アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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汚染水放出・国際研究は「放射線に安全基準なし」

2023年08月24日 | 原発・放射能と政治・社会
   

 「関係者の理解なしに、いかなる処分もしない」という公約を公然と踏みにじって、岸田・自民党政権は24日、核汚染水を海洋放出しようとしています。「自国の漁業者や周辺国の反対を押し切り、汚染水放出という「レッドライン」をついに越える」(22日付ハンギョレ新聞日本語電子版)のです。

 岸田政権は、汚染水は「国際的な安全基準に合致する」とするIAEA(国際原子力機関)の「包括報告書」(7月4日)を“錦の御旗”にしていますが、IAEA自体が「原発拡大」を優先しており、その公平性に国際的疑念が向けられています(7月6日のブログ参照)。

 加えて、岸田政権やIAEAが唱える「国際的安全基準」なるものが絶対的なものでなく、「放射線に安全基準はない」とする国際共同研究の結果があることが分かりました。
 以下、21日付ハンギョレ新聞日本語電子版から抜粋します(太字は私)。

< 放射線作業従事者に認められている年間放射線被ばく量の半分にも満たなくても、被ばくによってがん発症による死亡リスクは高まりうる。このような国際共同研究の結果が発表された。

 国際がん研究機関(IARC)、米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)、フランスの放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)などの研究者で構成された国際共同研究チームは先日、米国・フランス・英国の原子力産業従事者に対する調査の結果を発表した。これまでに行われた放射能の健康への影響を見る疫学調査の中で最大規模。

 この研究で特に注目されるのは、ごくわずかな累積線量であってもがん発生リスクを高めるということだ。

 問題は、原発産業界が固く信じている線量限度は、主に第2次世界大戦中に日本に落とされた原子爆弾の生存者を対象とした研究にもとづいて設定されているということだ。これらの生存者の放射線被ばくはほとんどが原爆の爆発から1秒以内のものであり、低線量で長期間にわたって被ばくする原発労働者や一般人の状況とは異なる。

 研究チームはこの論文で「私たちの研究は、低い線量の放射線にさらされる労働者たちの中からは、単位被ばく量当たりの固形がん発症リスクが低下する証拠を発見できなかった」と述べた。低線量が累積しても発がんリスクはあるということだ。

 ソウル大学医学部のペク・トミョン名誉教授(元ソウル大学保健大学院長)は、「福島第一原発の汚染水の放出による環境放射線の問題について、『低線量は大丈夫だ』と言ってはならないというもう一つの根拠になりうる研究」だと語った。>

 
 核汚染水は、いくらALPS(多核種除去設備)を通してもトリチウムをはじめ多くの放射性物質は残ります。政府はそれが「安全基準以下」だから安全・安心だと喧伝しますが、その「安全基準」自体がきわめて不確かで、事実上「安全基準」はあり得ないという注目すべき研究結果です。

 政府は海洋放出以外に手段がないと言いますが、それはウソです。放出に反対する多くの市民は「地下埋蔵」を主張しています。政府はなぜその声に耳を貸さないのか。

 政府は2016年に①海洋放出②地下埋蔵③大気放出の3手段を検討したことがあります。その結果、「海に放出すれば34億円程度で済むが、大気放出には349億円、埋設には2431億円かかる」と計算しました(6月1日付ハンギョレ新聞)。海洋放出にこだわるのはそれが安上がりだからです。

 上記の研究結果からも、核汚染水を海に流すことは絶対に許せません。これは漁業関係者だけでなく、放射能被害の拡散に反対するすべての市民の声です。
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