やまがた好日抄

低く暮らし、高く想ふ(byワーズワース)! 
山形の魅力や、日々の関心事を勝手気まま?に…。

シューベルトが愛した曲

2007-10-14 | 音楽を



その短い生涯の晩年、確固たる交響曲作曲家にならうとしたシューベルト。
その彼がこよなく愛した曲が、モーツァルトの40番とベートーヴェンの2番の交響曲だった、といふ。

尊敬をし敬愛をしたベートーヴェンの棺を、泣きながら肩にかけてゐたといふシューベルト。
すでに、そのベートーヴェンは第9を含むすべての交響曲は作曲してをり、若きシューベルトも、実演とまではいかないまでも、ピアノ版あたりで、心の師の強靭な世界は聴き済んでゐたのかもしれません。
それでも、やはり第2番の交響曲を愛してゐたといふのは、如何にも、彼らしさゆゑなのかもしれません。
 
その2曲を聴きました。

モーツァルトは、クーベリック指揮バイエルン放送交響楽団。
クーベリックが遺したモーツァルト晩年の6曲の交響曲はどれも素敵な演奏で、小生の愛聴の演奏でもあります。
弦の数も少なくしてゐるのか、その響きは今頃の季節の空気のやうに、まさに澄み切ってゐます。テンポや演奏のメリハリもこれ見よがしなところがみじんもなく、
左右に配されたヴァイオリン(旧いオーケストラの形)が、凛としたモーツァルトの世界を紡ぎだしてくれます。

ベートーヴェンは、ケンペ指揮ミュンフェン・フィルハーモニーの演奏。
なるほど、その第二楽章を聴くと、シューベルトがこの曲を愛したわけがよくわかります。
そして、ケンペの演奏の何と見事なこと!
確か、ビアホールのやうなところで録音されたものと記憶してゐますが、それゆゑ全体の音の分離は甘いですが、誠実で、けれど切実な演奏に改めて聴き惚れました。
かなり以前、音楽評論家の大木正興氏が「ケンペの演奏を聴くことは、生き方を変へること」のやうなことをいはれてゐました。
大げさなやうでもありますが、しかし、ケンペの演奏には、消え入るやうな弱音や聴く者を驚かすやうな強打を厳しく排し、勁ささへも感じさせる質実さを感じさせます。
また、全曲を聴きなほしたい気持ちにさせてくれました。