ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

12/06/05 澤瀉屋の団体襲名披露公演初日昼の部(1)涙、涙の「口上」

2012-06-05 23:58:45 | 観劇

澤瀉屋の団体襲名披露公演の新橋演舞場「六月大歌舞伎」が6/5に開幕。初日昼の部に仕事を休んでかけつける。まずは「口上」から記事アップ。
冒頭の写真は、福山雅治よりと書かれた祝幕を3階左席から撮影したもの。左端は三猿紋の下に小さく五代目市川團子丈江とあるが、手すりに隠れてしまった。白地に隈取からのデザインというのが目新しい。この祝幕と特製口上ポスターの企画は亀治郎がましゃ兄に頼んで実現したらしい(中日スポーツの記事はこちら)。そうそう、このポスターは1階ロビーにあるモニター画面に映し出されていたのが目に入ったっけ。

【初代市川猿翁 三代目市川段四郎 五十回忌追善 二代目市川猿翁 四代目市川猿之助 九代目市川中車襲名披露 五代目市川團子初舞台 口上】
今や歌舞伎界の最重鎮である坂田藤十郎が進行役となる口上は初めて観たが、折りたたんだ紙に筆書きをしたものをきちんと読み上げるようにしたのはあまりにも読み上げるべき名前が多すぎるので間違えないようにするためか、古い型なのかはわからない。新猿翁と月乃介の姿がないのが気になった。
続いて、段四郎、彌十郎、門之助、寿猿、竹三郎、秀太郎、ここで下手に渡り、右近、猿弥、春猿、笑三郎、笑也。彌十郎は安徳帝で初お目見えした際に抱いていて腕が痺れたエピソードを語り、猿之助一門にいた人だよなぁと再認識。古参の弟子の寿猿は、三代目猿之助襲名披露から50年・・・と語っていて、10倍の双眼鏡で見ているので赤い紙に口上を書きつけて一生懸命だなぁと思っていたら涙が落ちるのまで見え、私の涙腺も一気に緩んでしまった。
秀太郎は中車の今からの歌舞伎入りは本当に大変だろうと言いつつ温かく応援のメッセージを送り、右近以下の一門の弟子たちの短い口上が続く。
いよいよ襲名する面々の口上となる。
四代目猿之助は、「歌舞伎のために命を捨てる覚悟」と言い切った。各方面への感謝を語る中で「目に見えるもの、目に見えないもの、お世話になった方々、亡くなっているお世話になった方々に感謝申し上げ」という表現でスピリチュアルな物言いも飛び出した(ふっと亡くなった雀右衛門がよぎってしまった)。この間のTV出演等で亀治郎という名前への強い愛着を語っていたが、「今日、猿之助を襲名いたしまして嬉しさ100%になった」と笑わせる。梅原猛先生にも相談したら「ニーチェの運命愛」のようにあなたの運命を受け入れて愛しなさいと言われたとも語った。ユーモアたっぷりに時には煙に巻くようなことも織り交ぜつつの口上に何度も客席が湧いた。それと段治郎が月乃介となった名披露目の挨拶もここですべきところ、膝が悪いので列座できないと触れてくれ、配慮が行き届いているなぁと嬉しかった。この間いよいよ座頭の顔になってきたなぁと思ってきたが、さらにその思いを強くした。

中車が顔を上げた瞬間、あまりにも必死な形相をしているのでびっくりした。大汗をかいているので化粧もかなりくずれてしまっている。口上でこんな顔を見ることは後にも先にもないだろうと思えた。「この年で歌舞伎の舞台に初お目見えとなりますが、これから先の生涯をかけまして精進し、九代目中車を名乗る責任を果たしてまいりたい」という言葉にもぐっときてしまった。涙で目の周りのメイクもくずれてしまっていたが、万感の思いが伝わってきた。息子が生まれてからずっとこの日に向けて頑張ってきて、これから先も息子が歌舞伎界でやっていける目星がつくまで、気を抜ける日は来ないのだろうなぁと、「父親としての責任」を重く背負ってしまった彼の人生も思いやってしまった。
その息子くん五代目團子は、「猿翁のおじい様よりずっと立派な俳優になることが私の夢でございます」と大胆な夢を語ったが、その声が通って立派だったことに感心。猿翁の本名政彦の一字をとって政明と名づけたと思われ、この祖父と孫は顔もよく似ている。九代目中車も三代目段四郎によく似ていて、DNAの隔世遺伝を強く思わせる。

そのおじい様が最後に登場。藤十郎の声で背景の澤瀉模様の襖が開き、猿翁が乗った台を弟子たちが押し出して登場。脳梗塞で倒れて以来の舞台復帰であり、「いずれも様も相変わらぬ御贔屓のほど隅から隅までずずずぃーとこい願い上げ奉りまする」という言葉も「あ~げ奉りまする」しか聞き取れず(帰宅後のTVの字幕でわかった)。しかしながら、最後に鳴り物にあわせて首を振るという型をしっかり見せたのには往年の「車引」でのこの所作が立派だったんだろうなと思わせた。

三代目猿之助が病に倒れてから約8年ぶりの舞台復帰、4つの名跡の襲名披露公演初日はマスコミの取材もたくさん入り、口上の中継オンエアも各社であったようで、TVカメラクルーがものすごかったようだ。客席の雰囲気も熱気にあふれ、涙をすする音もあちこちから聞こえ、笑い声や大きな拍手で劇場全体がどよめいて、これまで私が観た口上の中でも忘れられないものとなった。
仕事を休ませてもらって観ることができたことは、本当に有難かった。

「歌舞伎美人」の開幕のニュース記事はこちら
その記事の中で、澤瀉屋の「瀉」のつくりは正しくは"わかんむり"ですとあったが、知らなかった(^^ゞまぁ、なかなか出てこない字なのでこちらのブログでもこれからもお許しいただこう。

帰宅して、NHKの7時台と9時台のニュース、日本テレビの「NEWS ZERO」での報道を見た。のNHK7時台では眺めに時間をとって猿之助、中車、團子、猿翁の口上と昼と夜の舞台映像が流れたが、9時台は短くされていた。「NEWS ZERO」では香川照之の歌舞伎進出ということに重点を置いた報道ぶりだった。やっぱり映像の世界では香川照之の方がビッグネームだからなぁ。

さて、幕間、終演後の出来事を。
3階席の左のロビーの長椅子に大向こうさんたちが情報交換をしているのをお聞きするのはけっこう楽しい。その中で「亀ちゃんのお母さんが来ているから挨拶にいこう」というのを耳にして、何気なく私も離れてついていった。1階ロビーの澤瀉屋の受付のところに、先客さんとお話をしている着物姿の女性の近くで大向こうさんが順番待ち。その時に初めてお母さんがわかった。着物には流水模様に澤瀉があしらわれたデザインがあちこちに描かれていて、まさに澤瀉屋さんの女将さんだった。そして、そのお顔が亀ちゃんによく似ていた!お母さん似だったのね!!それに明るい人あしらいがうまそうな雰囲気も似ていると思えた。
「(三代目)猿之助さんってお母さんの方の顔だから昔は女形が綺麗だったのよ」と聞いていたので、実は前日にネットで「高杉早苗」で検索したところ、見つけた写真がまさにそうだと確認していた。猿之助は二代続きでお母さん似という遺伝になっているのかと納得。
あと、私がわかったのは扇千景さんくらいだったが、浜木綿子さんもいらしていたようだ。

終演後、玄関前で私の目の前で記者たちをふりきって車(後ろがシャドーガラス)に茶髪の男性が滑り込んだ。すぐに誰かわからなかったが、記者さんたちの話でサッカーの中田ヒデさんとわかった。なるほど~。
ここであらためて澤瀉屋の由来の植物もネット検索しておく。お正月に食べるクワイもその仲間だったのね。

Wikipediaの「オモダカ科」の項はこちら


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6 コメント

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Unknown (hitomi)
2012-06-06 08:37:32
早速のUPありがとうございます!
福山雅治からの祝幕も素晴らしいですね!
「今日、猿之助を襲名いたしまして嬉しさ100%になった」と笑わせる。梅原猛先生にも相談したら「ニーチェの運命愛」のようにあなたの運命を受け入れて愛しなさいと言われた、ぐっと来ますね。
口上はテレビで見ましたが録画したかったです。
私も中車の必死の形相にうるっときました。
歌舞伎美人に載っている彼の顔つきがあまりにも変貌していて驚いていました。
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Unknown (hitomi)
2012-06-06 08:46:43
さすがぴかちゅうさんは初日に観劇、すごく羨ましいです。
この記事どこかで紹介させていただきます。今、ブログUP,Rコメが遅れていつになるかわかりませんがよろしくお願いします。
海老蔵の御園座公演のポスターがあまりにもかっこいいので3階席で観ることにしました。
南座の玉三郎公演、あきらめるつもりでしたが御園座のふるあめりかがとても良かったので又京都の友人と行くことにしました。どうせ彼女のチケットも何時も取っていますので
若松監督の三島の映画、海燕ホテル観ました。
名古屋駅前の監督の小さな映画館で上映中。
若松さんが一番尊敬するのは新藤監督と聞いて嬉しくなりました。
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2日目 (さちぎく)
2012-06-06 22:43:00
今日の口上は初日とは違って短く、やはり初日に行きたかった!いろんな役者の口上を見てきましたが、一門の者がずらりと並んでいるのも悪くないですね。拍手喝采!猿翁はうまく話せないけれど、ああして登場してお客様に自らご挨拶できる喜びは格別でしょうね。2ヶ月頑張ってほしいです。
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皆様、コメント有難うm(_ _)m (ぴかちゅう)
2012-06-07 00:40:22
★hitomi様
この記事を貴ブログでご紹介いただけるとのこと、有難うございますm(_ _)m毎日たくさんのコメントがあるのでお返事が大変と拝察申し上げます。
NHKの大河ドラマ「龍馬伝」で福山雅治、香川照之が共演しただけでなく、最終回の刺客役で亀治郎が出て本当に嬉しかったです。その縁で福山雅治からの祝幕かと観客も納得がいきますよね。本当に素敵なデザインでした。
新猿之助・新中車の口上はそれぞれに素晴らしかったです。TVではバランスの悪い取り上げられ方をしているなぁと思える局もありましたが、まぁ仕方がないかと思っています。
玉三郎丈の京都南座公演に連動していろいろな企画があるようですので、あわせてお楽しみくださいませ(^_^)/
★さちぎく様
澤瀉屋はどうしても大歌舞伎をやるような座組みの公演が少ないので一門による口上ということになるのだと思いますが、この一門の歴史のようなものを感じて感無量でした。
古典歌舞伎とスーパー歌舞伎と組み合わせた襲名披露公演も初めてということで、「前例がなければつくればいい」というスピリットがいいと思います。それに藤十郎丈や来月は市川宗家が参加して盛り立ててくれるし、このお二人だと午前午後とも出演だと無理をしていただくことになるので、それもちょうどいいのだろうと推測できて納得です。
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Unknown (hitomi)
2012-06-11 19:42:27
「白磁の人」観てきました。撮影当時亀ちゃんだった猿之助、幅広い演技力ですね。

お隣の方はずっと泣いていました。こういう映画が出来たのは嬉しいことです。
前に原作をプレゼントされてレビューも書きました。
その後、柳さんの連れ合いの兼子さん(アルト歌手)の映画観たり伝記を読みました。
兼子さんは朝鮮の美術館建てるのにも演奏会開いて夫に尽くしたのですがそんな話はまったく出てきません、仕方ないですけど。

兼子さんは、柳さんや淺川母子に苦しんだので、浅川さんの二人の妻のこともわかってよかったです。

清盛で摂関家演じている堀部さん、私の母も言っていた「朝鮮人みたい」という抜きがたい差別感を上手く表している手塚理美、ベテランの演技力も楽しめました。

猿之助たちの襲名記事、不十分でお恥ずかしいのですがTBさせていただきました。

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★hitomi様 (ぴかちゅう)
2012-06-13 01:37:43
貴ブログでのご紹介、有難うございますm(_ _)m
芝居の方の感想も早く書かなければと思ってますが、最近仕事がけっこう忙しく、帰宅しても余裕がないのが実情です。もう少しお待ちくださいね。
>「白磁の人」観てきました。撮影当時亀ちゃんだった猿之助、幅広い演技力......そうそう、けっこう芸域が広いと思います。立役と女形を兼ねる役者になられましたし、役を実によく研究しているのがわかります。知性と技巧の役者だと思います。
「白磁の人」は今度の週末にでも有楽町スバル座あたりで観てこようと思っています。
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