HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

WYATT/ATZMON/STEPHEN /・・・FOR THE GHOSTS WITHIN'

2010-10-29 20:56:14 | ROCK
聴かず嫌い、或いは根拠の無い先入観。何と言われても構わないのだが、『ジャズのスタンダード』という
だけで、「ああ、なんとなく、いいです。」という気分になるのが常だ。
この場合の「いいです。」は「良いです。」ではなく「結構です。」という意味だ。
この場合の「結構です。」は「良いです。」ではなく「NO THANK YOU」という意味だ。
読んでいて、くどいでしょ。(笑)つまり、それくらい気に入らないのである。

特に、どんなジャンルでもいいのだが、かつて時代と対峙し激烈な音を出したり、ミュージシャンとして
歴史にも記憶にも残るアルバムや曲をつくった人が、『ジャズのスタンダード』を小奇麗なアレンジで
演奏しても大抵の場合、聴く気になれない。聴けば「良いな」と思う瞬間もあるのかもしれないが、
聴くという行為に到達する前に萎えてしまうのだ。

ところが。掲載写真のアルバムは「小奇麗なアレンジでジャズのスタンダードを大人が楽しめるように
演奏しました。」なんていう低次元のものとは一線を画す、素晴らしいアルバムだ。
掲載写真はロバート・ワイアットがサックス奏者のギルアド・アツモン、ヴァイオリニストのロス・ステファンとの
連名で出した新作「・・・FOR THE GHOSTS WITHIN'」。オリジナルやワイアットの過去作のカバーに
混じってスタンダードというにはあまりにも有名な、多くの曲がカバーされている。

ワイアットの周辺で、弦と管が優しく艶やかに、時に冒険的に音を紡ぐ様は、ジャズだのロックだのという
ジャンル分けを拒絶する。そして皆がよく知る、あの声。これらが一体になったとき、この音楽は
現代の時間の流れを軽く飛び越えてしまう。時代とリンクする音で無く、だからといって過去にすがりつく様な
音でも無い。例え題材をスタンダードに求めたとしても、ここで聴ける「音」はオリジナルだ。
なんで、このアルバムを買おうと思ったのか明確でないのだが、1日も早く出会えて良かったと思っている。

マイルスのファンは「ROUND MIDNIGHT」のアレンジに、彼らの尊敬の念を感じるかもしれないし、
ロック・ファンは単純にワイアットの声の美しい枯れ方に年月を感じるかもしれない。
何れにしろ、最終曲「WHAT A WONDERFUL WORLD」が終わる頃には多幸感で満たされるはずだ。
私はDVD付きの輸入盤を買った。収録時間が短いドキュメンタリーであるが、ワイアットの歌入れを含む
レコーディング風景もある。それに、ワイアットが食器を洗う姿も見ることが出来る。(笑)
ロバート・ワイアットの日常や近況を確認できるという意味合いにおいて、こういうDVDが添付されて
いるというのは熱心なファンには嬉しいだろう。値段は少々高いが、ここはDVD付きをお勧めする。
コメント (4)
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