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朝日新聞デジタルは5日、「ゼレンスキー大統領「責任転嫁」アムネスティに反論」の見出しで、こう報じました。「ウクライナのゼレンスキー大統領は4日夜に公開した動画で、国際人権団体が同日、「ウクライナ軍部隊が居住地に軍事拠点を設置し、(自国の)民間人を危険にさらしている」と指摘したことについて、「侵攻の加害者(ロシア)ではなく、被害者(ウクライナ)に責任を転嫁しようとしている」と批判した」
ニュースの元であるアムネスティの指摘を第1報として伝えるのでなく、ゼレンスキー氏の反論を中心に報じるというきわめて奇異な(偏った)記事です。NHKはニュースで、同大統領の「反論」の映像だけを流しました。
日本のメディアではアムネスティが何を指摘したのかよく分かりません。ネットで探していると、AFP通信(本社フランス)日本語版の記事が見つかりました。以下、抜粋します(太字は私)。
<【8月4日AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは4日に公表した報告書で、ロシアの侵攻を受けているウクライナの軍が、国際法に違反する形で学校や病院を含む民間人居住地域に軍事拠点を構築して市民の命を危険にさらしていると批判した。
同団体は、ウクライナ軍がハルキウやドネツク、ルガンスク、ミコライフ各州にある19の自治体で、民間人を危険にさらした可能性がある事案を列挙した。
アムネスティの調査員は、ウクライナ軍が病院5か所、学校22か所を「事実上の軍事基地」に転用していたことを確認。
アムネスティのアニフェス・カラマール事務総長は「ウクライナ軍が民間人居住地域で活動する際に市民を危険にさらし、戦時国際法に違反するパターンを記録した」と述べた上で、「自衛する側にいるということは、ウクライナ軍が国際人道法を順守しなければならないという責務を免除するものではない」と指摘した。>
ゼレンスキー氏はこのアムネスティの報告・指摘を「責任転嫁」と非難しました。しかし、「アムネスティは、自衛する側のこうした戦術は「ロシア側の無差別的な攻撃を正当化するものではない」として」(同AFP)、ロシアの無差別攻撃を免罪してはいません。自らの国際人道法違反を棚に上げてアムネスティを非難して「責任転嫁」しているのはゼレンスキー氏の方です。
ウクライナ軍の国際人道法違反(「人間の盾」)が告発されたのはこれが初めてではありません。
国連人権高等弁務官は7月に公表した「報告書(2・24~5・15)」(写真右)で、ウクライナ軍が「国際人道法を守らなかった可能性がある」と指摘しました(7月15日のブログ参照)。
ウクライナ政府・軍は国連から告発・警告を受けたにもかかわらず、その後も「人間の盾」を続けていたわけです。
この根源は、ゼレンスキー政権が「徹底抗戦」の方針を取り続けていることにあります。戦争は双方に国際法違反を犯させます。犠牲になるのは常に市民です。
ゼレンスキー氏は「徹底抗戦」をやめ、直ちに停戦・和平の席につくべきです。
停戦はけっしてロシアへの降伏ではありません。ロシアの「戦争犯罪」を免罪することでもありません。「停戦は、降伏と明確に異なる。戦争の結果とは無関係だ。領土・帰属問題の決着や戦争犯罪の取り扱いは、むしろ戦闘行為が中断されてから時間を掛けて議論すべき」(伊勢崎賢治東京外大教授、5月20日付琉球新報、5月21日のブログ参照)なのです。