角館草履の『実演日記』

〓袖すり合うも多生の縁〓
草履実演での日々の出会いには、互いに何かしらの意味があるのでしょう。さて、今日の出会いは…。

よくあるご質問⑦

2007年12月20日 | 製作日記
Q. なんでまたこの草履を編むようになったの?

ゆっくりじっくり実演をご覧の方や、二度目、三度目の方に多く訊かれます。そのたびに『話すと長くなりますよ~』と言って笑うんですが、親しみを感じてくださった方に多いですから、とっても興味深そうに聞いてくださいますね。

全国の道の駅やドライブイン、あるいはお土産屋さん等で見かける「布草履」。私がこれをはじめて見たのは2003年、カミさんと二人で“市場調査”に出かけたとある大型観光施設でした。市場調査と言うと少々大げさですが、当時私は観光土産品の卸売りを生業の一部としていて、取引のない店舗にもときどき出掛けていたんです。

もっともそのとき初めて見たのは私だけで、カミさんはその以前から「布草履」の存在を知っていました。そのときも、『これ、これっ』と言ってカミさんに見せられたんです。その布草履を見て、すぐに『面白い!』と思いました。なぜそう思えたのか、それには理由があるんです。

角館の伝統工芸「樺細工」の販売に携わったのは、18歳と8ヶ月のときからです。15年間のサラリーマン生活を経て独立した後も、樺細工の販売は私の商いの主力でした。
延べ26年間樺細工に携わりその盛衰を見てきましたが、樺細工のような「和」を代表する産業が斜陽と云われるようになったひとつの理由に、日本住宅の変遷が挙げられます。

畳敷きの和室が激減し、多くがフローリングの洋間になりました。洋間にも合う商品開発は避けて通れず、確かに数々の新商品を発売しました。それでも時代に追いつけるほど甘いものではなかったですね。
フローリング仕様になんの恨みもありませんが、こうした生活様式が私たちの「商い」を変えて行った事実は、頭の隅にしっかりあったと思うんです。

そんなところに出会った布草履。洋間に使う「和」、和室に使わない「和」の存在は、『面白いっ』と言わしめるに十分な要素がありました。『樺細工の敵討ちはこれだっ』とまでは思わないにしても、それに近い感情が芽生えましたね。
ただそのときの草履を見て、『これではダメだ』と思ったのも事実でした。完成度が低く、お叱りを受ける覚悟で例えるなら、それは「子どもの工作」に近いものだったんです。

2007年12月9日のブログでも触れていますが、「角館で産するものはほかのどこにもない作品」、これは私の中で絶対条件に近いものがあります。つまりそれは、全国から角館を目指す方々の、密かながら大きな期待なんですね。
大量生産の必要はなく、珍しくも確かな品物を求める気持ちは、漠然とであっても多くの方々がお持ちです。これは公開実演をはじめてから確信になってます。

まずは「ワラ草履」を編めなければ先に進めないと思った私は、カミさんとふたりで雄和町(現秋田市)のワラ細工同好会を訪ねました。子どもに体験させようというのではなく、おとなが自分で編み方を覚えたいとする私たち夫婦に、同好会のみなさんは本当に親切に二日間を費やしてくれました。
ただその帰路に思ったのは、「ワラでは無理」でした。ナニかに布を巻くことはイメージ出来てても、ワラは大量に収穫し保管するのが困難です。そしてワラ細工の現場に二日間滞在して、その「ゴミ」には閉口しましたね。気管支の弱い人は近づかないほうがいいくらい、粉末状のワラゴミが舞い上がるんです。

「いったいナニに巻けば良いのか」、仕事をしながらそればかりを考える日が続きました。苦手な山にも出向き、自然の中にヒントがないか探した日もありました。
完全に行く手を阻まれた気分でいたとき、ふと思いついたのが「イ草」だったんです。なにかが目に入って思いついたんじゃないですね、表現が難しいのですが、とにかく「ふと」なんです。道が開けるときというのは、案外そんなものかも知れません。
すぐに知り合いの畳屋さんへ行って、『捨てるものでいいから…』と言ってもらって来たイ草で編んでみました。その堅さ、足触りが格別なんです、想像をはるかに超えるものでした。

畳屋さんから回収出来るイ草の量は限られていますから、その後間もなく熊本県八代市のイ草農家さんとご縁が出来ました。現在も使用している「すっぴんイ草」は、無着色・無農薬で栽培しているこだわりのイ草です。特筆すべきはその香りで、「ドライフラワー」や「芳香剤」にも利用されているほどです。

考案から現在の進歩に至るまで、確かに私自身の努力もあったでしょう。でも「角館草履」が世に生まれたことに、人様とのご縁を感じずにはいられないんですね。
私が実演席で大切にしたい「縁」は、こうした背景があったからとも思っています。
ジャンル:
ウェブログ
コメント (2)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« よくあるご質問⑥ | トップ | よくあるご質問⑧ »
最近の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじまり (mage)
2007-12-21 16:22:00
そうですかあ~。
こんな思いと出会いがあったんですね。
道が開けるときの「ふと」は分かる気がします。
「自然と」という言葉もしっくりくるかもしれませんね。
いつしかここでこれをやっている。
今の僕も同じです。

その、秘めた情熱というか反逆というか、
なんか熱い感じっていいですね。
口には出さないけど、
「くそ~!」という原動力はあたんでしょうね。
あ~、なるほど~!とジ~ンとしています。

洋間に使う「和」、
和室に使わない「和」の存在。
なるほど・・・。
そこから来ているんですか。

続けることで、より強い「角館の」を作ってください。
その歴史を僕はここから見て行きたいと思います。
「あの角館の角館草履は、こういう始まりなんだよ・・・、
そしてね、こういう職人さんがいてその職人さんが・・・」
なんていろんな人に語って行きたいです。

かぐだでぞうり~!
かくのだてにありぃ~!
人の縁 (草履職人)
2007-12-21 17:21:56
まずはキャッチコピーの変更に当たり、ご快諾を感謝いたします。「かぐだで草履」だと字数も合って良かったです(笑)。

「反逆」というほど大げさじゃないんですけどね、でもどこかで「逆転」くらいは狙っていたかも知れません(苦笑)。

「角館草履」が世に生まれるまでの「縁」はブログの通りなんですが、その後今日までの「縁」も大きいんですよ。もちろんmageさんも、その大きな「縁」のおひとりです。いつかお逢い出来る日を楽しみにしてますからね~!

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。