「レ・ミゼラブル」は、小学生の時に少年少女版の「ああ無情」を読み、ミュージカルにはまっていた頃に鹿島茂著『レ・ミゼラブル百六景』(文春文庫)も読んだ。
ユゴーの原作の小説も古本屋でまとめてGETしてあったが、一巻の冒頭で投げ出してしまった。それが冒頭の写真の新潮文庫版だ。
表紙になっているのはバルジャンをリーアム・ニーソン、ジャベールをジェフリー・ラッシュが演じた映画版のものだ。娘と一緒に観て、ジャベールが自殺してバルジャンが解放されたことを喜んだところで終わるという演出に二人して怒ったものだった。
ミュージカル版の映画化作品を昨年末に観てから、またこの作品を深く味わいたいという気持ちが強くなった。
自宅の収納庫の奥深くしまいこんでいた文庫本5冊を引っ張り出した。(現在の新潮文庫版はこちら)
友人が便利だと教えてくれた東急Bunkamura地下のミュージアムショップで買ったホールマークの防水紙でゴムバンド付きのブックカバーをこの読書から使用開始。歌舞伎座こけら落し公演の「京鹿子娘二人道成寺」のブックマークも使いながら読み進めている(いずれも冒頭の写真に一緒に写っている)。
『レ・ミゼラブル百六景』でも省略されてしまっていたユゴーの緻密な物語展開に圧倒されている。
たとえば、ミリエル司教について。彼はフランス大革命でイタリアに亡命して聖職者になってその後の王政復古で戻ってきた方で、革命議会議員の最後を看取る時には1793年のルイ16世の処刑にこだわった話をしてしまい、死にゆく人が最後の力を振り絞った反論に考え込まされ、スタンスを変えることはなかったが、より貧しい人にやさしくなった。
日本の私たちは、フランス革命後のフランス社会の紆余曲折をよく知らない人が多いと思う。私も「ベルサイユのばら」や「マリー・アントワネット」などで革命の光と影を知っていたような気になっていた。
ジャコバン派による恐怖政治、ナポレオンによるクーデターと帝政、その後の復古王政と激動する中に「レ・ミゼラブル」の世界はある。権力を握る勢力がころころと変わり、掌返しのようにそれに迎合する人々、排斥される人々のいずれも必死に生きている。
その中でもとにかく貧しい人々のためにすべてを捧げようとする司教の姿に圧倒され、革命議会議員とのやりとりのくだりでまず涙腺決壊!
第1章が「ファンチーヌ」とされるほどで、学生たちとのグループ恋愛と遊んで捨てられた様子も丁寧に描かれるし、工場をやめさせられる場面、亡くなる場面などはミュージカル版とは全く違っている。話をずいぶんと変えることで長い物語を極端に短くしていることもわかった。
司教によって生まれ変わるように諭されたバルジャンが心を決めるまでの葛藤、人違いで自分として重罪に問われてしまう男を救うために自首するかどうかの苦悶苦闘のもの凄さ!
第1巻だけでも3回くらい泣けてしまった。フランスの近現代の歴史をきちんと踏まえた作品だなぁと感心しながら読み進めている。こんなに左右に大きくぶれた歴史的体験をしたフランス人がシニカルな民族性をもつのか、感覚的にもよくわかってしまった。
悩み多い時期には、これくらい真面目な大作とがっぷり四つに組んでみるのもいいなぁと思いつつ、あと4冊頑張ります!!
Wikipediaの「レ・ミゼラブル」の項はこちら
それから河出書房新社版レ・ミゼラブル全3巻でした。もう帯もボロボロです。古本だったのか、覚えていません。
ただでさえ落ち込む日本の情勢、ぴかちゅうさんはお嬢様のことも御心配でしょう。うちもまだ二男が独身です。
ガップリ四つに組んで少しずつ少しずつ読み進んでいます。目の調子の良い時はそのままで、よく見えない時は老眼鏡をかけて電車の中で少しずつです。座れると眠くなってしまうので、この赤いゴム付きのブックカバーで閉じてリュックに入れて抱えて寝てしまう・・・・・・ホントに少しずつしか進まないのですが面白いんです。
★「猫と薔薇、演劇、旅ファン」のhitomi様
2本もTBを有難うございますm(_ _)m
鹿島茂著『レ・ミゼラブル百六景は、昨年末のミュージカルの映画版公開に合わせて文春から新装版が出ていたんですね。その情報を名前欄のURLにも入れておきました。5冊読まれた原作はどちらの文庫でしたか?私は偶然セットで手に入れた新潮文庫版です。図書館で確認してきたところ、旧版は字が小さかったですが、私のものはなんとか耐えられる大きさの文字でした。翻訳もまぁ読みやすいかな。
ユゴーの邸宅訪問はよかったですね。
ミュージカルの御蔭で子供の時読んだ「ああ無情」から文庫本5冊読んだりユゴーの邸宅を訪問することができました。TBさせてくださいね。