アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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自衛隊に“米軍従属の大本営(統合司令部)”

2023年02月09日 | 自衛隊・日米安保
   

 6日付琉球新報(共同配信)は、<市谷に自衛隊統合司令部>の見出しでこう報じました。「政府は、陸海空3自衛隊を一元的に指揮する常設の統合司令部について、防衛省がある東京・市谷に新設する方針を固めた」

 統合司令部は、岸田政権が閣議決定した「軍拡(安保)3文書」の中の「国家防衛戦略」第4章で、「既存組織を見直し、陸自・海自・空自の一元的な指揮を行い得る常設の統合司令部を創設する」と明記されているものです。

 自衛隊にはすでに3軍を統合する統合幕僚長がいます。その上新たに統合司令官を置くのはなぜか。「関係者によると…(統合司令部)設置後、統合幕僚長は防衛相の補佐に集中し、統合司令官が部隊運用を受け持つ」(6日付琉球新報)といいます。

 統合幕僚長は防衛相・政府の対応に専念し、3軍の軍事的指揮は統合司令官が行うというわけです。これは戦時中の「大本営」の復活であり、統合司令官はかつての参謀長に他なりません。
 「大本営」は「戦争や事変の際に設置された陸海軍の最高統帥機関。軍隊を動かす「統帥権」を持つ天皇に直属し、内閣や議会のチェックは働かなかった」(8日付沖縄タイムス)組織です(写真右は1943年4月の大本営のもよう)。

 現代版「大本営」である統合司令部の創設は、政府の「戦時体制」づくりが本格化することを意味します。

 重要なのは、統合司令部にはかつての「大本営」にはなかった大きな特徴があることです。それは、完全に米軍に従属した司令部だということです。

 纐纈厚・明治大学国際武器移転史研究所客員研究員はこう指摘します。

「アジア太平洋戦争時には陸海軍をまたぐ組織として大本営が組織されたが、事実上統合司令部は戦時を想定した場合には大本営的な組織となる。
 現在…統合幕僚長が存在するが、その役割は総理大臣・防衛大臣との連絡役に特化し、米軍との連携を徹底するために統合司令部機能を確保し、統合司令官がアメリカの野戦指揮官と一体となって作戦指導を果たす任務を担おうとする役割分担が明確化されることになろう」(「今、憲法を考える会」通信「ピスカトール」1月26日号)

 纐纈氏の指摘を裏付けるように、こう報じられています。

司令部設置で自衛隊と米軍の過度な一体化も危ぶまれる。…防衛省筋は「自衛隊の運用を事実上、米側が主導することにはならないか。注視が必要だ」と指摘している」(6日付琉球新報)

 纐纈氏は、統合司令部設置について、「参謀本部と軍令部とが政治の関与を排除し、逆に武力を背景に政治に介入し、軍事的政治集団として「軍部」を形成し、戦争へと誘導していった歴史を想起せざるを得ない」(同前)と警鐘を鳴らします。

 同時にそれは、単なる歴史の繰り返しではなく、日米軍事同盟(安保条約)による“対米従属の大本営”という新たな重大な特徴・危険性を持つことを銘記する必要があります。
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