アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

国連「ホロコーストデー」と強制動員問題

2023年01月26日 | 侵略戦争・植民地支配の加害責任
  
 

 あす1月27日は国連「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」です。アウシュビッツ強制収容所がソ連軍によって解放された日(1945年1月27日)にちなんで、2005年11月の国連総会で制定されました。

 これに関連して中国新聞(23日付)は、ザクセンハウゼン強制収容所跡地(写真右=同紙)でガイドを務める中村美耶さん(35)のインタビュー(オンライン)を載せました。
 記者の「ドイツは強制収容所関係者の訴追と責任追及も続けており、自国の負の歴史と誠実に向き合っているように見えます」という問いかけに、中村さんはこう答えました(太字は私)。

「最初からそうだったのではない。主導してきたのは市民だ。被害者に代わって議会に働きかけると、その声を政治家が拾い上げ、メディアが報道する。ユダヤ人だけでなく同性愛者たちもホロコーストの被害者だと政府が認めたのは後のことで、「窃盗などの常習者」らにも広げたのは2020年。強制収容・強制労働の全容を究明する努力は続いている。
 一人一人が自国の歴史を直視することが大切だ。ドイツ政府や市民の姿勢を知れば、日本の人たちは背を押された気持ちになるのではないか」

 この言葉ですぐに想起されたのは、朝鮮植民地支配時代に日本に強制連行し過酷な労働をさせた強制動員(「徴用工」)問題です。

 強制動員の被害者に対しては、韓国の最高裁(大法院)が日本の加害企業(日本製鉄、三菱重工)に賠償を命じる判決(2018年)を下していますが、日本政府と当該企業はこれを無視し続けています。

 これに対し、韓国・尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は今月12日、公開討論会を開き、日本企業に代わって韓国政府傘下の財団が賠償を肩代わりする案(併存的債務引受案)を提示(写真左)。被害者や支援団体から、「日本の責任を完全に免責することになる」(民族問題研究所・キム・ヨンファン対外協力室長、13日付ハンギョレ新聞)と批判が巻き起こっています。

 岸田政権は、アメリカが進める日・米・韓軍事一体化に追随する思惑もあり、韓国政府の肩代わり案に同調する動きをみせています。

 強制動員問題は、戦時性奴隷(「従軍慰安婦」)問題とともに、日本の植民地支配の加害責任を示す代表例です。それを日本は、謝罪も賠償もしないまま、被害者の訴えを抑え込むという新たな加害行為によって終止符を打とうとしているのです。

 問題は日本政府だけではありません。重大なのは日本の「一般市民」の多くが、この問題の経過や本質を知らない、あるいは関心すら持っていないとみられることです。それには政権に翼賛的なメディアの責任が小さくありません。

 市民がこの問題に無関心であったり、日本政府の姿勢を容認したりすることは、自国の加害の歴史から目を逸らすことに他なりません。
 それは、中村さんが紹介したドイツの市民やメディアの態度とまったく正反対だと言わねばなりません。
 中村さんは「ドイツ政府や市民の姿勢を知れば、日本の人たちは背を押された気持ちになるのではないか」と期待を込めて述べていますが、「背を押された」と感じるか、「自分には関係ない」と思うか。人として大きな分かれ道です。
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