掲載写真はROLLYが発表したアルバム「ROLLY'S ROCK CIRCUS」。ROLLYが
影響を受けた70年代の日本のロックの楽曲をカバーしたアルバムである。
かつて四人囃子や、はっぴいえんどのカバーを発表したことがあるのだが、果たして
今作は如何に。
この類のアルバムは肩肘張らず、目くじら立てず楽しんだもの勝ちである。
勿論、ROLLYのキャラクターや嗜好に趣向を了解し、尚且つここに収録された
元歌を何曲好きかで、楽しみ方の幅も違ってくる。
「あの曲じゃないだろ。演るならアレだろ。」とか「この曲はもっと重くしたほうが・・」
なんて思うこともあるだろうが(ハイ、個人的嗜好でそう思う瞬間がありました)
ここは、軽くてキュートで本格派のROLLYを満喫する方が得策のようだ。
外道の『ビュン・ビュン』で文字通りブッ飛ばし、普段からFTB(石間ヒデキ)好き
を公言するだけあって、『メイク・アップ』でハードに迫る。『タイムマシンに
お願い』では途中に『SUMMERTIME BLUES』を彷彿させる遊びも盛り込んである。
フライド・エッグの『サムデイ』を選ぶのは、何となくお洒落に思える。再び挑んだ
はっぴいえんどカバーは『花いちもんめ』。鈴木茂の曲を選ぶところも今の私には
極めてお洒落に思える。ギタリスト同士ということを抜きにしても、個人的に実に
爽快な気分にさせてくれる選曲と演奏である。『花いちもんめ』から四人囃子の
『空と雲』へと繋がる流れは実に気持ちのいいものだ。
ジュリーの『気になるお前』は、シングル『胸いっぱいの悲しみ』のB面曲であるが
今回のクレジットに書かれてあるように、ROLLYはハルヲフォンの「電撃的東京」に
影響されたということなのだろう。思えば、あの盤も凄いアルバムであった。
実はムーンダンサーというバンドを知らなかったので、勉強になりました。
全編に亘りROLLYの歌唱はくどさ(笑)とねちっこさ(笑)のオンパレード。
チョーキングの伸ばし具合も幾分長めのシーンが続出で、これぞROLLY。(笑)
次はTHE 卍で新譜を出すことを期待します。
私の実家は愛媛なのだが、今年は何故だか急に懐かしいうどんが食べたくなって
帰りに高松に寄った。瀬戸大橋ができるまでは本州と四国を結ぶ交通手段として
私は宇高連絡船を利用することが何回もあったのだが、乗る度に連絡船で販売する
うどんを食べた。それほど腹が減ってなくても船に乗るとどうしても食べたくなり
その衝動を抑えることが出来たためしはない。(笑)そんなうどんを食べるために
高松へ行ったのであった。
宇高連絡船は廃線になったが、「連絡船うどん」の味を再現した店が高松駅にある。
駅構内からも入れるし、駅の外からも入れるので便利。肉うどんを食べたのだが、
あの甘い汁が、十代後半の海風に吹かれて気分に浸っていた(笑)間抜けな私を
プレイバックしてくれる。
掲載写真はP-VINEが社運をかけて贈る初のアイドル・グループとの触れ込みで
登場したその名も「うどん兄弟」のアルバム「ラスト・アルバムVOL.1」。
この6曲入りミニ・アルバムが製作された2014年当時、メンバーは中学3年生。
カーネーションの30周年トリビュート盤に参加し『EDO RIVER』をカバーしたことで
その名を知った人もいるだろう。
そのカーネーションの直枝政広や鈴木慶一が作曲に手を貸すのだから、大人の遊び
ここに極まれり。というか「うどん兄弟」の持つセンスがそれを可能にしたのは
間違いないだろう。
事実、彼女たちが作詞した曲が3曲あるのだが、その歌詞が面白く楽しい。
ラップ・ユニットを名乗るだけに、勢いのある曲に相応しい歌詞をのせる訳だが
例えば「近所のカラオケ 最高や! いつものお店にさあ!行こうや!」という
韻の踏み方がもう格好いいのだ。近頃のバンドときたらライムもできないからねぇ。
また『立入禁止』においては歌詞中に「江戸川」を歌いこむ義理堅いところも見せる。
『食欲Baby』『愛情弁当』と、子供っぽい明るさが満載なのだが、これはアイドルの
仮面なのか。この年ならそろそろ別な欲望が頭をもたげてくるのだが、そんな側面を
見たいような見たくないような、最早ほとんど保護者である。(笑)
「なぜ女の子4人組なのに兄弟なのか」
「どうして鈴木慶一が曲を書いてくれたのか」
「なぜ、P-VINEからリリースするのか」
全ての謎に彼女たちは答えてくれない。わかっているのは「うどんが好きだ」と
いうことだけである。ラスト・アルバムと銘打たれているのに「VOL.1」とも
書かれている。マニック・ストリート・プリーチャーズじゃないけれども
次作があっても怒らないからね。(笑)
さて。「うどん兄弟」というのは実はアイドル・グループ「ANNA☆S」(アンナッツ)
からの派生ユニットというか「ANNA☆S」のメンバー全員参加のユニットである。
その「ANNA☆S」が先日リリースした7インチがこれ。
いかん。このジャケだと買ってしまうだろ。
中にはキング・クリムズンの「RED」のジャケを模したピンナップも入っている。
いかんなぁ。(笑)
ラーメンは毎日食えないが、うどんなら毎日食えることをここに宣言する。
しかし、本当にここはROCK N ROLL VILLAGEなのか?(笑)
佐野元春のデビュー35周年を記念するのに相応しい傑作と言って間違いでない
であろう、アルバム「BLOOD MOON」。コヨーテ・バンドとしては3作目の今作は
前作「ZOOEY」で到達した「高み」を更に一段高い処に持っていった。
まず、元春自身の歌詞が非常に良い。男女の生活や恋愛の機微を描くのはロックや
ポップスの常套であるが、ここで歌われる事象は最早大人というには歳をとりすぎた
私にも自然に受け入れられるものである。
また、ミュージシャンとして或いは一人の人間として表明すべきことを短絡的な
言葉でなく、抽象的とか具体的でないとの誹りを軽く跳ね除けるべく選ばれた言葉で
紡ぐことで、今の具体的事象に当てはまり尚且つ将来も続くであろう未来の不安や
未来の不誠実な出来事に対応できるような歌として完成させた。
そして何よりも今作の楽曲はどれもメロディーが美しくリズムが生き生きしている。
選び抜かれた言葉故に、今まで以上に琴線に触れるようなメロディーで届けてやろう
なんて意図があったなら、これこそロックじゃないか。
昔よく口ずさんだメロディー。その懐かしい数々の曲に引けを取らない旋律が、
何度も今作の曲を再生させ、結果として何度も元春の選んだ言葉に触れ
何度も現実を考えさせる。
ニール・ヤングの新譜はメッセージ性の強いものであったが、対象があまりに具体的
だと、メッセージは簡単に伝わるがポピュラー・ミュージックとして長く生き残るか
どうかという、ミュージシャンの意図とは違うつまらないことを考えてしまう私が
いる。それはそれとして、元春の今作が長く聴き続けられるのは間違いないだろう。
そうでなければいけないし、そうあるべきだと強く思う。
6年ぶりの純度100%のブツ。それがグルーヴァーズの新作「GROOVISM」。
グルーヴァーズの音はいつも効く。ジャンプ・ナンバーは本能的に頭と体を揺らせ
メロディーの美しい曲は耳と心を研ぎ澄まさせる。しかし、同時に頭脳にはいつも
真剣に時間と時代と向き合うことを要求してくる。
日本のロックの歴史の始まりを何処に定めようと、かつて数多存在し今も存在する
ロック・バンドの中でグルーヴァーズが最高峰であるのは、その歌詞が秀でているのが
最大の理由かもしれない。
演奏の上手いバンドやノリのいいバンドは幾つもあったが、歌詞に深みのあるバンドは
そうはなかった。文学的であろうと詩的であろうと幻想的であろうと、それが個人と
社会の両方を取り巻く現実に対応していることこそが「ロック」であるべきだろう。
格好いい言葉で韻を踏むというロックンロール・マナーというのは実に難しいのだが
藤井一彦は、その難題をいつも軽くクリアしてニュー・マテリアルを提示する。
実に素敵だ。
今回の新作はかつてライブで演奏したことがある曲を、スタジオ録音したものである。
藤井のソロ・アルバムに収録された『UNDER THE FOGGY MOON』はバンドでの
再演となったが、ロックのフォーマットでより遠くへメッセージは届くであろうし、
私がかつてライブで体験した『EL DIABLO』の興奮が遂にCDに刻まれたというのも
嬉しい。
3人が出すどの音も素敵なのだが、個人的には改めて藤井ヤスチカのドラムスに
感動した。聴いてすぐ体内に漲る気持ちよさはチャーリー・ワッツと双璧である。
そういえば昔、酔っぱらっていたわけでもないがヤスチカさんに「チャーリーが叩けなく
なってもストーンズには入らないでくださいね。」なんて阿呆なことを言ったことがある。
多分「アホやな、コイツ」くらいな感じで笑ってもらったのだが、これはそれだけ
ヤスチカのドラムスが素晴らしいということである。
スネアを打つ時にハイハットを叩かないことでミディアム・テンポでも絶妙の疾走感を
生むことに成功したチャーリーに対し、ハイハットのアタックの力加減の配分で
疾走感を生み、正に生き物としてのリズムを体現していることで、このバンドを
ロックンロールの高みに置いている。勿論タムやスネアをロールさせる気持ちよさも
ただ単に手数が多いだけのドラマーでは出せないもので、そこにはメロディーさえある。
今回のアルバム発表にあたってのインタビューで藤井一彦はこんなことを語っている。
ハウンド・ドッグ・テイラーやジョン・リー・フッカーは、ブルース・バンドより
ジョン・スペ(JSBX)の方に「Yeah!」って親指を立てて言うと思う、と。
これは正に我が意を得たりであり、過去の当ブログで同じようなことを書いた。
もしロックの女神が、ロックンロール日本支部に舞い降りた時は、グルーヴァーズに
投げキッスをしてほしいものだ。
07年5月の当ブログにはこんなことも書いた。
生きる理由の一つに「グルーヴァーズの新録音を聴くため」という項目が
あってもいいと思うのだ・・・。
6年待ったぜ、全く。
そしてまた、次の新録音を聴くために生きるのだ。
日常をやりぬくロックンロールこそ、私にとって最高のロックである。
木ノ内みどりの次に取り上げるとしたら、この人しかいないだろうと
いうのが岡田奈々である。若い人には今人気の大人数グループに所属する人の
名前だと思われかねないが、私と同年代かそれより上の人には70年代にCMや
グラビアで活躍した掲載写真の人である。
木ノ内みどりと同レーベルからレコードを出していることと、同年代に活躍した
ことで繋げてみたのだが、それほど違和感は無いはずだ。掲載写真のアルバム「憧憬」は
75年にリリースされた彼女の2枚目のアルバム。岡田がリリースしたアルバムは
過去に全てCD化されているが、この盤だけ複数回復刻されているので彼女の
代表作ということになるのだろう。
アルバムに収録された12曲の作詞の全てを松本隆が担当しているのだが、アルバムを
通して聴いていると、16歳の少女の純粋な部分を掬いあげるというより、こういう
少女であってほしいといった感じの妄想と願望も入り混じった感じがして個人的には
居心地が悪い。その居心地の悪さこそ、私が抱く都合のいい幻想と同じものである
ことを私自身が認めているからに他ならないからなのだが、全く男ってヤツは
どうしようもないものだ。(笑)
岡田の歌唱は決して上手いものではないが、ちょっとハスキーで頼りなげな音程が
また可愛らしく、製作者とファンの期待にこちらは上手に応えているといえる。
セリフやSEの入った曲があるのも私好みだが、ベスト・トラックはイントロが
洗練されたメロウ・ソウルなのに歌詞が始まると見事な歌謡曲になる『海の
レストラン』。因みに14年8月の当ブログでは『そよ風と私』を私の70年代
アイドル・ソング・ベスト10に選んでいたのだなぁ。(笑)
テレビ番組「スクール・ウォーズ」の頃には流石にこちらもいい歳になっていたので
最早追いかけることも無かったのだが、「個人史」(笑)の中では忘れることの
できない人である。
木ノ内みどりのデビューは74年なので、66年生まれの私は彼女をデビュー時から
認識していたわけではないが、77年には認識していた。歌手としてではなく
時々見ていたテレビ番組「刑事犬カール」に出演する綺麗なお姉さんとしてであるが。
そんな私も同年の高田みづえのヒット曲『硝子坂』はテレビで見て知っていて、
その後に、その曲のオリジナルは木ノ内みどりであることを知る。『横浜いれぶん』を
知った頃には「ピンク・レディーより、このお姉さんの方がいいな。」なんて
よからぬことを思っていたのも事実である。(笑)
今思えば小中学生のアイドルではなく、もっと年上の連中やいい大人たちが気に留めた
人なのだが、そんな女性が密かに気になってた私はマセていたのかもしれない。(笑)
掲載写真は77年のアルバム「硝子坂」。A面がフォーク調、B面が幾分ロック色強め
という構成が面白いが、どちらの面が良いとか悪いとかではなく全面を通して
聴き応えがあるのはアレンジをラストショウが担当していることで統一感を保っている
ためだろう。まあ、個人的には『明日からごめんね』『Good-bye』と続く並びが
好きで、特に前者は宇崎竜童以外の何者でもないメロディーの冴えが素晴らしい。
78年に引退した際のゴタゴタも子供心に記憶に残っているが、21歳で思い切った
決断をして姿を消した、というのも彼女を私の記憶に強烈にとどめたという意味で
凄い女性だったのだなぁと思わずにいられない。
歌手として成功したとは言えないが、このアルバムは聴き処が多い。もう一度
全てのアルバムが復刻されればなあと思うのは私だけではあるまい。
全部で12枚あるシングルの中で一番好きなジャケットは『学生通り』。
ああ、もうこれは完全に「お姉さん」に対する憧れ嗜好が昔からあったということに
他ならないのだが、今でもつまらない女子大生幻想が私の中に残っているのかも
しれない。自分が大学生の時に散々現実を見てきたはずなのに。(笑)
あっ、そうか、あれは女子大生といっても同級生とか下級生だからダメなのであって
上級生なら良かったのか、なるほど。(笑)
そんな愚にもつかない「憧れ」の残像が、ここにあった・・・。
昨日の流れで引っ張り出してきたのが、ミュート・ビートが88年にリリースした
セカンド・アルバム「LOVER'S ROCK」。
これもリアル・タイムでは聴いていない。また繰り返しになるが私にとっては
時期が悪かった。時はバブル期真っ盛りであり、大きなビルが建ちそこに企業が
金を出したライブハウスが入るといった時期でもあった。冷静に聴けば硬派な音楽
であるのに、私の感性は捻くれて別の方向を意識して見ようととしていたことが
弊害となっていたとしか弁明のしようがない。(笑)
音の隙間で交わされる濃密な楽器のやり取りとミュージシャンの息づかいに、
気持ちの良い音であるのに、心地よい緊張感を強いられる。これが80年代の音なら
あの時代の音も捨てたものではないと、一瞬だけそんな気持ちにもさせる。
御存知の通り、このアルバムのジャケットには、スリーマイル島の原子力発電所の
写真が使われている。全編インストの盤であるが、声高にアジテーションをしなくても
これが何に対してアピールしているかは明白である。
昨日取り上げたストーンズ・トリビュートを出した会社からは絶対に出せないCD。
アルバム最後に配された曲はイアン・デューリー&ザ・ブロックヘッズのカバー
『LULLABY FOR FRANCES』。(綴りはこのアルバムに記された通りに記載)
スリーマイル島原発事故があった79年にでたアルバム「DO IT YOURSELF」に
収録されている曲である。ロック者として、この盤を愛する理由はこんな処にも
あるのだ。
11年に当ブログでルーツ・ロック・レゲエ100選を決めるにあたって、「日本人の
レゲエは入らないのか?DRY & HEAVYはいいですよ。」という推薦を頂いた。
恥ずかしながら、その時点でDRY & HEAVYという名前は知っていたが、聴いたことは
なかった。
ユニット(或いはバンド)としての名前は知っていたが、「DRY & HEAVY」と言われて
まず頭に浮かんだのがバーニング・スピアのアルバム・タイトルであったりするのだから
始末が悪い。そんな私も今では数枚のアルバムを所持するに至る。新作も買わねば。
で、オリジナル・アルバムを手にする前に聴いたのが掲載写真の「IT'S ONLY
ROCK 'N' ROLL (BUT WE LIKE IT)」と題された日本のミュージシャンによる
ローリング・ストーンズ・トリビュート盤であった。
03年に出たこの盤を、当時は手にすることも無かったのだが、ひょんなことから
安く見つけ、そこに収録されたDRY & HEAVYの『START ME UP』を含む数々の
曲のクオリティーの高さに感動したのであった。
日本人が演奏するレゲエというのに偏見があったのは事実である。私の耳や情報
収集能力が低かったというのもあるが、80年代から90年代初頭にかけて
目や耳に入ってくるのは、どちらかというと色物的或いは芸能界的な匂いが強くて
相容れなかった物が多かった気がしたのが私がそれらを受け入れなかった理由である。
しかし、この盤を聴いて「ああ、もうとっくに日本人のレゲエ(或いはセンスと
言い換えてもよい)は少なくともアレンジや演奏能力では世界レベルだったのか。」
ということに気付かざるを得なかった。
こだま和文の『PAIT IT , BLACK』の冷たい緊張感や、LITTLE TEMPOを象徴する
スティール・ドラムの響きが湿って聴こえる長尺の『AS TEARS GO BY』が
バラッドというよりナイヤビンギの趣さえあるのに感動する。
『MISS YOU』『SYMPATHY FOR THE DEVIL』といった女性ボーカル物の出来が
良いのに加え、変名で岸田繁が歌唱で参加した『EMOTIONAL RESCUE』の音数が
少ないはずなのに派手で賑やかなところも素敵だ。可愛らしく始まり、途中で
カントリー・フレーバーを織り込む『SHE'S A RAINBOW』は美しい。
ストーンズが75年に敢行した「TOUR OF THE AMERICAS '75」で使用した
鳥のシンボル・マークを上手く意識したジャケットも最高。もうこうなったら
この盤にリアル・タイムで出会わなかったのは販売元が気に入らなかったことに
でもするしかない。(笑)
全てのトリビュート盤は、すべからくこのレベルで在って欲しいものだ。
俳優の活躍の場というのは、当たり前だが人によって違う。舞台に重きを置く人が
いれば映画に重きを置く人もいる。しかしながら、市井の人々に一番わかりやすいのは
テレビでよく見かける人ということになろう。
しかしながら、映画で高く評価された人がテレビで視聴率がとれる人というわけではないし
外国で評価された人が日本で人気があるというわけでもないところが、面白いというか
複雑なところである。
昨年の日本アカデミー賞の「最優秀主演賞」と「最優秀助演賞」を受賞した、文字通り
無敵の真木よう子であるが、私が彼女の名前と顔を覚えたのは実に遅かった。
01年頃からテレビや映画での露出が始まるのだが、私が気になった映画ではなかったと
いうの差し引いても、あれだけ熱心に見ていた「時効警察」に出ていたことも
気づかなかったのだから、私は鈍かったのだろう。
名前を覚えたのはテレビドラマの「SP」に出ていた頃だったが、その後に放送された
「週刊真木よう子」は強烈にその印象を私に焼き付けた。何せ自分の名前が番組に冠され
毎週違ったシチェーションで違った役柄を演じるのだから、見る方は様々な魅力に
気付くというものだ。
掲載写真は同名ドラマのサントラで、ドラマ内で使われるBGMを収録しているのだが
1曲だけ番組冒頭で使われた真木の歌唱が収録されている。1929年に書かれた
ジャズのスタンダード『GEE BABY AIN'T I GOOD TO YOU』がその曲で、男の
立場で書かれた歌詞を女の側に視点を置き換え、日本語で歌われるその声はスモーキーで
実に艶っぽい。
ここまで歌えるのなら、是非ともフル・レングスのスタンダード集でも作って欲しいと
思うのは私だけではあるまい。(笑)サントラ自体もスリリングな演奏を収録していて
1曲ずつ抜き出しても冴えている曲が多いので飽きずに聴き通せる。70年代の映画や
ドラマのサントラが思い出したように再発されて高い評価を得ている昨今であるが、
この盤も近い将来、そんな盤の仲間入りをすると思う。
それはさておき、真木よう子である。勝手な私見で申し訳ないが、私はこういう
扱い辛いような女性、つまりは男の都合のいいように扱われない女性に惹かれることが
多々ある。おかげで何度も痛い目にあってきた(笑)が懲りないものだ。
話変わって・・・。
恥ずかしながら真木よう子の発見(笑)には7年ほど遅れたが、ほぼデビュー時から
推し続けて早5年の、大野いとがまだ19歳であることを先日のテレビ番組で知って
驚いた。今こそ「ケータイ刑事」を復活させる時なのだ。(笑)
女性のアイドルは可哀想である。ソロでデビューすれば尚更である。何しろ、いい曲を
貰えるような大きなプロダクションに所属できなかったり有能なスタッフがいないと
売り出しにも苦労するし、周りは可愛い娘だらけなのだから、ルックスやプロポーションの
自己責任というのは大きい。それに相手にするのは浮気な男どもである。
やれ、あっちが可愛い、いやこっちだ、いやあっちもこっちもと移り気で不安定な
購買層がターゲットなのだから手に負えない。
二人組でデビューする女性アイドルは可哀想である。間抜けにも男どもは、二人いれば
必ず「どっちが可愛い」と口に出すとも出さずとも順番をつけてしまうのだから。
ピンク・レディーやWINK、はたまたPUFFYといった例を出すまでもなく、私も散々
そういった話題の中に居たことがある。アイドルかどうかはさておき、「花*花」や
「あみん」にも順番を付けようとするのだから、タチが悪い。(笑)
三人組でデビューする女性アイドルは可哀想である。阿呆なことに男どもは、三人の中で
自分の好みは誰なのか、愚かしくも次は誰なのかと順番をつけてしまうのだから。
キャンディーズやPerfume、果ては「少女隊」や「パンジー」にも順番を付けようと
するのだから、始末に負えない。(笑)
今年のロック・イン・ジャパン参戦メンバーに私が組み込まれるのは2月の定例飲み会で
決定した。問題は自分たちが見に行く日に誰が出演するか、である。
去年はきゃりーぱみゅぱみゅや矢沢永吉を見て大いに盛り上がったのだが、今年は・・。
私が見に行く日は、何とPerfumeが出演するではないか。音だけを聴いても気分が
高揚する曲があるのは確かだが、やはり彼女たちは「画付き」が良い。シンプルなようで
凝ったライティングのステージにしろ、PVにしろ、映像を見たいと思うのはそれだけ
彼女たちの踊りや動きが可愛らしいというのが大きい。
トラックの音や電気処理されたボーカルの統一感は、使用する機材の限度故に保たれる
ものだが、逆に言えばアレンジや曲調のバリエーションの幅はそれほど大きくない。
つまり、すぐ飽きる危険性をずっと孕み続けているのだが、それでもここまで鮮度を
保ったままきているのは、やはり彼女たちの絵的な魅力の大きさに他ならないことは
認めざるを得ない。
さて。
大人数が所属するグループで活動する女性アイドルは本当に可哀想である。
その大半が、一般的に通用するレベルで名前と顔を覚えてもらえるまでに至らず
近年では個人の遊びレベルでなく、大々的に対価を払ってもらった者が勝利する
選挙とやらで大勢の人から順番を付けられるのだから。
二人、或いは三人だと幾ら順番を付けられても、顔や名前は覚えてもらえるだろうし
個々のキャラクターも認識されようが、数百人いる「グループ」の中で100位だろうと
10位であろうと、出資した人以外の圧倒的大勢の市井の人には何の変りもない。
ただ、彼女たちのことを忘れることはない。
だって、覚えていない人のことは忘れることはできないのだから。
私は明確に「のっち」「あ~ちゃん」「かしゆか」を認識している。
流石はロック者いや、ストーンズ者である。(笑)
10年ちょっとの間、駄文を書き連ねているがキャンディーズ絡みのアルバムを
取り上げるのは初めてである。最初に「YOU CAN DO」シリーズを開始した時に
取り上げる予定だったのだが田中好子の訃報があったためにシリーズ中で取り上げる
ことが出来なかったのが、ここまで尾を引いたということである。シリーズの条件に
キャンディーズが合致しなくなった今、取り上げるべきはミキこと藤村美樹の
アルバム「夢恋人」である。
元々、キャンディーズの中では今風に言えば「ミキ推し」であった。今はそれほど
でもないが、痩せた女性が好きだったのは明白であるが勿論そのルックスに
惹かれていたのは間違いない。後に知ることだが全てのアルバムを聴いたわけでは
ないものの、音楽的貢献という意味合いではメンバー三人中飛びぬけていたという
ことに気づき、嬉しくなったものだ。
EL&Pでいうところの「WORKS VOLUME 1」(笑)ともいえるアルバム「早春賦」は
メンバーが作詞作曲した曲のみで構成されているが、そこで聴くことができるミキの
曲つくりのセンスは素晴らしかった。シングルではセンターに立つことがほとんど
無かったのだが唯一のメインボーカル曲『わな』は思い入れがある曲だ。(笑)
「夢恋人」はキャンディーズを解散して5年後にリリースしたアルバムである。
この時期、私は洋楽にどっぷりと浸かっていたのと、テクノ歌謡みたいな音に
理解が無かったのでリアルタイムでは聴いていない。
今聴くと、見事に当時の「音」「雰囲気」を体現していて、1983年にはこういう
音があったのだなあという格好のサンプルとして有効である。昔も今も、この盤が
紹介される時は、YMOやムーンライダーズ人脈が大挙参加みたいなことが書かれる。
ただの一度も仲井戸麗市提供曲があると書かれた文を読んだことがなかったのだが
もし当時それを知っていたら、もう少し早くこの盤を手に取ったかもしれない。(笑)
ミキのアルバムはこれ1枚しかないのだが、大きめのカラフルなモザイク模様の
ジャケットの向こうに、見えないはずのミキの秘密のもう1枚の存在を夢想するのも
一興である。
未だに喫煙者である。一時2年ほど止めていたのだが現在の職場になってから
ストレスが増えて(笑)また普通に吸うようになってしまった。思えば私が常用する
銘柄も時の流れと共に随分と変わった。歴史を辿ればショート・ホープ、ケント・
マイルド、ハイライト、セブンスターときて今はマールボロとなる。
コンビニをさほど利用しないせいもあってか、次々と世に出る新しい清涼飲料水や
インスタント・ラーメンの類を試すという事はほとんどない。袋麺ならサッポロ一番
塩ラーメン、カップ麺ならカップヌードルほぼ一筋であるが最近はリフィルを買うように
している。それをこじはるのマグカップで食べるのだ。(笑)
袋麺の元祖と言えばチキンラーメンなのだが、84年頃だったろうかこのラーメンの
CMを鈴木さえ子が担当した。彼女の声も可愛らしかったがバックの音の無国籍感を
演出する楽器の使い方が妙に記憶に残ったものだ。
高校生当時は四国の田舎にいたのだが、そこでは何度も書いてきたが所謂サブカルと
いった類はほとんど無効であった。私の周囲だけが鈍感だったのかもしれないが、
小難しいことや捻ったことにはほとんど反応できず、直感的に本能的に「格好いいか
ダサいか」を各自の基準で判断していたのは間違いないだろう。
初めて鈴木さえ子を知ったというか見たのは、多くの人がそうかもしれないが忌野
清志郎と坂本龍一が演奏した『い・け・な・いルージュマジック』をテレビで演奏
した時であった。テレビを見た翌日はギターにチャボが参加していたことで話題が
もちきりだったが、ドラマーが女性でしかも美人かもなんて思ったのも事実。
おそるおそる「あのドラマー美人だな。」と私が言った時に話の中にいた一人が
名前を教えてくれたのだ。流石にそいつは坂本龍一シンパだったから知っていたのだな、今思うと。
サブカル関係に疎かったと先に書いたが、そういったこともあって鈴木さえ子のことは
すぐに忘れてしまう(笑)のだが、掲載写真の「スタジオ・ロマンティスト」は後に
手にすることになる。アンディー・パートリッジが数曲をプロデュースしたということも
あるがサンダークラップ・ニューマンの『SOMETHING IN THE AIR』のカバーが
目当てであったのは間違いない。
同曲は原曲より幾分ゆったりとしたテンポであったが途中に『STRAWBERRY
FIELDS FOREVER』のメロディーが挟み込まれ、楽しい気分になったものだ。
「スタジオ・ロマンティスト」は87年のアルバムである。80年代半ばから後半の
ポピュラー・ミュージックの音作りは今聴いても好きになれないものが多いのだが
この盤にはそういうことは感じなかった。おそらくそれは、ドラムスの音が酷かった
数多の盤に比べてそうは感じなかったのと、バックの音の凝り方と程よいポップな
曲の数々、何より鈴木本人の可愛らしい歌唱とジャケット写真の美しさに得体の
知れない浪漫(笑)を私が感じていたからに他ならない。
当時は意識もしなかったが今の耳で『TV DINNER』を聴くと、そのギターの音が一発で
リチャード・トンプスンと判るところは、私も長く音楽を聴いてきたなというところか。
タイトルからもわかるようにザッパ的な『FREAK IN』も面白い。
現在はアニメ音楽が主な活動の場のようであるが、また素敵なポップスのアルバムを
作ってほしいものだ。
布施明と言われてすぐに思い浮かぶ歌は、人によって様々だろうが私の場合は
『君は薔薇より美しい』である。79年にリリースされたこの曲はCMソングとして
テレビから頻繁に流れてきたし、音楽を聴くことやレコードを買うことに興味を
覚えた時期と一致するので特に印象に残っている。
後付上等で言えば、この曲は作曲と編曲がミッキー吉野であり、私がゴダイゴを
好きだったのは何度もこのブログで書いてきたので、話の整合性は高まるというものだ。
歌謡曲フィールドの歌手のレコードを買う度量はさほど無かったが、日本のロックの
再発CDを買い進めるうちにLOVE LIVE LIFEに行き当たり、遂に布施明の歌唱を
収録した盤が我が家に来てしまったわけである。(笑)
私が購入したLLLのアルバム「LOVE WILL MAKE A BETTER YOU」は98年に
2度目にCD再発された際のものであるが、そこで聴くことができた幾分エフェクトが
かけられたかのような金属的でヒステリックな布施明の声に随分驚いたものだ。
その盤にはボーナス・トラックとしてアルバム・タイトル曲のライブ・テイクが収録
されていた。いつかこのライブ盤を聴いてみたいと思っていたのだが、遂にそれが
CD化された。
それが掲載写真の「日生劇場の布施明」である。恐るべき声量なのに甘く深い声で
ニルスンやフランシス・レイ、バカラックの曲を歌い、ライブ盤の後半では自身の
オリジナル曲を歌う。歌謡曲のショーに取り込んでも違和感の無い洋楽カバーは
この時代ならではだが、バックを務めるのが水谷公生や柳田ヒロのLLLであるのが
肝で、それ故に私はこの盤を手にしたのだ。
ロック者にとっての目玉はやはり『LOVE WILL MAKE A BETTER YOU』だろう。
曲の導入で客をリラックスさせ参加させるための軽いMCも今聴けば凄い(笑)のだが
何といっても曲に入る前のカウントで、それまで聴くことの出来なかった感じで
荒々しくシャウトする、その一瞬に鳥肌が立つ。続くGFRの『HEARTBREAKER』も
ロック者には嬉しい選曲。
LPだと盤をひっくり返して、この後に『LOVE STORY(ある愛の歌)』が聞こえて
くるのだから眩暈がした人がいても不思議ではない。ああ、『そっとおやすみ』って
布施の曲だったのか、と間抜けなことを改めて思い知りました。なんか、20代の頃
嫌々連れていかれたスナックとかで年齢不詳のお姉さまが歌っていた記憶しか
無かったので。(笑)
いずれにせよ、芸能界とロックあるいはジャズの世界の縺れ具合の不思議さと面白さを
見事に提示するライブ盤である。ああ、『遥かなる影』っていい曲だなぁ。(笑)
暇な時間というのは無いはずである。何かする予定が無い日というのはあっても
暇な時間というのは無いのだ。何しろ録画&収集癖のある私には、DVDやブルーレイに
焼いたものの見ていない映画やドラマが大量にあるのだ。
今年は松本清張の作家活動65周年とかでやたらとドラマの再放送があり、60本近くを
ディスクに焼いたもののほとんど見直していない。CSで放送された映画然り。
そんな中から何気に76年の映画「変奏曲」をセレクトし、何となく勢いで続けて
83年放送の「松本清張の突風」を見る。
オール・フランス・ロケの「変奏曲」の映像の美しさと(勿論、主役の麻生れい子の
美しさも素敵)「突風」に出演していた中村晃子の何とも言えない魅力から、連想したのが
掲載写真の1枚「ジェーン・バーキンみたいだね」である。
中村晃子といえば、私の年代だと80年代中ごろのドラマやグラビアの印象が強いのだが
最近はシングル集の系統立てたCD化も進んで、歌手としての活動に再びスポットが
あてられている感があるが、オリジナル・アルバムだと、この77年盤だろう。
ジャケット写真の魅力が一番かもしれないが、アルバムの内容もパリで暮らす一人の女性の
私小説のようで、恋愛に憧れ疲れ切る様を描いたコンセプト・アルバムのようでもある
力作といえる。
『10月の日曜日』の中でつぶやかれる台詞に思わずドキっとする。「私たちもう五年に
なる・・・略・・・昔はハード・ボイルドだったのに」なんて言われると、この盤の
5年前に中村とデュエットした伊達男の顔がちらついたりするのだから。(笑)
アルバム・タイトルの間抜けな感じは今も閉口するが、当時はアンニュイな感じを解り易く
伝えるのにジェーン・バーキンという記号は便利だったのだろう。『メイド・イン・
パリ』ではバーキンのような歌い方をするし。疲れ果てて眠りたいと歌う最終曲の前の
インストが長い恋愛期間がもたらした倦怠の時間を表現するようで、それを思えばやはり
1枚のコンセプト・アルバムとして優れた構成が成されていると感じる。
パリには美しい女性が似合う・・・なんていう間抜けな思い込みは、私に限って言えば
2015年の今でも有効である。(笑)
5月の日曜日、か・・・。
ケメという女性は多才な人である。勿論、多才は多彩と書くこともできる。
ちょっと懐かしいような、私からすれば気恥ずかしいようなメロディーに歌詞を乗せ
アコースティック・ギターを弾くSSWの側面があれば、エレキギターに強烈な
エフェクトを効かせてサーフ・バンドを牽引する。どちらも嫌いではない。(笑)
個人的な趣味を押し出せば、サーフ・ギターの音が好きなので今回は発売された
ばかりのトーキョー・キラーの「トーキョー☆キラーストリート」を取り上げる。
12年に4曲入りの7インチがリリースされたが、今回は待望のフル・アルバム。
とはいってもCDだと11曲入りで収録時間は、わずか30分ちょっと。この潔さが
かつてのサーフ・インスト・バンドのようで短いと感じつつも燃える。(笑)
往年の名曲に混ざってメンバー作のインストが4曲あるのだが、その出来が不足ないので
違和感なく聴きとおせる。勝手な物言いだが、サーフ・インストの曲のメロディー・ラインを
書くのはそれほど難しくないと思っている。メロディーの改変や曲の起伏を少し捻れば
参考になる過去曲から何曲もできる可能性が容易にあるからなのだが、それをバンドの
音として完成させるとなると、これが難しいのではと考えるのだ。そう思えばここでの
メンバーのセンスは素晴らしいということになる。おっと、そこに付け加えれば
オリジナルの4曲を4人のメンバーが1曲ずつ持ち寄っているというのも素敵だ。
サーフ・バンドが取り上げるお馴染みの曲の中に混じって、琴線を擽るのが頭脳警察の
『真夜中のマリア』のカバー。出演が予定されながら叶わなかった昨年の「UNTI
CHRISTMAS」にケメが参加していたらこの曲が演奏されたのだろうか。なんて想像
してしまうのだが、それはともかくここでのギターと鍵盤の組み合わせが絶妙で
実に怪しくも艶っぽい。リンク・レイの『SWITCHBLADE』を取り上げているのも
渋い。
ケメは絵的にも可愛らしいので、この音で夏フェスなんかに出れば強烈な印象を
残すのでは、なんて下種なことを考えてしまう私は阿呆なのだが、愛聴盤になるのは
間違いない。DVD出ないかなぁ。(笑)