rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

Joey Alexanderはすごい!

2016-01-13 01:12:00 | 音楽

今日は雑駁で思いつきの音楽の話で、興味のない人にはつまらないと思います。題名ですが、若い人ならば、すごいではなく「やばい」と言う言葉を使うかもしれません。暮れから正月にかけて私が少しゆっくり過ごす事ができた中で、早朝のFMラジオ番組や、インターネットのWyoming radioのChristian McBride(Dream of youとかI Guess I’ll have to forgetなどの美しい曲を書く私の好きなベーシスト)の番組で紹介されていた、今年のグラミー賞候補になっているという弱冠11歳のインドネシア出身のジャズピアニストJoey Alexander君の話です。私は今回初めて知ったのですが、2年くらい前から一部で話題になっていた少年のようです。当然ピアノが単に上手いというレベルではなく、you tubeでも多数挙げられていますが、既にグループを率いてコンサートを開くレベル、しかも十分にジャズ好きの「うるさ方」達を堪能させる内容なのです。Christian McBrideも絶賛しておりました。

 

軟骨異栄養症で小人症ながら天才と言われたMichel Petruccianiは10歳にして巨匠Oscar Petersonの完全コピーをこなしていたと言われていますが、Alexander君は誰かのコピーではなく、既に彼のジャズを展開しているところがすごいのです。例えばGiant steps( John Coltraneの曲で転調に継ぐ転調で複雑なコード進行であり、1959年のオリジナル版レコーディングではばっちりimprovisationを組み立ててきたコルトレーンが気持ちよく吹きまくっている一方で初見だったというバーチュオーソのピアニスト、トミー・フラナガンはアドリブを最後放棄して和音だけ弾いているなんてゆうクダリもある)ではAlexander君は複雑な楽曲を新たに組み立ててしかも実に切れの良い演奏をしています。この「切れの良い演奏」というのは他の評論家達も一致した感想を述べていて、要はimprovisationの展開に迷いがない、魂の命ずるままに自由に弾いている、という事だと思うのです。外国のジャズ奏者は日本のジャズ奏者が勢いでアドリブを演奏する人も多いと言われる中で、意外にも?細かく内容を組み立ててしつこく練習してから即興(即興とは言えませんが)の部分を演奏すると言われています。スペインのジャズピアニストChano Dominguezは数多くのミュージシャンを採譜してそこから彼独自の展開・世界を築いてゆくと言われていて、マイルスの名曲フラメンコスケッチをオリジナルが激しい踊りの一場面を切り出して来た油絵のような「静の表現」であるのに対して、彼の演奏は再びスペイン人として独自の息吹を入れ「動の表現」にした素晴らしい演奏になっています。

 

Alexander君の話に戻しますが、最近私のブログで取り上げている「生まれ変わり」の概念からすると、彼は優れたjazz pianistの生まれ変わりであり、生まれた時から既にjazzの基本からかなりの熟練した技術に至るまで前世の記憶と能力を持ち続けたまま育って来たということになるかも知れません。Jazz Vocalのバックピアノを勤めている画像もアップされていますが、Vocalistに合わせて曲の魅力を引き出す演奏をするのはピアニストとしてもかなり手練な技を必要とするはずです。それを10歳かそこらで事も無げにやってしまうというのは「天才」というだけでは片付けられない能力だと思います。アメリカ人ではなく、インドネシアに生まれたということも何か意味があるのかも知れません。

 

私も50代後半になって「今回の人生における自分の果たすべき役割は何だったのか」を考えながら生きるようになりましたが、Alexander君は持って生まれたjazz pianoの才能をさらに開花させて人に楽しみを与え、音楽文化を発展させることが天命なのだろうと思います。

 

New Yorkに留学中まだ存命だったMichel Petruccianiの演奏を本場Blue Noteで聴く幸運に恵まれたのですが、がっちりした体型のドラマーの肩にひょいと乗って舞台に現れたPetruccianiが一度鍵盤に向かうと戦慄を覚えるような鬼気迫る演奏を聞かせてくれた事を思い出します。身体に障害を持った短い人生でしたが、彼も天命を意識して毎日を真剣に生きていたのかな、そんな凄さを感じました。2014年のCopenhagen Jazz FestivalにおけるAlexander君の演奏など見るとPetruccianiとは違った物怖じしない凛としたすごさを感じます。Lush Lifeの展開とか10年かそこらの人生でそんなに自信もって行ける?と思ってしまうほどです。やはり凄いです。天才であろうが、生まれ変わりであろうが彼は彼であって他に代わりはいないのですから、今後とも大いに我々ジャズファンを楽しませて欲しいと思いました。

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