ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/05/13 團菊祭昼の部①團菊の「勧進帳」で落涙(T-T)

2007-05-13 23:58:21 | 観劇

まずは團菊の「勧進帳」の感想から書きたい。初めて「勧進帳」という作品の面白さがわかった!
「勧進帳」は4回目。初回の吉右衛門の弁慶の時は観ている時の体調もよくなくて感想アップを断念。2回目・3回目は以下の通り。
昨年11月花形歌舞伎の「勧進帳」の感想はこちら
今年1月歌舞伎座の幸四郎の「勧進帳」の感想はこちら(この記事の中ではNHKの1/2「初芝居生中継」松竹座の團十郎・海老蔵・藤十郎による「勧進帳」の感想も比較で書いている。)
今回は初めての團菊コンビの弁慶×富樫の舞台。九代目團十郎・五代目菊五郎・五世歌右衛門で天覧歌舞伎になってから120年を記念した舞台でもある。
下記のサイトをこの間参考にさせていただいているが、今回も目を通してから本番にのぞんだ。
こちらのHPをご紹介

1.「歌舞伎十八番の内 勧進帳」
今回の配役は以下の通り。
武蔵坊弁慶=團十郎  富樫左衛門=菊五郎
亀井六郎=友右衛門   片岡八郎=家橘
駿河次郎=右之助   常陸坊海尊=團蔵
源義経=梅玉
菊五郎の富樫は冒頭の語りから聞かせてくれる。そこに義経主従が花道に登場。團十郎の登場でいよいよ役者が揃う。梅玉の義経が網代笠を上げて顔を見せ、「いかに弁慶~」の台詞。梅玉は3月の「義経千本桜」で昼夜義経を通しで出ていたイメージとスッとつながって義経そのもの。四天王もベテランを揃えてきている。

團十郎の弁慶。團十郎は台詞のしゃべり出しが間延びするのがいつも気になるが今回も同様。ところが姿形や表情が立派なので本舞台に行くと、もうそれだけで弁慶ここにありという感じがする。
富樫との台詞のやりとりが始まると一変。台詞回しの間合いもよくなって弁慶の魅力度が上がってくる。これはやはり富樫との相性で盛り上がる芝居なのだと確信を持った。このコンビは年長の菊五郎が冒頭に團十郎をうまく乗せていっているように思えた。團十郎はいったんノリ出すとどんどん迫力が爆発していくという印象がある。
そしてあくまでも菊五郎の富樫は抑え目だ。山伏問答でもこのコンビはヒートアップしない。しっかりと納得がいくまでの問答がすすめられるという感じ。それで富樫が本当の勧進の一行だと思えると、仏門の権威にもへつらうことにしてサっと布施物を用意させたりするのも自然。田舎の関守の分を越さない。
ところが番卒の一人が「強力が判官に似ている」と進言すれば、鎌倉殿の権威を思い出して保身優先で詮議しようとする。ここの富樫たちと弁慶たちの睨み合いがすごかった。それまでを抑えているからここで緊迫感が出てくる。その緊迫が極まってとっさに機転をきかせた弁慶が明らかに主人と思われる人間を打擲する様にハッとする感じがはっきり見てとれた。義経主従を武士としてそこまで追い込んでしまってすまないという気持ちになり、自分に罪が及ぶのを覚悟してでも逃がそうという決意を固めたというこの辺の芝居がよく見えたのだ。そして泣き上げて上手から引っ込む時もおおげさには泣かない。
ところが、観ているこちらの方がその富樫の気持ちに打たれて涙が出てきた。「男心に男が惚れた~」というようなドラマをここまで見せてくれたことに胸を打たれてしまったのだ。菊五郎の1月からこっちの芝居がすごくよくて今回の富樫も大満足!

團十郎の弁慶は、いろいろな見得のところもしっかりときめながら、海老蔵のように目をむきすぎることもないのが私には好ましい。そしてあの大きな目は愛嬌たっぷりな場面にもしっかりと活躍するのが魅力的。無礼を詫びに餞の酒を持って再び登場する富樫たちの酒をひとりで飲み干しての酔態、「延年の舞」のあたりも楽しめる。
本舞台に残って見送る菊五郎の立ち姿に気持ちがあふれているので、幕がしまった後での弁慶が富樫に感謝して頭を垂れる姿にも気持ちのやりとりの確かさがしっかりと伝わってきた。さすがに團十郎×菊五郎の「勧進帳」を観たという満足感でいっぱいになった。
幕外の引っ込みは大御馳走のあとのデザートといった感じで観ていた。3階1列目でも最初しか見えないというのもあるが(^^ゞ

観る方もようやく観る力が少しずつついてきたということかもしれないが、こんなに満足できた「勧進帳」は初めてだ。GWの教育TVでのパリオペラ座の「勧進帳」の録画もお借りして観ることができそうなので、そちらも楽しみに観たいと思っている(ただし期待していた弁慶=海老蔵、富樫=團十郎の方のバージョンではなかったのが残念だが)。

追記
富樫に「判官に似ている」と注進した番卒に菊十郎が出ていて嬉しかった。最初から個性的な声でわかった。こういうベテラン脇役は貴重な存在だと思う。
写真は公式サイトより今月のチラシ画像(後から写真を入れ替えた)。
以下、この公演の別の演目の感想
5/13昼の部②「泥棒と若殿」
5/13昼の部③「切られ与三」「女伊達」
5/25千穐楽夜の部①「雨の五郎」「三ツ面子守」
5/25千穐楽夜の部②萬次郎の「女暫」
5/25千穐楽夜の部③「め組の喧嘩」


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
團十郎さんの弁慶が好き (harumichin)
2007-05-14 01:03:55
以前、期待をして見に行った吉右衛門が、はずれだった時はかなりがっかり・・
でも、「あの時は体調が悪かった」と聞き、改めて機会があれば見たいと願っています。
でも私は、現在弁慶を演じる方々の中で、團十郎さんが、一番好きです。
團十郎さんの大らかさが、弁慶にも現れているように感じます。
團十郎さんに、野球の長嶋さんのような太陽のような雰囲気を感じてしまいます。
といって王さんに菊五郎は似てませんけど(笑)
あのコンビは、何をやっても様になります。
だから團菊は・・って、通いこんでしまいます。
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一年で一番うれしい團菊祭! (さちぎく)
2007-05-14 12:06:20
私も当代の弁慶役者は團十郎さんに決まり。セリフがちょっと・・・とか何とやらおっしゃる人もいますが、大きさ、信頼感、マスクと成田屋が良いですね。
対する富樫の音羽屋も良い、義経の梅玉さんも本当に品といい、セリフといい良かったです。またかの関!でしたが良い「勧進帳」でしたね。
8日に一緒にいった友人は「富樫の存在感が大きかった、素晴らしかった」と言っていました。
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菊五郎劇団贔屓のおふたり様! (ぴかちゅう)
2007-05-14 21:34:36
コメント有難うございますm(_ _)m
★harumichinさま
渡辺保氏の今月の劇評を読むと、團十郎丈のニンは富樫、菊五郎丈のニンは義経ということです。じゃぁ、そのふたりにニンの役をやっていただいてバランスがとれるベテランの弁慶役者は当代では誰がいいんでしょうと先生に聞いてみたいです。
私は今回の3人はすごくよかったです。harumichinさんのベスト、團十郎=弁慶、仁左衛門=富樫、義経=菊五郎ももちろん絶対観たいんですけど、歌舞伎座じゃやってくれないのかしら。どうしても東京だと仁左衛門さんの扱いが関西よりは小さくなってしまうようですもんね。でも歌舞伎座で観たいです。

★さちぎく様
さちぎくさんのブログでご紹介されていた梅玉さんのサイトで今回の義経をつとめるにあたっての気持ちが書かれた文章に感じ入りました。ご紹介させていただきますm(_ _)m
http://www.sachigiku.com/2007/05/post_428d.html
>「富樫の存在感が大きかった、素晴らしかった」......そういうお友達の方と私も同意見です。だから團十郎弁慶がさらに良くなったんじゃないかと思ってます。團十郎さん、病気から復活されてからの活躍が素晴らしいですよね。
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TBさせて頂きました。 (dream)
2007-05-15 22:54:32
TB&コメントありがとうございました。
こちらからもTBさせて頂きました。
勧進帳・・・流石!團十郎様&菊五郎様は、安定感
があり趣きもありましたね。
泥棒と若殿・・・ほろりとする良い話でした。松緑
さんと三津五郎さんのお芝居に引き込まれました。
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★「夢日記」のdreamさま (ぴかちゅう)
2007-05-16 00:44:22
TB&コメント返し有難うございますm(_ _)m
團十郎×菊五郎のよさは実は「先代萩」の仁木弾正と政岡でも感じたところです。今月の夜の「め組の喧嘩」もよさそうですね。千穐楽で観る予定なので楽しみが増しています。
「泥棒と若殿」の感想、次に書くつもりです。
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