不世出のボクサー、モハメド・アリのドキュメンタリー映画「黒い魂」を見た。
74年公開の映画であるが、ソフト化されていなく先日の放送がテレビ初放送でも
あったので、私のように初めて見た方も多かったのではないだろうか。
ボクサーとしてのアリ、人間としてのアリに興味があるのは勿論だが、私の興味は
この映画を勝新太郎が製作したということである。どういう交渉をしてどれだけの
ギャランティーで成立したのか、なんてことに興味を持つとそれこそ下種な話になる
のだが、勝新ファンとしては何とも気になるところである。
映画は2年半にわたって撮影されたのだが、過去の試合からのショットをも収録し
完成した映画の尺はわずかに50分ちょっと。割に合わない贅沢の極みというヤツかも。
更に不思議なのは映画の中でかなりの長時間、リッチー・ヘブンスの演奏シーンが
あるということだ。ヘブンスが歌う曲のタイトルがわからないのだが、人種差別や
徴兵制度に代表される権力側の押し付けに徹底的に抗ったアリの生き様を歌った内容は
その曲のリズムに負けず劣らず強烈である。
モハメド・アリそのものがロックンロールであることは紛れもないが、リッチー・ヘブンス
の演奏シーンがあるということでロック者が気に留めても損はしない映画である。
掲載写真はリッチー・ヘブンスのアルバム「MY OWN WAY」。なんとなくタイトルが
アリの映画に相応しい感じがしたので選出した。ハービーマンの「MEMPHIS
UNDERGROUND」と似通った雰囲気のジャケはインパクトがある。
映画の中には72年4月1日に日本武道館で行われたマック・フォスターとの試合や
ファンにサインをする姿も収録されている。アリはこの4年後再び日本の土を踏み
6月26日に同じく日本武道館でアントニオ猪木と異種格闘技戦を行う。
おそらくは勝新もこの映画の為に散財しただろう。それを思えば勝新とアントニオ猪木が
着地点こそ違えどアリにかけた思いのほどが伺えて、それがまた興味深いのだ。
振り返れば、猪木はチャック・ウェプナーやレオン・スピンクスといったアリと縁のある
ボクサーとも戦ったのだなぁ・・・。