職場の友人に岩波文庫の『植木枝盛選集』をすすめられ、お借りして読んだ。
なんと編者は教科書裁判で有名な家永三郎氏。母校中央大学で私のお隣の政治学科の教授に着任された時に、一度授業を傍聴しにいった。マンモス私大の大教室がいっぱいで、いかに話題の人かを痛感したものだ。申し訳ないがお話の仕方はあまりインパクトがなかったので、それっきりになってしまったが、『植木枝盛選集』の巻末の解説の文章を読んで30数年ぶりに後悔した。あまりにも面白い文章で一気読みした。
戦前、憲法学者で法制史家の鈴木安蔵が植木枝盛を研究し、終戦後に民間の有識者で結成された憲法研究会に参加。研究会が1945年12月に発表した「憲法草案要綱」で、鈴木安蔵は植木の憲法案を参考の一つにしたと明言している。
鈴木安蔵は「映画 日本の青空」の主人公だっけと、映画を観た記憶とつながった。高橋和也が好演していて、高野岩三郎役の加藤剛も存在感があった。
Wikipediaの「植木枝盛」の項はこちら
戦後は家永三郎によって研究が進められたということで、この選集も家永氏による。解説文を読むだけで「いい仕事をしていますねぇ」と唸らされた。
本文を読まずに解説だけで感想をアップされている「amamuの日記」さんの記事に共感。
この本全体については、「法学館憲法研究所」の水島朝穂さんの紹介記事がわかりやすい。
植木枝盛は、人間の生きる目的を幸福になることとしており、そのために必要なのが自由であり、その自由は何者にも保障されるべきだと考え、民権を主張する。立憲民主主義の根底にその思想がある。身分や納税額や男女などあらゆることでの不平等もなくし、教育をきちんと受けて主体的に生きる人間がそれぞれ幸福になることを追求しながら、皆の参加で力を合わせてつくりあげる社会を描き出す。地方自治を徹底し、地方の組織を調整するために中央政府が必要と考えられる。
世界の国々の関係についても同じように発想され、世界公法のもとに無上政府(国連のような組織?!)を組織し、大国と小国も対等平等に関係を結ぶという論を展開する。それぞれの国民の幸福のためには大国もどんどん小国に分割して運営していく方が主体的に関わっていきやすいという考え方にはびっくりさせられる。国家というものが不要になる時代の到来もイメージされている。
家永氏の解説に触発され、植木枝盛本人の著作を読み進む。さすがに明治時代の文章ですいすいと読めるというわけではないが、自由民権運動の演説の口調という風な文章もあるし、「民権数え歌」というものも付記されていて、リズム感に乗ってしまえばなかなか快感だった。
家族制度からの個人の解放論も婦人参政権を含む男女同権論は、今からすると当然すぎるが、敗戦によってようやく実現したのだとあらためて感慨深い。
本文を読み終わって、家永氏の解説を読み直している時に、他の本を買いに東急百貨店本店にある「丸善&ジュンク堂書店」に行ったら、岩波文庫のコーナーで見つけてしまった。これは自分でも持っていようとしっかり買い込んだ。
「映画 日本国憲法」上映会&監督講演会の記事とともに、歴史的な参議院選挙の前に書いておかなければ一生後悔しそうなので、頑張ってアップした次第。
「検定不合格日本史」や歴史の本を読み、講演会も行きました。
当時どこが検定不合格と思いました。
加藤剛さんは郡上一揆など大事な映画には必ずと言っていいほど登場されました。
安部のような人は全然憲法が何たるものか理解できず王権神授説で止まっている?
雑誌世界でも総理が馬鹿でもいい、自分たちも勉強しないで楽という考えだと載っていました。驚くべき考え方です。自分たちがいかに危険と隣り合わせ科、自分たちで不幸を招いているとしか思えません。選挙結果心配です。
ある人は選挙に投票に行く!?、自民党に入れたと!
『映画 日本の青空』の主人公、鈴木安蔵が研究していた植木枝盛の選集を読むことができてよかったです。
戦後は家永三郎によって研究が進められたということで、この選集も家永氏によるもので、解説文を読むだけで「いい仕事をしていますねぇ」と唸ってしまうほどでした。解説文だけでも読まれることをおすすめします。
選挙結果はかなりつらいものになりましたが、これも戦後の民主主義を強めていこうという勢力がうまく育たなかったことの結果だと思います。しかしながら、あきらめずに周囲と話をしていく努力を続けていくしかないと思っています。