ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

11/09/17 秀山祭夜の部①「車引」は凄かった!

2011-09-24 20:47:30 | 観劇

6回目となる秀山祭は、播磨屋一門の中村歌昇改め 三代目中村又五郎、中村種太郎改め 四代目 中村歌昇、という父子の襲名披露がメインの公演。しかしながら、初日に襲名披露公演の主役の新又五郎が足の大怪我をして、それをおして舞台をつとめているという情報があちこちから聞こえてきた(右足のアキレス腱損傷とのこと)。
17日に口上のある夜の部を先に観劇。本当に怪我はひどそうで、見ていて気の毒で仕方がなかったが、それでも本当に見事だった「車引」からアップしよう。

これまでの「車引」で歌舞伎座さよなら公演の2010年1月の舞台が素晴らしかったのだが、今回も実に見応えのある舞台となった。

【菅原伝授手習鑑 車引】
今回の主な配役は以下の通り。
梅王丸=歌昇改め又五郎 桜丸=藤十郎
杉王丸=種太郎改め歌昇
松王丸=吉右衛門 藤原時平=歌六
梅王丸の新又五郎の裾からのぞく足が見るからに痛々しい。アキレス腱を縮めて固定するギプスをしながらも杖なしで歩けるようにするためか、踵が大きく上がったブーツのような形にした上で赤い筋を描いた白いタイツを着用されている。そして黒衣が高合引を適宜もってきて足への負担を減らしている。見苦しくないようにバランスをとって歩いたり、精一杯の形で足を大きく開いて極まったりするのをその都度ホッとしながら見守った。
新又五郎の魅力はよく通る声で明瞭な台詞を響かせてくれる口跡のよさ。顔も荒事のお役がよく似合い、大きな目が効く。

藤十郎の桜丸は実に柔らか味にあふれている。斎世親王の舎人として苅屋姫との間をとりもったことが菅丞相流罪につながった責めを負って自害する覚悟を語る台詞が実に胸に迫る。前回の芝翫もよかったが、やはり武智歌舞伎で鍛え抜かれた藤十郎の台詞の情感のこもり方はさすがだ。露払いの金棒引きから時平の参籠を知って吉田神社社頭にかけつけようと、二人が気合を入れて履物を脱ぎ捨て肌脱ぎとなると藤十郎の襦袢はピンク色であった。そういえば、むきみの隈取なしの普通の若衆の白い顔だった。他にもいろいろと上方の型の特徴があったらしい。
梅王丸の飛び六法は今回は無理なので、二人とも花道ではなく袖に引っ込むかたちに変更されていた。新又五郎が一番悔しいだろう。

社頭ではまず杉王丸が二人をとどめる。種太郎改め歌昇は2008年2月の歌舞伎座で松緑の梅王丸、橋之助の松王丸の時に杉王丸を演じている。今回は襲名披露の演目として今回の大顔合わせの舞台でもよく通る声で聞き取りやすい台詞回しで実に堂々と演じたのは立派。新歌昇は吉右衛門を一番尊敬しているとのことで、父ともども播磨屋一門になったことで若手としての芸の継承が期待できる。

そして奥から「待てエエ」の声がして、ついに吉右衛門の松王丸が登場。その大きさで舞台の空気が一変する!肌を脱ぐと白地に見取りの松の襦袢。三つ子で三色になるのも美しい。この秋に吉右衛門も人間国宝になっており、藤十郎と二人の人間国宝とともに「車引」での襲名披露というのは、新又五郎襲名の演目としてはかなり凄いことなのだと思う。
吉右衛門の松王丸がその運びのイキのよさ、強さでぐいぐいと荒事の舞台のテンションが高まる。三人で絵面に極まる場面の見事さ。新又五郎のギプスの足は痛々しいがそれで少し背も高く見えて、さらに見栄えもよくなったようにも思えるくらいだった(不謹慎でごめんなさい)。

吉右衛門の松王丸は、芸の進化と播磨屋一門を率いる意欲の高まりを見せつけてくれたのも嬉しい。
夜の部はとにかく「車引」が一番だった。昼の部は明日の千穐楽で観るが、「寺子屋」が楽しみ。「菅原伝授手習鑑」からの演目を昼夜とも吉右衛門の松王丸で見せる趣向のようだ。


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2 コメント

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Unknown (ティナフジワラ)
2011-09-25 09:31:30
又五郎さんは足ケガしてたんですか?だから飛び六法やらなかったんですね。車引きって本来はもっとたくさん動きがあるものだけど省略したのかな。だとしたら残念…次回に期待です!
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★ティナフジワラ様 (ぴかちゅう)
2011-10-02 21:30:28
返事が遅くなってごめんなさいm(_ _)m
又五郎さんの足の怪我はかなりひどそうでした。あんなギプス固定の足でよくあそこまで動けたものだと思いながら見ていました。襲名披露興行はしばらく続くので早くよくなって万全な身体で舞台をつとめられるようになっていただきたいと祈念しています。
「車引」を東京で観ようと思うと、平成中村座十二月歌舞伎での「菅原伝授手習鑑」の半通し上演でも観ることができますよ。
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