角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

華麗なる転身。

2011年03月24日 | 製作日記


今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡円〕
ピンク基調の豪華な桜プリントをベースに、エンジを三箇所に配してみました。
艶やかで華やかな桜プリントですね。今日の角館も雪が混じる冷たい風が吹いています。春を待ち焦がれるこのときに、「今日の草履」が恨めしくも感じますよ。

『すべて無くなっちゃった』。東日本大震災の津波に家を流されてしまった被災者が、何人かこの言葉を使っていました。「すべて」の中にはいろいろな意味が含まれていて、それは家族であったり家であったり、現金や貴金属のような資産であったりするでしょう。もしかしたらそういう目に見えるものばかりでなく、ふるさとのにおいや遠い想い出だって含まれるでしょうね。
同時にもうひとつ思うのは、「仕事」なんですね。いわゆる生業としての仕事。その業種や年齢によっては、やり直しが極めて困難な場合もあるんじゃないでしょうか。

最後まで決まっていなかった長女の進路が決まりました。青森市の短大に進みます。昨日学校を訪ね、アパートも決めてきました。そのアパートの経営者である社長さんがとても面白い人で、こういうのもなにかの縁かなぁと感じています。
社長さんは電子部品の工場を経営しているのですが、近年の海外生産品に価格面で対抗できず、会社としての行く末を案じていたそうです。

そんなとき思いついたのが学生向けのアパート経営。会社の敷地面積に充分なゆとりがあったことと、近くに大学・短大・専門学校等が点在する立地に目をつけたわけですね。
社長さん曰く、『ウチはねぇ、ゼッタイ不動産屋さんと組まないの。細かいサービスも私とカミさんがすることで、すぐに対応できるし余分な費用も要らないんですよっ』。
説明を20分ほど聞いているだけでも、社長さんがいかに今の仕事に楽しさとやりがいを感じているかが分かりました。まさに“華麗なる転身”と言えるんじゃないですかね。

角館草履の公開実演では、『どうして草履を編むようになったの?』の質問がたびたびあります。トップページのよくある質問⑦にも記載していますが、『へぇ~、華麗なる転身だねっ』という言葉を、これまで何度か聞かされました。「華麗」なんて言葉が私に似合うと思えませんし、草履職人という職業も「華麗」とはちょっと縁遠い印象でしょうか。
ただ、「やりがいを持って楽しく」がその評価を得られたならば、それはそれでありがたく頂戴して良い言葉かもしれません。

東日本大震災で職を失くし、復興と共に新たな生業を求める方々におかれましては、やがて“華麗なる転身”と言われる日が訪れますことを強く願いたいと思います。

コメント
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