員するにはナショナリズムを鼓舞しなければなりません

 いまのウクライナがそうです。ロシアもそうです。戦前の日本もやりました。民衆がそれに乗ったとき、結局、被害を被るのはすべて民衆です。支配者はほくそえむだけ。そういう構造を変えていかないといけません

 支配者にとってナショナリズムは、統治するためにとてもいいツールです。一番いいのは対外的な敵をつくることです

 そのためにはとにかく、民衆に憎しみを植え付けなければいけない。「あの国は悪い」「あいつは悪い」と教育によってずっとやってくるわけですよ。マスコミもしばしば加担します。>(3日の朝日新聞デジタル・抜粋、写真右も)

 平岡氏は「8・6」式典からの排除には直接言及していませんが、今回の岸田政権・松井市政のロシア、ベラルーシ排除・制裁は、市民・国民に両国に対する「憎しみ」を植え付け、敵愾心を駆り立てることになります。

 それは同時に、戦時体制をつくるため支配者の「一番のツール」である「ナショナリズム」を煽ることになるのではないでしょうか。

 ロシア、ベラルーシ排除について、広島県原爆被害者団体協議会(被団協)の箕牧智之理事長は、「ウクライナをひどい目に遭わしている。今回はやむをえない」と賛同しています(4日の朝日新聞デジタル)。広島「平和運動」の弱点をあらためて見る思いです。

 一方、広島市の被爆者・田中稔子さんは、「(両国には)人間的な部分があり、手を取り合う余地がある」と述べています(同)。この市民の思いを大切にしなければなりません。
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