rakitarouのきままな日常

人間様の虐待で小猫の時に隻眼になったrakitarouの名を借りて政治・医療・歴史その他人間界のもやもやを語ります。

最近の中東、ウクライナ情勢から(2014.9)

2014-09-13 22:52:11 | 政治

1)21世紀の新しい歴史が動き出している

 

今年は第一次大戦勃発から100年目にあたります。第一次大戦は20世紀の世界の動きを決定づける第一段階になった節目であり、米英独仏露日がその後台頭し続けて再度第二次大戦で果たし合いをした結果、米ソのみが残り、1990年代までその体制が続きました。21世紀は米国一極体制で始まったものの、テロに対する戦争をイラクやアフガニスタンという国家を相手に行った結果、収拾がつかなくなって国力が衰退し、米国一極体制がゆるみ始めています。現在、第二次大戦の戦勝国は「戦後秩序」という枠組みによる世界秩序にノスタルジーを覚えつつも、その「かけ声」は世界の騒乱を鎮める効果とつながらず、グローバリズムを信奉する先進国G7、国家資本主義をかかげる中国ロシア、新興のインド、ブラジルなどの国々と産油国、新たな国家の形態を模索するイスラム諸国、その他の国々に分かれて紛争の時代に入りつつあるように見えます。

 

といっても、ウクライナの現状、中東諸国の現状など展開が早い事と分かりやすい解説がないので、実際どのようになっているのかよくわからないように思います。そこで現状で知り得る範囲の事項について、備忘録的に記しておこうと思います。

 

2)中東における動き

 

(イスラエルのガザ侵攻の目的)

ガザは1967年の第三次中東戦争でエジプトからイスラエルが奪ったものですが、同年の国連安全保障理事会決議242ではエジプトに返還するよう求められています。しかしそれを無視してヨルダン川西岸などと共にイスラエルが所有している所に、パレスチナの難民が住み着いてパレスチナ解放機構(PLO)との確執が続く事になります。2006年に穏健なファタハがヨルダン川西岸地区、ムスリム同胞団のパレスチナ支部といえる強硬派のハマスがガザ地区を支配するようになって、イスラエルはガザ地区を壁で囲み、人と物資の交通をエジプト側1カ所とイスラエル側1カ所に制限、中世のゲットーのような扱いにしてしまいます。2013年にエジプトのモルシ政権がクーデターで倒れて親米派のシシ氏の軍事政権になると今まで比較的自由であったエジプト側の門が閉じられ、ガザの経済が困窮することになりました。

結果ハマスはガザの閉鎖解除を求めてロケット弾によるイスラエル攻撃と地下トンネル掘削を仕掛けるのですが、それを潰しにかかったのが今回の攻撃でした。

ハマスはスンニ派支持なので、シリアの政府軍側を支援するヒズボラやイラン(シーア派)とは一線を画していたはずなのですが、今回わかったことではイラン経由の武器がハマスにも渡っていたらしいということ。イスラエルは最終的にイランの核開発を先制攻撃してでも阻止したかったのですが、ここに来て米国がイランと融和の方向に動いており、米国を巻き込んだ戦争はほぼ不可能になりました。中東の紛争が現在イスラエル中心からシリア・イラク中心になってきており、イスラエルは成り行きを見守る立場なのでしょうが、ガザに関してはハマスに支配された住民が離散(自分達が昔経験したディアスポラ)するまで閉鎖による兵糧攻めを続けるつもりではないかと想像します。

 

3)イスラム国(ISIS)は新たな歴史の焦点になるか

 

シリア北部からイラク中部までを支配地域とし、2014年の6月29日に国家樹立を宣言したイスラム国は、アブバクル・バグダディをカリフ最高指導者とする国家の枠を超えた組織になっており、イスラム諸国のみならず欧米各国からも若者の参加者が絶えないという今までにない動きを見せています。イスラム人口の90%はスンニ派でその3%程度が過激なサラフィストと言われていますが、彼らはサウジアラビアなどから豊富な資金を得ていて、今回のイスラム国はシリアの反政府組織やアルカイダ系の組織、もともとイラク軍が所有していた高性能の米国製武器も鹵獲したものを多数持っていて、1万人規模の集団といいながらかなり強力な民兵組織(ミリシア)になっています。

 

イラクから手を引いたはずの米軍が突如このISISに空爆を加えることになった背景には複雑な「クルド人の独立問題」が存在しているようです。

クルド人には大きく3つの派閥があって、イラク国内でもバルザニ一族(KDP石油資源があり、裕福)、タラバニ一族(PUKイラク全体の大統領)、クルディスタン労働者党(PKK社会主義で上記2族と仲が悪い)がそれぞれシリア内戦でも対立し、同じスンニ派でもISISとは一線を画しているから現実問題としてどこを支援すれば良いか米国も分からないのが現状ではないでしょうか。米国は国益に反する集団を敵(テロリスト)と見なし、単純に敵の敵を支援(民主化勢力と呼称)することを国策として取ってきました。アメリカ人というのは複雑なことは理解できません(これは私が米国留学していた時に、ドイツ人と英国人の同室者とよく話した話題で、彼らも一致した意見でした)。自分の敵は悪と見なし、敵の敵を支援すれば良い、以上の戦略は取れないのです。だから第二次大戦でもせっかくソ連と闘ってくれている日独を徹底的にやっつけて自分達と正反対のソ連を勝たせてしまい、戦後ソ連と戦争する羽目になったりするのです。中東問題では多分米国はどうしたらよいか分からない、が本音ではないでしょうか。もともと主義主張に基づく戦略など米国にはないのですから。

 

4)ウクライナの今後

 

4月から戦闘が続いて来たウクライナ東部の政府軍と親ロシア派の戦闘も、9月3日のポロシェンコ大統領とプーチン大統領の電話会談で恒久的な停戦が実現したことになっています。親ロシア派の代表とポロシェンコ氏との間で停戦が成立したのでないこと自体、親ロシア派はプーチンの命令で動くという間接的な証拠なのかも知れません。表向き、ロシアは正規軍をウクライナには派遣していないことになっていますが、多くのウクライナ東部の住民(国連によると100万人と言われる)がロシア領内に避難し、そこから志願兵の形で男達や隠れロシア兵がウクライナ東部に入って戦闘に参加しているのが実態でした。一方のウクライナ軍も、独立当時80万の兵力を誇ったウクライナ軍は、その後の軍縮(予算がなかったという)で、10万人まで減り、実践に対応できるのは6,000人足らずだということです。つまりロシア軍で言えば一個旅団(師団より小さい)程度の戦力しかなく、戦闘団を組織しても予備を入れて4個戦闘団がせいぜいでしょう。ロシアが本格的に戦力投入(3個機械化師団もあればOK)

すれば鎧袖一触キエフを2時間で落とせる(とプーチンが言ったらしい)は本当だと思います。ウクライナは退役軍人や志願兵で国民防衛軍を創設(4万人規模)して東部戦線に送り出しているそうですが、指揮命令系統が不十分で殆ど役に立っていないそうです(そりゃそうだと思う)。戦術論として、守る方はロジスティクスさえあれば指揮命令系統はあまり重要ではありませんが、攻める方は守備の3倍の兵力は必要で指揮命令系統が致命的に重要です。ウクライナ政府は国防省と国務省両方がそれぞれの軍に命令を出しているようで、その時点で戦争に勝てる状態ではない(その政府自体が促成ですし)と断言できます。ウクライナ軍は8月だけで1,000人以上が死亡し、負傷や捕虜も多数出ていると言われます。敗退が続いてとても戦争が継続できる状態ではないのです。

 

プーチンはロシア正規軍をウクライナに投入することはないでしょう(勝てるから)。NATOや米軍がウクライナで停戦が成立したのに「いらんことしい」でウクライナ軍に加勢して戦闘に参加したりしない限り、ロシアとの間で第三次大戦が起こる事はないと思います。NATOの司令官EUの大統領には反ロシア的な人物がなったようですが、まあメルケルも他のEU首脳も本音はアメリカのために戦争などしたくないでしょうから面従腹背、のらりくらりと火の粉が収まるのを待つつもりではないでしょうか。

 

5)次に動くのはどこか

 

オバマ大統領と、米国務省の本音は、アメリカはもう戦争をしたくない、という事でしょう。しかしユダや金融資本とネオコンは第三次大戦をどこかで起こしてウオーエコノミーによってドルを防衛し、米国の景気を上向かせたい、戦争しているところに米国が警察官として後から介入して美味しい所を頂きたい、という事だと思われます。アジア(日中、朝鮮半島、中越比など)、中東(ガザ、シリア)、アフリカ(リビア、ソマリア)、ウクライナと戦争の種をあちこちに撒いてみたものの、どうもアメリカの景気がよくなるような戦争には発展しそうにありません。敵の敵を支援しているうちに、支援している相手が米国の敵になっているといった繰り返しで、第二次大戦の時のように米国に都合よく世の中がまわってくれません。各国首脳は今こそぐっとこらえて、戦争が激化しないよう協力し、ユダや金融資本が衰退するのを待ち、真に各国国民が豊かに暮らせる(一部の大金持ちではなく、豊かな中間層が育って社会全体が底上げされるような世の中)ように知恵を絞るべき時期にきているのではないかと夢想します。

コメント
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