HARRY’S ROCK AND ROLL VILLAGE

お気に入り音楽の紹介と戯言

BLACK UHURU / ANTHEM

2009-11-22 10:24:39 | REGGAE
ブラック・ウフルと書くべきか、ブラック・ユフルと書くべきか。
通りがいいのは前者だが、信頼の置けるガイド本では後者で書かれていたので
私もここではそう表記する。

ボーカル・グループなのにグループ創設時のメンバーがほとんど入れ替わった
時期にブラック・ユフルは売れた。ロック向きの声質のリード・ボーカルに
スライ・ダンバーが叩きだすシンセ・ドラムの組み合わせが、当時の
ニュー・ウェーヴ以降のロック・ファンにアピールしたこと、84年の
アルバム「ANTHEM」を抱えてツアーをしたこと、これらが成功の要因となり
彼らにグラミー賞をもたらした。女性ボーカリストの存在がステージ映えに
一役買ったのも想像に難しくない。

私は彼らを一躍有名にした「ANTHEM」を聴いたことが無かった。
というのも、アイランドから83年に出た盤を聴きたいと思っていたのを
見つけられなかったから。84年にリミックスされた盤が所謂ロック・ファン
を取り込んで市場を開拓すべく発売されたという話を漠然と知っていたので
それなら、まずオリジナル・ミックスを聴きたいと思ったのだ。

掲載写真は2004年にHIP-Oからリリースされた「ANTHEM」。
ここにはオリジナル・ミックスを含む4枚の「ANTHEM」が収録されている。
オリジナル・ミックスは当時アメリカでは出回ってなかったことが
表記され、「グラミーを獲得したのは、リミックス盤のおかげだったのか。」
と思ったのも束の間、私が想像していたリミックスはU.K.盤で、
U.S.仕様のリミックス盤の存在を初めて知って驚いた。というか、門外漢の
情報集収能力の欠如を思い知らされたものだ。ちなみに残る1枚は
これまで未発表だったダブ集。

そのU.S.仕様であるが、オリジナルと比べると少々派手でU.K.仕様より
わかりやすくて幾分ロック寄りと言ってもいいだろうが、これがU.K.リミックス
より優れているというようには感じない。オリジナルから1曲外し、
スティーヴ・ヴァン・ザントの曲を入れているのはU.K.仕様と同じだが、
アメリカ進出用にアピールするなら、オリジナルとU.K.仕様にあった
スライ&ファミリー・ストーンの「SOMEBODY'S WATCHING YOU」を外す必要は
無かったのでは、と思うからだ。何れにしろ3枚を聴くと一番レゲエの
醍醐味から遠いのがU.S.仕様だと感じたが、それがグラミーに繋がるのだから
「アメリカ向け」戦略は成功したのだろう。なにしろ「アメリカ」の賞
なのだから。メンバーがグラミーのトロフィーと共に写っている写真には
紛れもなくU.S.盤のLPも写っていた。

レゲエ・アーティスト最初のグラミーであったが、レゲエの流れで言うと
これ以降打ち込み主流になることを思えば、なんだか勝手に虚無感が
私に襲いかかる。ちなみにこの年のグラミーの最優秀アルバムはマイケル・
ジャクスンの「スリラー」、最優秀楽曲はポリスの「見つめていたい」であった。


コメント (7)
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