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まう一人のメンデルスゾーンがゐた。
姉の、ファニー・メンデルスゾーンだった。
『もう一人のメンデルスゾーン』(山下剛 著/未知谷)
弟を上回る才能を認められながら、ユダヤ人への偏見や差別、高名になってゆく弟への配慮から、ささやかな歌曲集を出版して42歳の若さで逝った姉の姿が美しい。
詳細に調べあげられたその日常も面白かったですが、弟フェーリクスの活動の全体像の中で彼女がどんな関はり方があったのかがより具体的にわかると、嬉しかったのですがー。
小生も以前、モーツアルトの息子たちのその後を調べたことがありました。
ほどほどの音楽家になった弟のクサヴァーよりも、音楽への志を断ち切って、ミラノの役人として静かな生涯を終へた兄のカルルの姿がとても好きでした。
彼の家には、父が使ってゐたハンマー・クラヴィールがあり、時をりそれを弾いてゐた、といふ。