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角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

これこそご縁。

2015年04月07日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き[四阡四百円]
黒基調のベース生地には、まずひとつ同系色を組み合わせることにしています。明るく可愛らしい草履も角館草履なら、こうしたシックな色調も角館草履に不可欠です。定番配色②「紺の唐草に紺」は男性を主に意識した配色ですが、女性にお選びがないわけではありません。昨日の「今日の草履」のような赤基調は比較的ご年配の女性が、こうしたシックな色調はお若い女性に多いのも経験則でしょうか。平生地はこちらです。




草履実演が「ご縁」で成り立っている話題はたびたび取り上げています。中で「これこそご縁」という逸話がときに生まれるんですね。三日ほど前のこと、横浜市からお越しのご夫婦がお立ち寄りでした。ご主人は展示された草履を「綺麗なものですね~」とご覧でしたが、奥様の様子がちょっと違います。なんと言いますか、頭の中で何かを考え照らし合わせているといった印象でしょうか。そして奥様から発せられた言葉でその意味が分かりました。

『あたし足の具合が悪くて治療に行ってるんです。“浮き指”といって足の指が地面に着いていないらしいんですよ…』

近年メディアにも取り上げられるようになった「浮き指現象」は、奥様の言葉通り歩く際に指が地に触らない症状なんですね。原因の詳細は医師でない私に不案内ですが、おそらく硬い靴とスリッパ生活はその要因に十分考えられると思っています。その症状がいったい何に怖いのか、まず体のバランスをとれなくなるのは間違いないでしょう。足の指が機能していない状態を頭に描いたら、その想像は難くないですよね。

奥様にまずは試し履きをお勧めしました。草履は履くだけで十本の指が地を掴みます。これは試した瞬間に実感されるでしょう。奥様も例外ではなく、スリッパとはまったく次元の違う履き心地に納得されました。その後お帰りになるまで続く奥様の笑顔に、「これこそご縁」を強く感じたものです。実際こうした出会いはこの十一年間で、枚挙に暇がないほど経験しました。

今日秋田市からお越しの女性はこのブログで角館草履を知り、ひざ痛を訴える母上様に履かせてあげたいと思っていたそうです。ひざ痛もまた足指の掴む力が落ちやすいという話を、同じ症状に悩むお客様から聞いたことがあります。それを知った女性は『そうなんですかっ!』と、ご自身の考えが的を射ていたことを知りました。こうしたケースも「これこそご縁」と思うわけです。

そしてこちらの女性とのご縁を感じたもうひとつの話題は、「劇団わらび座」です。母上様共々わらび座の舞台に夢中で、昨年の「げんない ~直武を育てた男~」は数回観劇に訪れたとのこと。私も三度訪れましたから、その話の合うことといったらなかったですよ。母上様はご自分がもっと若かったら、役者として参加したかったとまで話しているそうです。女性ご自身も、劇団研究生の年齢制限に引っかかることを悔やんでいました。

「げんない」に出演していた顔ぶれで、角館草履を楽屋履きにされている役者さんが何人かいます。母上様お気に入りの役者さんも履いていることを伝えると、『そうなんですかっ、同じ草履って教えればそれが一番喜ぶかもしれません!』。
母上様もきっと、「これこそご縁」を感じてくださるでしょう。
コメント (2)
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