アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

コロナワクチンと現代の植民地主義

2021年02月04日 | コロナ禍と政治・社会

    

 菅義偉首相は2日の記者会見で、コロナワクチンについて「今月中旬の開始をめざす」と述べました。低落する支持率の回復と東京五輪強行のために、ワクチン接種に前のめりです。
 コロナワクチンには、安全性、体制(人員)確保などいくつもの課題がありますが、忘れてならないのは、「先進国」と「途上国」の格差問題です。

 韓国のハンギョレ新聞(日本語版)は、<「ワクチン自国第一主義」乗り越える国際協力が切実に求められる>と題した「社説」(1日付)で、こう主張しています。

 「世界的な感染症を克服するためには国際協力が欠かせない。ところが今、先進国のワクチン確保競争はこれに逆行している」
 「EUのワクチン域外輸出規制方針は…根本的には「我々がワクチンを接種しないうちは、他の国には与えない」という国粋主義的発想にほかならない。似たような現象は「富裕国」を中心に広範に起きている。世界人口の16%がワクチンの全供給量の60%を確保(している)…アフリカや中南米の貧しい国々は徹底して疎外されている。これでは、貧しい国の国民は検証されていない実験用ワクチンを接種せざるを得なくなる」

 韓国政府のカン・ギョンファ外交部長官は1月29日の世界経済フォーラム(オンライン)で、「国際社会は、連帯と協力の価値に基づいた多国間主義を強化しなければならない。特にこのところ数カ国で見られるワクチン自国第一主義を止め、ワクチンおよび治療薬の普遍的かつ公平な普及の支援のために努力すべきだ」(1日付ハンギョレ新聞、写真中も)と述べました。

 韓国の政府やメディアのこうした主張に対し、日本はどうでしょうか。

 朝日新聞は<ワクチン態勢 自治体との連携を密に>と題した社説(1月30日付)でこう主張しています。
 「何より大切なのは、いつどれだけのワクチンを供給できるかの情報を、正しく速やかに市町村に届けることだ」「一足先に接種が始まった欧米では供給の遅れが伝えられる。…円滑に接種できる環境を整えなければならない」。

 毎日新聞も<ワクチンの接種体制 正しい情報提供が不可欠>と題した社説(1月25日付)で、「数の確保と公平な分配、接種の着実な実施は国の責務だ」「問題点や目詰まりの解消を現場に丸投げし、国民の命を危険にさらすことは、決して許されない」。

 いずれも「国民」への接種に支障がないよう求めるだけで、「国際協力」の視点は皆無です。ワクチンを支持率回復と東京五輪強行のテコにしようとしている菅政権と、日本の大手メディアの内向き論説。いずれも韓国との違いは歴然です。

 「富裕国」が自国のためにワクチンを占有し、結果、「途上国」は、ワクチンが不足するか、安全性の不確かなものしか供給されない。それによって命が脅かされる。これはコロナ禍が可視化した現代の植民地主義といえるのではないでしょうか。

 「文明、責任、連帯といった私たちの理念は、新型コロナから降りかかる経済・社会的影響によって試練に直面している」。こう指摘する元ノルウェー首相・元WHO事務局長グロ・ブルントラントさんは、ワクチンについてもこう述べています。

 「ワクチンが開発されたら、全ての国で入手可能にすることが欠かせない。各国の指導者と市民は世界が重大な危機の中にあり、多国間主義のシステムが1945年以来最も深刻な脅威にさらされていることを自覚する必要がある」(2020年9月20日付中国新聞)

 コロナワクチンは、現代の植民地主義を克服し、真の国際連帯を築くかどうかの試金石です。

 目を隣国に向ければ、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、「発展途上国へのワクチンの普及を進める国際組織「Gaviワクチンアライアンス」に対し、ワクチンの供給を要請」(1月6日付共同)しました。「ワクチンや治療薬が普及するまで(コロナ流入阻止のため)国境封鎖を続ける構えだが、経済への打撃は深刻化しているとみられる」(同)。

 日本は朝鮮に対する理不尽な「経済制裁」を直ちに解除するとともに、ワクチンの供給に積極的に協力すべきです。
 自国(自分)のことだけでなく、世界の国々(人々)、とりわけ隣国(隣人)、しかも植民地支配の歴史的責任のある隣国・隣人の窮状に目を向けることは、私たち日本市民の責任ではないでしょうか。


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