晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジョー・R・ランズデール  『ボトムズ』

2009-03-12 | 海外作家 ラ・ワ
この作品はアメリカ探偵作家クラブの賞を受賞したというのですが、
過去に同賞を受賞した某作品を読んでガッカリした記憶が残っていて、
まあそんなに期待せずに読みはじめたのですが、これがまた面白く、
あっという間に読み終えてしまいました。

話は、1930年代、大恐慌の余波もいまだ冷める兆しも見えない、
アメリカテキサス州東部の小さな村で、地元治安官の息子と娘ふたり
が家近くの森の中で、鉄線で縛り上げられて体じゅうを刺されていた
女性死体を発見。そのとき子どもたちは、この森に住むと言い伝えの
ある、頭に角が生えた、半身山羊で半身人間の「ゴートマン」らしき
ものを見ます。
被害者は黒人女性で(のちに白人と黒人の混血であることが判明する)
アメリカ南部ではいまだに黒人差別意識が高く、村の医者は被害者の
死因を調べることを拒否、仕方なく治安官は黒人しか住んでいない、
隣の村まで出向き、そこの医者に調べてもらうことにします。
死因は判明しても犯人像は憶測しか見えてこず、そうこうしている間
にも、同じような手口で殺された女性が発見されます。
その女性の財布を持っていたということで、治安官は、川岸近くに住む
老黒人の身柄を拘束します。その老黒人は治安官にとって釣りの先生で
あり、心優しく他人のものを盗むような性格ではいのですが、たまたま
川で財布を拾っただけだという言い分を心の半分では信じ、逮捕はせず
に、知り合いの家でかくまってもらうことにします。
この治安官は、黒人蔑視の意識は薄く、また子どもたちにもそう教育し
ます。しかし、この一件が村の白人達の知ることとなり、老黒人は襲わ
れて殺されてしまいます。
その後、村では女性殺害は無くなり、老黒人の仕業であったと村人は思
い、一方、心を痛めた保安官は無気力になってしまい、副業の散髪業も
畑作業もせず、やがて酒に溺れてしまいます。
そんな中、またしても女性の死体が発見されます。その女性は、村に住む
美人の未亡人で、保安官の息子もひそかに憧れを抱きつつ、村の男たちも
好意を寄せていた女性であったのです。
この一連の猟奇殺人の犯人は、子どもたちの見た、森に住む「ゴートマン」
なのか、それとも村の誰かなのか・・・

全体の流れとして、治安官の息子ハリーが過去の記憶を思い起こすように
一人称形式で話は進んでいきます。
家族や愛犬との触れ合い、村の住人、黒人差別が公然とされていた当時の
世相、それから当時のテキサスでは、まだ各家庭に電気が通ってたわけで
はなく、自動車も少なく道路事情も悪く、これらがじつに分かり易く頭の
中に情景が浮かび、とてもていねいな描写をしているなあという印象でした。
コメント
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