ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/05/25 團菊祭千穐楽夜の部②萬次郎の「女暫」

2007-06-03 21:39:52 | 観劇

「女暫」は「十七世市村羽左衛門七回忌追善狂言」。今月は歌舞伎座正面入って左手に写真と花を飾った追善の壇が設けられている。十七世の当たり役のひとつだった「暫」の鎌倉権五郎を子息で女方の市村萬次郎が「女暫」で巴御前で主演、ウケの敵役に彦三郎、太刀下に権十郎と三兄弟揃っての追善狂言となった。
「暫」も「女暫」も未見。「暫」は荒事師による祝祭劇で、海老蔵襲名公演を幕見にいったら札止めで玉砕。NHKでその公演の録画のオンエアをチラチラと少し見たが、お話としてはあまりに他愛ないので驚いたものだ。
今回はその主人公を女性にしたバージョン。女方が大がかりな扮装をして演じるが、その拵えを写真で見ただけでもカッコいい。さてどうだろう。
ウィキペディアで「暫」の記事はこちら
【女暫(おんなしばらく)】
今回の主な配役はこちら。( )内はウィキペディアにあった「暫」の役の位置づけを入れてみた。
(主役)巴御前=萬次郎  (ウケ)蒲冠者範頼=彦三郎 
(太刀下)清水冠者義高=権十郎  許婚・紅梅姫=亀寿 
木曽次郎=松也  木曽駒若丸=梅枝  手塚太郎=光  
家老根井主膳=秀調  局唐糸=右之助
(鯰)轟坊震斎=松緑  (女鯰)若菜=菊之助
(腹出し)成田五郎=海老蔵、東条五郎=男女蔵、江田源三=亀三郎、武蔵九郎=亀蔵、猪俣平六=團蔵
舞台番=三津五郎                   
     
あらすじは以下の通り。
北野天神社に参詣にやってきたのは権力をふるう蒲冠者範頼ら一行。そこに木曽義仲の遺児の清水冠者義高らもやってくる。範頼が権勢をかさにきて金冠白衣という身分を超えた衣裳をまとっての参詣。それを義仲が諫めると、範頼は義高一行を斬るよう成田五郎らに命じる。そこへ「しばらーく」の声を響かせて花道から女武道の巴御前(義仲の愛妾)が登場。鯰や女鯰との軽妙なやりとりの後、範頼をやりこめて義仲ら一行を逃がす。追っ手に向かう仕丁たちを大刀でなで斬りにする超人ぶりを発揮。
そこまでを劇中劇風にすべく舞台番が登場。巴御前は女方の役者に戻って大立ち回りをしたことを恥じらうあたりが可愛らしい。最後は花道の引っ込み方を舞台番に習って六方の真似事をして恥じらいながらの引っ込み(三津五郎は羽左衛門がこうやっていたと教えていて、またまたニクイこと!)。

とにかく萬次郎の巴御前がカッコいい。萬次郎はPARCO歌舞伎「決闘!高田馬場」のお梅婆さんで印象に強烈に残ってしまい、それ以降しっかり注目している。かなり個性的な声で通りがよく台詞回しも明晰。その声で「しばらくしばらく、しばらーく」と聞こえてくれば期待が高まる。凧のように張った大きな素襖の袖には橘屋の紋が白く染め抜かれている。頭に紅白の梅花の飾りをつけた女武道の巴御前の拵えに負けない大きな目。この目が悪人たちを睨む時にきくのだ。
いつも脇役ばかりの萬次郎だが、この役はとてもハマり役だと思った。この巴御前の役は必ずしも美人顔である必要がない。それよりもこの声とこの目が一番の威力になっている。(この花道での舞台写真、やっぱりGET!)
三津五郎の舞台番が花道での引っ込み方を教えるところもよかった。その脇で恥ずかしがる萬次郎、大きな眼で睨んだ後だとさらに可愛く感じてしまう(この可愛さをフェアリーと表現したてぬぐいさんの記事もご紹介したい→こちら)。
兄弟や橘屋の総力結集、海老蔵・松緑・菊之助も花を添えての見ごたえのある一幕だった。評判がよかったので昼の部を観た日に幕見したいと思ったほどだ。体調が今ひとつだったのとけっこう並んでいたので断念してしまった。
今回が初役だということで、最後の引っ込みの前の挨拶で「初日から今日の千穐楽までこの大役をつとめることができた」と謝意を述べる萬次郎の感無量な様子にこちらも思わず胸が熱くなって涙が出てきてしまった。これからも機会あるごとにやっていただきたいと思った。

そうそうイヤホンガイドによると「鯰」とか「女鯰」というのはあの髪型に由来しているのだという。海老蔵をはじめとした腹出しの面々もまたよかった。でも顔の色はなるべく揃えるようにした方がいいと何かで読んだが、見事にバラバラだった。うるさく言う人がいなくなったのだろう。十七世羽左衛門存命中は観ていないが、かなり博識でこだわりが強かったという話を読んでいる。その頃だったらどうだったろうか。

以下、この公演の別の演目の感想
5/13昼の部①團菊の「勧進帳」
5/13昼の部②「泥棒と若殿」
5/13昼の部③「切られ与三」「女伊達」
5/25千穐楽夜の部①「雨の五郎」「三ツ面子守」
5/25千穐楽夜の部③「め組の喧嘩」


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6 コメント

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VIVA!萬ちゃん (かしまし娘)
2007-06-04 11:53:02
ぴかちゅう様、まいど!
羽左衛門亡き後、あまり光があたっているように見えなかった橘屋に
ピカッと来た月でした。
やっぱり、PARCO歌舞伎からチェック入れてる人多いですね、イイことだ!
『女暫』は玉三郎の残像がちらついて、私は巴御前の萬ちゃんより、
その後「め組」でいつもの様に脇で出た時に、
やっぱりこっちの方がスポっとツボにはまるな。と実感しました。
兎にも角にも、橘屋がクローズアップされて本当に嬉しかった。
萬ちゃんのおめめパッチリとあの声を応援します!
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★かしまし娘さま (ぴかちゅう)
2007-06-05 01:11:20
萬次郎さんはいつも脇役ばかりなので、この役は大役ですが、かなりハマり役だと思いました。この巴御前にはあの声と大きな目がきいてました。千穐楽の最後のご挨拶に私もしっかり泣かされてしまいました。
是非これからも橘屋の何かの機会の度にやっていただきたいと切望します!
もちろん普段のお役も応援します。エイエイオー!
(注)かしまし娘さんの記事はお名前の欄をクリックすると読むことができます(^O^)/
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萬次郎さんは要チェックですね (六条亭)
2007-06-05 22:20:12
こん♪♪は。

いつもありがとうございますm(__)m。こちらから『女暫』の記事にTBをうちました。

萬次郎さんの巴御前役での女暫は、玉三郎さんとはまたひと味違い、堂々たるものでした。今後も萬次郎さんは要チェックですね。
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★六条亭さま (ぴかちゅう)
2007-06-06 00:47:17
TBも有難うございますm(_ _)m
玉三郎丈の巴御前ももちろん観てみたいですが、予想以上に萬次郎の巴御前のよさに満足。これからも機会があればやって欲しいと思うくらいでした。「暫」もTVでチラっと見ただけなので一度しっかり観てみたいと思いました。
玉三郎丈は9月秀山祭で「阿古屋」をやっていただけるようですね。DVDを買って予習してみようかと思っています。
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お手数かけます。 (てぬぐい…)
2007-06-15 00:09:51
TB受け取りました。
 :
私もPARCO歌舞伎からの注目組です。
「女暫」、いま思い返してみても、あたたかく、心潤う一幕です。
中央で刀を構えている写真を買いました。
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★てぬぐい…様 (ぴかちゅう)
2007-06-16 13:44:50
この萬次郎の巴御前の可愛さをフェアリーと表現していただいたこと、言いえて妙です。遅ればせながら私の記事の中でご紹介させていただきました。
>中央で刀を構えている写真を買いました......私もそちらと花道での写真と最後まで迷いましたが、アップの方にしてしまいました。しかし舞台写真のファイルが増える一方で・・・・・・(^^ゞ
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