アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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注目されるキッシンジャー氏の停戦・和平提案

2023年01月28日 | 国家と戦争
   

 アメリカ、ドイツが相次いで最新鋭戦車をウクライナに供与することを決め、ゼレンスキー大統領は「近代的な戦車連合が実現した」と歓迎しました(25日)。ロシアは強く反発しており、戦争の激戦化・長期化が避けられない状況になっています。

 NHKはじめ日本のメディアは米欧(NATO)諸国の戦車供与を評価する報道を続けています。まるでロシア以外の世界中が戦車供与を支持しているかのような報道ですが、果たしてそうでしょうか。

 きわめて限定された(偏向した)報道の中からも、「早期停戦・和平」を主張する人々が存在していることはうかがえます。戦車供与に多数が反対したドイツ市民(24日のブログ参照)のほか、国際会議で「停戦・和平」を主張した識者もいます。

 先にスイスで行われたダボス会議(世界経済フォーラム年次総会、18日)。ゼレンスキー氏は米欧諸国に「さらなる武器供与」を要求しましたが(写真右)、同じ会議で、国際政治学者のキッシンジャー氏(元米大統領補佐官)は、「戦争を終わらせる道筋を探ることを優先すべきだ」として、こう主張しました。

「戦闘を継続しつつも、ロシアと対話を行い、軍事侵攻前の国境線まで(戦線を)押し返したら停戦すべきだと信じている」「侵攻前の国境線での停戦が望ましいあり方だという考えは変わらない。これは戦いのさらなる拡大やこれ以上の被害を防ぐためのプロセスだ」(写真左・中、20日のNHK国際報道2023)

 この発言で注目されるのは、「軍事侵攻前の国境線」を停戦ラインとしていることです。ゼレンスキー氏は、「クリミア半島の奪還」まで停戦協議には応じないとしており、キッシンジャー氏の停戦提案はゼレンスキー氏の主張を否定したものといえます。

 クリミア半島が親ロシア的になっているのは、「マイダン革命(クーデター)」(2014年)に端を発したものですが、ゼレンスキー氏はNATO諸国の軍事支援によってこの際そのクリミア半島も奪還すべきだという立場です。

 「マイダン革命(クーデター)」にアメリカが深くかかわっていたことは、オバマ大統領(当時)自身が公に認めています(12月15日などのブログ参照)。
 その舞台裏を熟知しているキッシンジャー氏がクリミア半島の奪還を主張するゼレンスキー氏に対し、昨年2・24の軍事侵攻前の国境線を停戦ラインとすべきだとしていることは重要です。

 孫崎享氏(元外務省国際情報局長)は、「武器と資金で大幅にウクライナを支援している米国の中ですら和平の提言を行っている」とし、「キッシンジャーはその中の最も有力な人物である」(18日付琉球新報)としてキッシンジャー氏に注目しています。

 日本のマスメディアはほとんど報道しませんが、「停戦・和平」を主張している学者・識者はキッシンジャー氏だけではないはずです。そうした主張を切り捨てず正当に報じるのは、メディアの基本的任務です。戦闘を煽る報道が戦争を長期化させ、破滅的被害を広げた歴史を想起すべきです。

 同時に、平和学、国際政治学はじめあらゆる分野の学者・識者・外交官が、いまこそ「早期停戦・和平」へ向けた見解・提案を声を大にして発信することが強く期待されています。
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