世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

ヒマワリ柄のあのコ

2018年10月29日 22時21分49秒 | Weblog
昨日、立川に向かう際、停車した国立駅で思い出が脳裏をかすんだ。

小学校5年生の夏、転校生の女のコがやってきた。
東京からの転校生だということを担任の福田先生から聞かされたとき、クラスに激震が走った。
クラスの半数ぐらいが東京に行ったことがないコたちで構成されていたであろう5年2組。
我々のクラスに、都会の代名詞である「東京」から転校生がやってくるということはリクルート事件よりも一大ニュースだった。
果たして、夏休み明け、そのコはやってきた。
「国立第〇から来ました〇〇です」

夏の爽やかな風のようなそのコは、ヒマワリの絵柄が入ったスカートをお召だった。
当時はバブルの真っ最中。ファッションも活気があふれていて、ヒマワリの絵柄が流行っていた。
でも彼女が履いているスカートはしまむらでは売っていない、ちょっとタイトな感じで洒落ていた。

細面の顔に少し高めの鼻、直毛の髪は肩下で揺れていた。
東京の小学生、キターという空気が一瞬にして教室を包んだ。
彼女の爪先から頭のてっぺんまで、とても洗練されているということは子供心に敏感に察知した。

休み時間、恐る恐る声をかけてみた。
東京の「くにたち」というところからやってきたこと。
ヴァイオリンを習っていること。
転勤族だということ。
そんなことを屈託なく話してくれた。

何より我々を驚かせたのは、彼女が前の学校で指示された宿題をきちんと全部やっていたことだ。
担任から担任への引継ぎ云々があったんだろうが、私だったらサボっちゃうかも、なんて思いながら彼女の大学ノート5冊を背後の席からチラチラ見ていた。

「あのコ、『東京では~だった』っていう話多くない?」
とクラスの女子が彼女のことをそうささやき始めたのは冬が始まる前、ちょうどこの時期だったと思う。
私は別にそう思わなかったから首を縦に振らなかった。なんだか嫌だった。
ただ彼女の都会っぽい物言いが、受け入れられない人もいるということを知った。

それから恙なく冬になり、昭和が終わり、平成になった。
6年生でクラス替えがあり、彼女とはクラスが別になった。
中学も同じだったけれども、廊下ですれ違っても反応すらしない関係になった(11クラスもあったので)。

転校してきたあの夏の日、屈託なく笑っていたけれども、クラス中の誰よりも緊張していたのは彼女だったはず。
昨日、国立駅を見て、そう思った。

ふと、彼女のスカートのヒマワリ柄が目に浮かんで、過ぎていくホームに消えていった。





昨日、昭和記念公園でもらってきたコスモス。
萎れかけていてもうダメだと思っていたのだが、なんとか復活してくれた。
強い子ね。ありがとう。












この記事についてブログを書く
« 秋、大収穫 | トップ | 魂が抜き取られた »
最新の画像もっと見る