アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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人権機関がない・勧告に従わない日本の異常

2023年02月07日 | 差別・人権
  

 国連の人権理事会が3日、日本の人権状況に対する勧告を行いました(写真左・中)。人権理事会は加盟国の人権状況を定期的に審査していますが、日本に対する審査・勧告は6年ぶりです。

 勧告は、115の国・地域から指摘された300項目が盛り込まれています。この中には、▶在日コリアン差別撤廃▶ヘイトスピーチ禁止▶死刑制度廃止▶入管の医療体制改善▶同性婚合法化▶性的マイノリティ差別解消▶外国人技能実習制度改善―など、切実で深刻な日本の数々の人権侵害の改善・改革が指摘されています。

 その中で、あまり注目されてこなかった(と思われる)問題に、「国際的な基準に沿った独立した人権救済機関の設置」があります。

 この問題は、昨年11月の国連自由権委員会の勧告にも盛り込まれました。その意味について、国際的NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」日本代表の土井香苗氏が朝日新聞のインタビューに答えています(1日付朝日新聞デジタル、写真右)。

 土井氏は、日本の人権状況は「世界の国の動きから遅れ、ついていけていない」とし、「その主たる原因の一つが、国内人権機関の設立ができなかったことだと思っています。なんでないの、と声を大にして言いたい」と強調しています。
 
「国内人権機関」とは何か。

裁判所とは別に、人権侵害からの救済と人権保障を推進するための国家機関です。1993年12月の国連総会で、『国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)』が採択されたのですが、政府から独立して、人権救済や立法・政策提言、人権教育などで権限を行使することが期待されたのです。すでに世界では約120カ国が人権機関を持っています」(土井氏、同)

 それが日本にはない。

「端的にいえば、日本の霞が関に人権をつかさどる役所がないということです。…日本には、人権政策を責任を持って作る機関がないのです。その結果、もちろん人材もいません。世界各国政府に多数いる『人権専門家』の国家公務員は、日本にはほぼいません。このような現状では、日本の人権政策が場当たり的で、政府高官のリーダーシップに欠けるのは必然ともいえます」(同)

 2000年代はじめには、人権擁護法案とともに人権機関を創設しようとする動きもありましたが―。

「様々な方面からの反対にあって、国内人権機関を作る動きはつぶされてしまいました。…最大の抵抗は永田町の中にあり、一部の少数の議員の反対で、今も封印されたままになっている状態です。…包括的な差別禁止法が20年前に成立していたら、と思わずにはいられません」(同)

 日本が世界の人権後進国であることを示すのは、国内人権機関の不在だけではありません。
 これまで国連の様々な人権条約機関が日本に勧告を行ってきましたが、日本政府はそれを無視し続けてきました。

 法学博士(国際人権法)で人権機関での活動が豊富な藤田早苗氏はこう指摘します。

「日本はそれぞれの条約機関からさまざまな勧告を受けてきた。では、その実施はどうなのだろうか。(2014年の自由権規約審査で)議長が会議の終わりにこのように言った。「日本はこれまで何度も同じ勧告を受けてきて、まったく改善しようとしていない。まるで国際社会に対して反抗しているように見える」…2013年6月には、当時の安倍政権は条約機関の勧告には法的拘束力がないので従う必要がないという閣議決定をした」(藤田氏著『武器としての国際人権』集英社新書2022年)

 国内人権機関を置かない。数々の国連人権条約機関の勧告を無視し、「従う必要はない」と閣議決定する。そんな自民党政治を一掃しない限り、日本が人権後進国から脱することはできません。
 
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