世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

押入れ、記憶の片鱗

2016年06月01日 22時26分03秒 | Weblog
「しつけ」という名目で山に子供を置き去りにしたニュース。

真っ先に思い出すのは春に読んだ「坂の途中の家」(角田光代)のワンシーン。
主人公・里沙子の娘・文香(2歳)が駄々をこねて道端にしゃがみ込む。
「帰ろうよ」という再三の促しに応じない文香を道端に放置し、角を曲がったところから文香の様子を見てるのだが、文香に近寄る男性の影が。

それは帰宅途中の夫・陽一郎だった。

「違うのよ」
と里沙子は咄嗟に夫に近づいて言うのだが、陽一郎は「何?何したんだ!」と絞り出すような声で問い詰める。
その晩の夕食中も陽一郎は里沙子にモラハラめいたことをネチネチと言う。
やがて媚を売るように文香に語りかけ、娘と風呂に入る陽一郎。

そんなやるせないシーン(190ページ目あたり)を思い出して、読み返してしまった。

文香のオムツがにおえば、里沙子に文香を無言で差し出したり、上辺だけのイクメンっぷり。
「裁判員、補欠なんだろ。大変だったらやめさせて貰えば?」などと、里沙子のプライドを傷つける言い方。
陽一郎、読んでいて腹が立つ。

でも最後は希望を与える終着点に読者を導くので、角田光代って、本当にすごい。



山に置き去りにはされなかったが、幼少期、私は押入れによく収納された。
今となっては暗闇に放置されるのも悪くは無いと思えるのだが、当時はまだ3歳頃だったので、暗闇というか非日常が怖かった。

引っ越す前の借家の家。
ぎゃんぎゃん泣く自分の声が、紙でできた押入れの扉を振動させて暗闇にこだましていたのを覚えている。
鍵はかかっていなかったが自ら脱出すると母に怒られるのでできなかった。
近所に住んでいたけいこちゃんという女の子が遊びに来るも、「亮ちゃん、今、悪さをして押入れなの」とけいこちゃんに私の不在理由を述べる母の声。
その後どうなったかは覚えていないが、恐らく、母が押入れを開けてくれて、私はけいこちゃんと遊んだのだと思う。

一連のニュースで、そんなことを思い出した。
30年以上も前のことなのに、記憶の片鱗は風化しない。


今日の昼休みの喫煙所でやはりこの置き去り事件の話しになったのだが、N課長が「俺も昔、家族で海に行ったとき。言うことを聞かなかったら車から下ろされた」と話していた。




今日から6月。
湿度が低くて過ごしやすかった。





月初で忙しかったが、進捗状況はよかったと思う。

夏バテ防止で飲み始めた漢方薬「清暑益気湯」はまだ効果は感じられない。
どうなることやら。



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