角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

価値ある贅沢。

2012年07月08日 | 実演日記




今日の草履は、彩シリーズ22cm土踏まず付き〔四阡四百円〕
淡いピンク同士の組み合わせは、ほんわか優しい雰囲気に仕上がります。たとえばショッキングピンクで編めば、それはそれで楽しい草履になるでしょう。でもそれが「癒し」になるかと言えば、私はやっぱり「今日の草履」のような色調を編みたいわけです。

角館に好天が戻りました。同時に暑さも戻り、散策のお客様は汗を拭き拭き入って見えます。関東や関西からのお客様は、北日本を涼しいと思い込んでいますから、なおさら暑く感じるのかもしれません。

秋田市からお越しのおばさま四人プチ旅行。うちのおひとりが角館草履を気に入ってくださったのですが、ご希望の定番配色①に22cmが完売しておりました。おばさまは、『明日も寄られるんだけど、それまで作れない?』。

角館や田沢湖に宿泊予定の、主に県外からのお客様にはよくあるんです。でもおばさま四人は秋田市にお住まいですから、『自宅へは戻らないんですか?』と訊いてみました。すると、『今夜は角館の“侘桜”に泊まるのよ。明日もこのあたりをぶらぶらするから、もし作られたらね』。
明日の午前11時の完成で承りました。

確かに県内にお住まいだからといって、角館に宿泊しないという話はありませんよね。実際そうしたお客様を複数存じ上げています。
今年のお正月からご愛用者となり、角館草履に高い評価をくださっている秋田市の男性も、最初の出会いは「侘桜」に宿泊された翌日でした。草履以前に、その「侘桜」に最上級の評価をされていましたね。

侘桜(わびざくら)がオープンした当初、その宿泊費に地元民はため息をついたものです。あえて言葉にすれば、『そんた山奥サ大金払って泊まる人なんているもんだおご?』といった具合ですね。
私はそういう心配をまるでしませんでした。世の中の人々は求めるものが皆違います。山奥で人の話す声など聞こえない、外に見える灯りは月と星だけ、源泉掛け流しの湯に浸かり、極上の料理を食す。

肝心なのは「金額に値するか」だけですから、それが認められたなら大勢の人がやってくると思いますね。私はそうした「一見贅沢実は価値あり」が、もっともっと角館にあればいいと思っています。
明日草履のお引取りに見えるおばさま四人から、きっと大満足の声が聞かれるでしょう。
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