アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

なぜ「敵地攻撃」賛成が多数なのか

2022年12月22日 | 自衛隊・日米安保
   

 各種世論調査で、岸田政権の「不支持」が「支持」を大きく上回る結果が常態化しています。「軍拡増税」にも「反対」が「賛成」を上回っています。
 ところが、「敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有」についてだけは、「反対」より「賛成」が多数という結果になっています。

 例えば、共同通信の世論調査(17、18日実施)では、「反対」42・6%に対し「賛成」50・3%。朝日新聞の世論調査(17、18日実施)でも、「反対」38%で「賛成」は56%にのぼっています。

 「朝日」の調査結果を細かく見ると、「男女別」では男性=「賛成」66%、「反対」29%、女性=「賛成」47%、「反対」47%。年代別では、「賛成」が最も多いのは18~29歳(65%)で、最も少ないのは70歳以上(51%)でした。男性・若年層に「賛成」が最も多い傾向があることになります。

 さらに、「防衛費」の増額に「反対」と答えた人(48%)でも、「敵基地攻撃能力保有」には36%が「賛成」しています。支持政党別でも、立憲民主党支持者の47%が「賛成」(「反対」は46%)。共同通信の調査では日本共産党支持者でも19・4%が「賛成」しています。

 「敵基地攻撃能力保有」が、「専守防衛の原則を空洞化させ…国際法違反の先制攻撃になりかねない危険や、対抗措置によってかえって地域の緊張を高める恐れ」(17日付朝日新聞「社説」)があることは広く指摘されています。

 にもかかわらず、それに「賛成」する人があらゆる層に広がっているのはなぜでしょうか。

 主な原因は2つあるのではないでしょうか。

 1つは、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)、中国に関する日本政府とメディアが一体となったプロパガンダです。

 例えば、朝鮮の「ミサイル発射」は、アメリカと韓国の合同軍事訓練(写真中は最新の合同訓練)に対する朝鮮の対抗措置です。それに最近は日本軍(自衛隊)も加わり、日米韓3軍合同訓練で朝鮮を挑発していることが元凶です。
 ところが、日本のメディアは異口同音、十年一日のごとく「北朝鮮の挑発」と繰り返しています。原因と結果の逆転であり、意図的なすり替えです。それが「敵地(北朝鮮)への先制攻撃はやむなし」という世論を醸成していることは明らかです。

 もう1つは、ウクライナ情勢(戦争)に対する平和主義的視点の後退です。

 これも日本政府とメディアによって、アメリカはじめNATOによるウクライナへの武器供与が肯定(催促)され、「徹底抗戦」が賛美されています。
 これが、停戦・和平交渉を遠ざけているばかりか、「目には目を」の戦争論理を煽っています。ウクライナ情勢に対する平和主義的アプローチはかき消されています。

今回の(ウクライナ)戦争が投げかけた第1の論点は、中立の是非である。…(ところが)戦争が勃発すると、日本はただちに西側諸国と連携してロシアに対する経済制裁に参加し、またウクライナの要請に応じて防弾チョッキや監視用ドローンの提供を始めた。すなわち、今回の戦争において中立の立場をとらないことを早々に決めたということである」(松元雅和日本大学教授「ウクライナ戦争と平和主義のゆくえ」、「世界」12月号所収)

 日本政府が「中立の立場」を検討することもなく早々と「西側諸国と連携」したのは、日米軍事同盟(安保条約)があるからです。軍事同盟による平和主義の圧殺がここにはっきり表れています。

 ソウルの日本大使館前では20日、民族問題研究所など市民団体によって、「日本の安全保障関連3文書改定糾弾記者会見」が行われ、「太平洋戦争敗戦後70年以上「防衛」にとどまっていた安保政策が攻撃能力を保持するようになった」と糾弾の声を上げました(21日付ハンギョレ新聞、写真右)

 日本政府とメディアが一体となったプロパガンダに抗し、平和主義を守り前進させることができるのか。日本の市民が問われています。
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