韓国紙・ハンギョレ新聞(日本語電子版)は23日付で、「尹大統領、韓日の野党を比較して「恥ずかしかった」…なぜ?」と題する記事を掲載しました。抜粋します。
< 尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が「韓日関係改善のために韓国野党を自分たちが説得する」という日本の野党関係者の発言を紹介し、「そのような話を聞いて恥ずかしかった」と述べたことが22日に分かった。日本側の要求を一方的に受け入れた韓日首脳会談に対して「屈辱外交」との批判が相次いでいることを受け、日本の野党の反応を根拠に韓国野党に対する不満を表明したのだ。
尹大統領は非公開発言で、訪日期間中の17日に東京で立憲民主党の指導部に会ったことに言及した。その席で泉健太代表は「韓国の野党議員と会い、韓日の将来の協力関係のために協調してくれるよう自分たちが説得する」と述べたという。同党の憲法調査会の中川正春会長も「近く訪韓し、韓国の野党議員に会い、未来に向けた韓日関係を共に作るよう説得する」と述べたという。
尹大統領は、「日本は与野党関係なく国のためにみんなでやると言っていた。恥ずかしかった」と語ったという。尹大統領は同日、与党「国民の力」の委員60人あまりとの非公開昼食会でも「日本は国益を前にして与野党が一つだった」とし、韓国野党に対する不満を吐露したと出席者たちは語った。>
尹大統領は17日に泉代表と会談しています(写真左)。その場で泉氏は、強制動員(「元徴用工」)被害者に対する「第三者(肩代わり)弁済」を強く批判している韓国野党に対し、「自分たちが説得する」と述べたというのです。それを聞いた尹氏は、韓国では野党の反対が強いことが「恥ずかしい」とし、日本は「国益を前にして与野党が一つだった」と感心したというのです。
尹氏は複数の場所で同様の発言をしていますから、その内容は事実だと思われます。もし事実でないなら、大統領が他国の野党党首の発言を偽ったことになり、それ自体重大な国際問題です。
尹氏が暴露した泉氏や中川氏の発言には重大な問題がいくつもあります。
第1に、強制動員被害者に対する賠償問題は、韓国で国を二分する大問題になっています。25日もソウルで尹大統領を批判する2万人集会が開かれました(写真右)。その政治的争点について、大統領を批判している野党側を「自分たちが説得する」と当の大統領に表明するとは、内政干渉も甚だしいということです。
第2に、泉氏が野党を「説得」すると言っているのは、強制動員被害者に対する「第三者弁済」で、それ自体、韓国の大陪審(最高裁)判決に反して被害者の権利と尊厳を蹂躙するとんでもないものだということです。
第3に、泉氏の発言は日本にとっても重要な政治課題について、岸田政権と同じ立場に立つばかりか、政権を助けようとするもので、尹氏が羨ましがったように、まさに「国益を前にして与野党が一つ」の状態、すなわち翼賛体制を示すものに他ならないことです。
こうした泉氏の発言は、個人的な突飛なものではありません。
例えば、同党の岡田克也幹事長も、朝日新聞のインタビューで「立憲はリベラルから中道に立ち位置を移そうとしているように見える」という質問に対し、「当然のことだと思います。政権交代を目指さないなら別です」と述べ(25日付朝日新聞デジタル)、「政権交代」を大義名分に「中道に立ち位置を移す」すなわち政権側にすり寄ることを「当然のこと」と明言しています。
国家が戦争へ突き進むとき、政党政治・議会政治が機能不全に陥り、翼賛体制が強まることは、歴史が教えているところです。「野党第1党」のこの姿は、日本が今その危険な段階に入っていることをはっきり示しています。